• 配信日:2024.12.20
  • 更新日:2024.12.20

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飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例

カーボンニュートラル/サステナビリティを見据えた肥料・飼料製造の技術開発トレンド分析


ここからは、直近 15 年で発表された研究論文から技術トレンドを分析した結果を紹介していきます。

飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例

こちらは「肥料・飼料の製造」に関する論文を抽出した結果です。大体 28,000 件の関連論文が出てきました。

論文を第一著者の所属組織の国ごとに見ていくと、国名や組織名が登録されていないケースが多く n/a(該当なし)になってしまう論文が多かったのですが、ここでは除外して考えます。そうすると世界で関連論文が最も多い国はインドネシアということがわかりました。特に 2018 〜 2019 年ごろから増えてきており、中国やアメリカ、インドと比べても多いのは意外な結果でした。

ちなみに日本は、トップ 15 にも入っていない状況です。

飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例
飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例

上の画像は 28,000 件の論文に、肥料・飼料を製造する技術としてどのようなものがあるか、論文のタイトルなどからカテゴライズした結果です。それぞれ 10 〜 12 件の技術カテゴリーが出てきました。前半の発表で大野さんが注目しているとおっしゃっていた分野が論文の分析結果からも研究が活発化していることが見えてきました。

飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例

こちらはそれぞれのカテゴリーごとにどれぐらいの論文があるかを国別で色分けをしたグラフです。先ほど論文数が一番多いことがわかったインドネシアは、肥料の分野だと「微生物とバイオ肥料を用いた植物成長促進と収量・品質向上技術」や「有機・無機肥料の併用で作物の成長と収量を向上させる技術」などのカテゴリーの論文が多いことが見えてきます。

個人的に意外だったのが、微細藻類を使って肥料・飼料を作っていこうとしているベンチャー企業が増えている印象はあるのですが、論文数で見るとそこまで多いというわけではないという点です。どちらかというとプロバイオティクスや遺伝子工学などの研究が活発に進められていることがわかります。

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こちらのグラフは論文数をカテゴリー別にまとめた先ほどのグラフのプロットを変えたものです、横軸が直近5年の論文数増加率。具体的には 2019 年と 2023 年を比べたときにどのカテゴリーの論文が増えたかをプロットしています。縦軸はカテゴリーに関する論文の数をプロットしたものになっています。

このグラフからはまた違った観点で見ることが可能です。例えばグラフの一番上にあるのは「 fertilizero1: 微生物とバイオ肥料を用いた植物成長促進と収量・品質向上技術」で論文の数は一番多いのですが、ここ5年で数が伸びているかというと、伸びている方ではありますがトップクラスではないことがわかります。一方、ここ5年で論文数が特に伸びているカテゴリーはどれかというと、例えば右下の「 feed10: 乳酸菌添加で飼料発酵を高品質化する技術」です。 3.5 倍ほどに増えており、今ホットな研究分野だといえます。

ここでは赤い丸で囲ったカテゴリーをピックアップして紹介します。

ナノ肥料・制御放出技術による栄養吸収効率と作物成長促進

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まずは「ナノ肥料・制御放出技術による栄養吸収効率と作物成長促進」。ナノテクを使って作物の肥料吸収率を高めたり、肥料をコーティングしてそこから成分が溶け出すタイミングをコントロールしたりする技術などの研究カテゴリーです。

ナノ肥料による栄養吸収効率向上と収量増加

飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例

具体的にどういった技術があるかを見てみました。こちらは「ナノ肥料による栄養吸収効率向上と収量増加」に関する技術です。肥料をナノ粒子サイズに細かくすることで吸収効率を上げるという研究が進められています。

制御放出型窒素肥料による窒素利用効率と収量の向上

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もう1つ、「制御放出型窒素肥料」というような呼び方をされているものもあります。ポリマーでコーティングしたり、阻害剤・抑制剤をうまく組み合わせたりすることで、作物の中に含まれる窒素を植物が吸収する量や土の中に放出する量などを精密に制御する技術も活発に研究されています。

電気化学・光化学で実現する持続可能なアンモニア合成技術

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次はアンモニアの合成技術です。こちらも活発に研究が進められています。

銅系触媒による硝酸塩からの高効率アンモニア合成

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こちらは触媒として銅を使い、ハーバーボッシュ法に近いような形で高温高圧の条件でアンモニアに変換したり、電気化学的に電気を流して硝酸塩などの成分をアンモニアに還元したりするような技術開発です。最近は特に、触媒の表面構造を制御するということがナノテク関連ですごく注目されており、触媒活性を高めるためには表面が平滑ではなくでこぼこの方が良いという研究成果も出ています。

フローセル・プラズマリアクターによるアンモニア合成技術の革新

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電気化学的にアンモニアを作る技術が開発されているとお伝えしましたが、こちらはそれに関連する研究です。フローセルやプラズマリアクターを使ってアンモニアを合成します。特に常温常圧でアンモニアを作れることが大きな特徴の一つです。

プロバイオティクス等による動物の成長促進飼料技術

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続いては「プロバイオティクス等による動物の成長促進飼料技術」です。こちらも論文数が伸びており、研究が活発化しているカテゴリーです。特に 2020 年ごろから増えている印象があります。

バチルス属プロバイオティクスによる家禽の成長促進

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特に注目されている研究が多い分野でいうと、「バチルス属プロバイオティクスによる家禽の成長促進」です。動物の成長促進や、卵をたくさん産ませたり、腸内環境を整えたりといった部分に効果がある研究がたくさん出てきています。

フィトジェニック飼料添加物による成長促進技術の開発

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フィトジェニック飼料と呼ばれるものもすごく注目されています。これは、植物由来のハーブなどを餌に添加することで、動物の腸内環境や健康を整えるという飼料です。こちらに関してもハーブの代わりにヨモギを添加することで動物の成長にどう影響があるかなどさまざまな取り組みが行われています。

乳酸菌添加で飼料発酵を高品質化する技術

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こちらが紹介する最後のカテゴリーです。「乳酸菌添加で飼料発酵を高品質化する技術」で、こちらも近年論文数が一気に伸びています。

Lactobacillus plantarum添加による飼料発酵品質の向上

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こちらは乳酸菌を飼料に添加することで保存性と栄養価を高めて、家畜の生産性向上に寄与しようとしている研究です。こちらも研究が活発に進められています。

今回紹介したのはごく一部の技術です。様々なアプローチで肥料・飼料の製造技術を見ていくと、自社の強みが出せる分野も見つかるでしょう。

以上が Web セミナー『飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?~ グローバルのトレンド・事例、先端技術紹介から考える ~』でお話をした内容となります。大野氏から、フードテック分野への参画において、海外の状況や取り組みを正確に把握し、専門的に調査することの重要性についてお話がありましたが、その調査にあたる部分で、リンカーズはここまでのお話の通り、国内外の様々な技術情報を分析し、その結果をお伝えすることが可能です。
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講演者紹介

飼料・魚粉・肥料はビジネスチャンスか?フードテック動向と最新技術事例

大野 泰敬 氏
株式会社スペックホルダー 代表取締役社長/農林水産省 農林水産研究所 客員研究員

【略歴】
複数の企業を経営する事業家兼投資家。ラジオ NIKKEI「ソウミラ」、FM愛媛を含む人気 FM ビジネス情報番組5つのメインパーソナリティ。ソフトバンク株式会社で新規事業に従事し、その後 CCC での経験を経て、2008年にソフトバンクに戻り、日本初の iPhone 市場参入におけるマーケティングで大きなシェア拡大を実現。独立後は、14 社の大手企業に対して事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達を手掛ける。テクノロジー分野においても深い知見を有し、東京オリンピック大会組織委員会の IT アドバイザーや麗澤大学、農林水産省、明治大学の客員職を務める。地域社会の課題に対し、大企業と地域企業をマッチングさせ、新しいビジネスチャンスを創出し、地域発展に貢献。農林水産省主催のビジネスコンテストでは審査員長として、食料安全保障や食の持続可能性に関する検討会議の委員としても活躍。著書に「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」、「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」がある。

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浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部

【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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