
- 配信日:2024.10.22
- 更新日:2024.12.18
オープンイノベーション Open with Linkers
エネルギーハーベスティングの注目技術事例とトレンド
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(論文編):エネルギー収集技術における新材料とデバイスの研究

三次元グラフェン膜を用いたナノ発電機の研究

グラフェンが捻れたり、筒状にくっついたりして三次元構造にしてナノ発電機に用いる研究が進められています。グラフェンメソスポンジという呼ばれ方をすることもあります。
グラフェンが三次元的になることで電気の伝導力が非常に高くなったり、弾力があったりなど、新しいカーボン系の材料として注目されています。この材料をエネルギーハーベスティングに活用する研究が活発化しています。
MOFを用いた自己駆動型デバイスの開発

金属有機構造体( MOF )は、構成する材料の組み合わせでさまざまなデザインが実現できたり、表面積が大きいことや多孔性があることなどの特性から、多くの分野で注目されています。
この金属有機構造体を熱電やトライボ電気や圧電材料と組み合わせてエネルギーハーベスティングに活用していこうという開発が進んでいます。
磁気エネルギーハーベスティング技術の進展

磁力を使ってエネルギーを生み出していこうという研究もされています。特に磁力を使う場合は周波数の低い動きからエネルギーを収集するのに適しているとされています。
人体の動きを利用したエネルギーハーベスティング技術

人間の動きからもエネルギーを収集できるのではないかという想定での研究も増えてきています。特にヘルスケア関係、人間の生体情報をセンシングするような技術のエネルギーがじんたいの動きから取れるようになるとより効率的なデバイスの開発などにつながると思われます。
最近は心臓の動きや動脈の血流をエネルギーとして取り出し、センサーやペースメーカーを動かす電力に変えていこうという研究が目立ちます。
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(論文編):ウェアラブルデバイス向けの熱電エネルギー収集技術

柔軟性と伸縮性を持つ熱電発電機の研究

熱電発電は基本的にセラミックスなど固い素子を使うのですが、固い素子をたくさんつなぐなどの工夫をすることで柔軟性や伸縮性を持つ熱電素子を作ろうという研究が出てきています。この研究がウェアラブルデバイスに応用できるのではないかと期待されています。
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(論文編) :先進的な膜技術によるエネルギー変換と貯蔵の研究

液の濃度差や浸透圧の差などを使って発電していく技術です。 2019 年ごろから論文数が急激に増えており、膜(フィルム・フィルター)を厳密に制御できるような技術が整ってきました。
ナノチャネルを用いた高効率エネルギーハーベスティング技術

こちらは医療デバイスや海などから発電していくことが主な用途です。
エネルギーハーベスティングに関する特許分析結果
論文に関してだけでなく、特許に関しても同じように分析しております。技術的には重複している部分が多いので、特許を分析するなかで目立っていたと感じる、技術の用途について事例を紹介します。

エネルギーハーベスティングに関する特許数を見てみるとアメリカが多く、論文数が多かった中国はそこまで数を伸ばしていません。

特許は大きく4つのグループに分けられました。
- A. エネルギーハーベスティングの基盤技術
- B. 自然現象を利用したエネルギー収集
- C. エネルギー管理とストレージ技術
- Z. その他:上記4つに当てはまらない研究です。
それぞれのグループが具体的にどのような技術カテゴリーに分けられるのかを表したのが次の画像です。
* Z の画像は割愛させていただきます




ここからは注目度の高い技術を中心に事例をお伝えします。唯一「 A05:トライボエレクトリック効果を用いたエネルギーハーベスティング」は上のグラフで見ると注目度は高くないのですが、トライボエレクトリックを使ったエネルギーハーベスティング技術は個人的にも注目している技術なのでピックアップしました。
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(特許編):エネルギー収集デバイスと無線通信を活用した持続可能な技術

こちらの特許数を見ると世界各国の電気・電子系企業が取得しているケースが多いことが分かります。
無線通信デバイスにおけるエネルギー効率の向上

無線通信デバイス、 RFID タグなどのスマートタグに対してエネルギーハーベスティング技術を使っていこうという特許が出されています。
医療機器におけるエネルギーハーベスティング技術の進展

電子タグに似ている分野で医療機器に関してエネルギーハーベスティング技術に活用していこうという特許も増えてきています。
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(特許編): エネルギー収集とデバイス最適化に関する研究

こちらも世界の電気・電子企業が特許を多く出している分野です。
エネルギーハーベスティングを用いたリアルタイム追跡システム

RFID デバイスやビーコンといったものを使ってモノやヒトの位置情報をリアルタイムで追跡する技術をエネルギーハーベスティングを活用して実現するための特許が出てきています。
電力線および電力機器からのエネルギーハーベスティング技術

少し変わった事例ですが、電線の漏れ電流や電線周辺の電磁場の変化などを使ってエネルギーを生み出していこうという特許もいくつか見られました。
電線をモニタリングするセンサーのエネルギーを賄うことなどを想定して研究が進められているそうです。
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(特許編):トライボエレクトリック効果を用いたエネルギーハーベスティング

こちらの分野も右肩上がりで特許数が増えてきています。
柔軟・伸縮性材料を用いたエネルギーハーベスティングデバイス

論文のパートで紹介した技術に近いですが、柔軟性・伸縮性を用いたエネルギーハーベスティングという文脈で、トライボエレクトリックを活用している特許が出てきています。
TENGを用いた水流・風力エネルギー収集技術

水流・風力のエネルギーをトライボエレクトリックナノジェネレーターで収集していく技術の特許もいくつか出てきています。
エネルギーハーベスティングの注目技術事例(特許編):再生可能なエネルギーの収集における風力と波力の活用

波力発電技術の進化と効率化

波を使った発電技術に関する特許も増加しています。
浮体式風力発電とハイブリッドシステムの進展

海に浮かべるタイプの風力発電に関する特許も出てきています。
この辺りの技術はエネルギーハーベスティングというより再生可能エネルギーに近い分野だと思いますが、注目度が高く特許数も増えているので紹介しました。
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講演者紹介

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。
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