• 配信日:2025.02.05
  • 更新日:2025.02.05

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アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

カーボンニュートラルと生体センシング技術の国内アカデミア特許例


ここからはリンカーズの喜多村より、カーボンニュートラルと生体センシング技術に関する国内のアカデミアの具体的な特許事例についてお話しいたします。

昨今、生体センシング技術と健康モニタリング、医療機器、フィットネス、スマートデバイスなどの分野で応用することが期待されています。また個々の生理状態をリアルタイムで把握することで、健康管理や病気予防がより個別化・高度化されることも目指されています。

このような中で今後は、やはり健康管理・病態予測の個別化にシフトしていくと予想されています。そこに資するような、国内のアカデミアが開発した技術知見を、景山さんからお話しいただいた特許と紐付けてお伝えできればと思います。

一方でカーボンニュートラルに向けた技術開発は、地球温暖化対策やエネルギー問題の解決に寄与するものであり、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの導入が急務となっています。

カーボンニュートラルと生体センシング技術の特許カテゴリーと大学ごとの特許数


アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

画像は生体センシング技術関連、そしてカーボンニュートラル目標達成関連の特許をまとめたものです。弊社ではこのカテゴリーごとに特許をまとめ、レポート化しています。

生体センシング技術については医療機器に関連する特許が多く含まれています。カーボンニュートラルに関しましては、廃棄物や水の処理に関連する特許や CO2 の転換・触媒技術などが含まれています。

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

こちらの画像は今回の調査に当たって抽出した国内アカデミアの特許 145 個のうち、大学ごとの内訳を示したものです計 64 大学中、東北大学が 13 件、東京大学が 11 件、九州大学が 10 件となっています。

生体センシング技術とカーボンニュートラルでそれぞれ分けると、生体センシング技術関連が 46 大学で、カーボンニュートラル関連が 34 大学となっています。それぞれの件数を見ると、生体センシング技術では東北大学が6件、東京大学も6件。カーボンニュートラル関連では九州大学が8件、東北大学が7件という内訳です。

「生体材料の化学分析」関連の国内アカデミア特許例


生体センシング関連のアカデミア特許として、京都府公立大学が出願している特許が興味深かったため紹介します。

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

昨今の生体センシングのトレンドは、血液や尿、唾液、呼気など排泄されるものを使って自分の健康状態を可視化することにあります。その中で、京都府公立大学ではサルコペニアという筋肉の落ちていく状態を分析・可視化するという技術の特許を出しています。

もう1つ、愛媛大学の特許事例を取り上げます。こちらも血液や尿などから病気の診断が可能という技術です。このように臨床現場で活用されることを主眼に置き、排出される体液などから健康状態を可視化する技術・デバイスに関する特許が多く出願されています。

生体センシング技術に関する国内アカデミアの特許例


ここからは生体センシング技術に関する、国内アカデミアから出願されている特許事例を紹介します。

生体サンプルの高精度検出技術

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

まずは生体サンプルの高精度検出技術に関する特許の事例です。生体サンプルをより正確に抽出することは非常に重要な技術の一つと言えます。

まず画像一番左の東京農工大学からは生体サンプル中のミスフォールディングタンパク質を自家蛍光でラベルフリー検出する技術の特許が出願されています。用途としては生体センシング中のアミロイドを迅速かつ高感度に取ることです。応用例として人ではなく畜産の診断にも活用できるのではないかと期待されています。

真ん中の東京歯科大学からは、歯周病など口の中の健康状態や口臭レベルを測り、歯科医が遠隔診断する際のデータとして使える技術の特許が出願されています。

一番右の徳島大学からは、温度影響を受けずにウィルスやタンパク質を高精度で特定できる光周波数コム共振器を用いたファイバーセンシング技術の特許が出願されています。

このように自家蛍光を利用したラベルフリー検出技術が進化しており、特定波長の励起光を用いてミスフォールディングタンパク質を高感度で検出したり、蛍光測定技術により歯周病の原因菌や口臭レベルの検知が実現している状況です。

体内時計の制御と健康管理技術に関する特許

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

個人的に面白いと感じたのが、体内時計の制御に関する特許も出願されていることです。体内時計の調整を遺伝子レベルで測り、睡眠障害や生活習慣病の治療に応用化できるのではないかと技術開発を進めている事例を紹介します。

画像一番左の九州大学からは、微弱電流刺激を用いて時計遺伝子 Per1 を発現させ、体内時計のリズム障害を改善するシステムの特許を出願しています。

真ん中の帝京大学からはカイコを用いた治療・予防剤のスクリーニング開発の特許が出願されています。

一番右も九州大学の事例で、ひきこもりの指標となる血液中バイオマーカーを特定し、機械学習を用いて重症度を予測する技術の特許です。

ポータブル診断技術の国内アカデミア特許例

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

こちらはポータブル診断技術に関する国内アカデミアの特許の事例です。磁性標識を用いた抗原抗体反応のポータブル化が進んでいます。また。液滴操作装置はシンプルな構造で高精度な液滴分類を実現しています。それに資する技術が真ん中の大阪公立大学の特許で、液滴を堆積ごとに分類する装置を開発しています。これをマイクロチップ流体へ応用し、少量で情報を抽出するという技術が特許に記載されています。

これらの技術はまだ私たちの手に届くようなものではありませんが、開発が進むことでコモディティ化し、私たちが日常で使えるデバイスへと組み込まれているのではないでしょうか。

「水の処理、業用廃水の処理と再利用」関連の国内アカデミア特許例


アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

カーボンニュートラル目標達成に関する特許として、まず興味深く感じた例を紹介します。景山さんのお話にもあった沖縄科学技術大学院大学の特許です。

画像左側は生物電気化学システム( Bioelectrochemical System:BES )を応用した燃料電池の開発に資する特許で、右側はアノード槽とカソード槽から構成され、アノード槽では生物化学的酸素要求量( Biochemical Oxygen Demand : BOD )の酸化物質量( Suspended Solid:SS )、臭気および病原菌の除去、カソード槽で硝酸イオンを窒素ガスに還元する技術の特許となっています。

カーボンニュートラル目標達成に関する国内アカデミアの特許例


続いてカーボンニュートラル目標達成に関する国内アカデミアの特許事例を紹介します。

バイオマスを利用した持続可能なエネルギー生成技術に関する特許

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

こちらはバイオマスを利用した持続可能なエネルギーの生成技術に関する特許です。これらの、主に水素発酵技術は今後、再生可能エネルギーの供給源としての可能性を秘めていると考えられています。また廃プラスチックのリサイクル技術は、プラスチック廃棄物の削減に寄与し、循環型社会の実現に向けた重要なステップとなるでしょう。これらの技術は、環境負荷の低減と資源の有効活用促進につながると期待されています。

新しい材料技術によるリサイクルと環境保護の国内アカデミア特許例

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

アカデミア発の特許として、新しい材料技術によるリサイクルと環境保護に関する事例を紹介します。

画像一番左の東京工業大学からは、鉄筋コンクリートと比較してより強いエネルギーを吸収し、変形しにくい素材の特許が出願されています。

真ん中の九州大学からは、発電所や工場からの二酸化炭素や酸性ガスを効率的に吸収・回収できる素材の特許が出ています。

今後これらの技術は、建設業界における持続可能な資材の普及を促進させるでしょう。また二酸化炭素の回収技術は温暖化対策としての重要性が増し、エネルギー産業における新たなビジネスモデルの創出につながると期待されています。

再生可能エネルギーの効率的な利用と管理技術の国内アカデミア特許例

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

こちらは再生可能エネルギーの効率的な利用と管理技術に関する国内アカデミアの特許事例です。

生物電気化学システム( BES )を活用した排水処理技術に関する特許を用いて水質改善をしたり、太陽光電池に資するような技術を用いてスマートグリッド構造をとったりする特許技術が出ています。

一番右の静岡大学からは海水を資源にしていこうという動きがあり、その動きに関する特許が出願されています。

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アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

リンカーズでは、2020 年以降に出願された、日本の大学が保有する「生体センシング」や「カーボンニュートラル」に関連するアカデミア特許に注目し、それらの特許を解析、競争力を評価したレポートをご提供しております。本レポートにより、各技術分野における優位性や技術戦略に関する知見を得ることができます。
サンプル資料もございますので、ぜひご覧ください。

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講演者紹介

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

景山 宏治 氏
株式会社IP Survey 代表取締役

【略歴】
東工大院卒業後、日本製鉄(株)(旧:新日本製鐵)にて、製鉄プロセス用耐火物、精錬プロセス、マイクロ波加熱技術の研究開発に従事。日本製鉄(株)在籍中に渡英し、オックスフォード大学にて、高温下XCTその場観察装置を開発し、PhDを取得。
帰国後、製鉄所エンジニアを経て、2021年に金属3Dプリンタのベンチャー企業、(株)Sun Metalon設立にCSOとして参画。2023年に現職の(株)IP Surveyを設立し、特許競争力という新しい概念を取り入れ、競争力評価ソフトの開発、企業・大学向けに競争力の高い特許出願戦略等、知財サポートコンサルティングを行っている。

アカデミア特許の競争力分析と最新事例:カーボンニュートラル&生体センシング技術

喜多村 悦至
株式会社リンカーズOI研究所 オープンイノベーション研究所 シニアリサーチフェロー 博士(農学)

【略歴】
東北大学加齢医学研究所研究員。 鹿児島大学大学院 連合農学研究科 生物利用科学専攻 博士課程修了。
2003 年英国 Dundee 大学 Life Sciences 学部 博士研究員、2011 年同学部 Senior research associate、2017 年熊本大学発生医学研究所教員を務め、DNA 複製機構や染色体均等分配機構の研究、解明に取り組む。2018 年よりリンカーズ オープンイノベーション研究所に入社し、アカデミアバックグランドを活かして、バイオテクノロジー領域を中心に先端技術動向調査、産学連携促進活動など、製造業向けの技術マッチング活動を支援している。

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