- 配信日:2024.03.13
- 更新日:2024.08.21
シーズ技術の顧客開拓事例
地方自治体などでのリンカーズ活用事例~鯖江市~
自治体による企業支援のあり方に関して、多くの自治体がお悩みを抱えているかと思います。
地域企業の活性化や企業支援に取り組む自治体関係者の皆様にとって、本記事で紹介する鯖江市と、鯖江商工会議所が取り組まれた事例が、有益な情報として参考になれば幸いです。
製造業、特に眼鏡フレームの製造で知られる鯖江市は、鯖江商工会議所や、ものづくり企業向けビジネスマッチングサービスを提供するリンカーズと連携協定を結び、地域産業の振興を目的とした「さばえものづくりビジネスマッチング支援事業」に 2022 年度から継続して取り組んでいます。
この取り組みについて、企画を担当された鯖江市産業環境部商工観光課の佐々木一成氏と吉田圭秀氏に、プロジェクトに至った背景、その成果と感想、さらには今後の展望や自治体による企業支援の理想的な形について語っていただきました。
さらに、記事の末尾では「さばえものづくりビジネスマッチング支援事業」に実際に参加されたアイテック株式会社と株式会社TANABE から、この支援を受けたことによる影響やリンカーズサービスの利用経験に関するご意見を伺っています。
◆目次
1. 鯖江市へのインタビュー
・鯖江市の産業について
・リンカーズとの取り組みに至った背景、抱えていた課題
・リンカーズの伴走支援(技術販路開拓サービス Linkers Marketing 活用)の評価/感想
・自治体として、この取り組みをふまえて、今後取り組んでいきたいこと
・自治体による企業支援において大切なこと
2. 参加企業「アイテック株式会社」
・アイテック株式会社について
・さばえものづくりビジネスマッチング支援事業について
・リンカーズの伴走支援(技術販路開拓サービス Linkers Marketing 活用)の評価/感想
3. 参加企業「株式会社TANABE」
・さばえものづくりビジネスマッチング支援事業について
・リンカーズの伴走支援(技術販路開拓サービス Linkers Marketing 活用)の評価/感想
4. まとめ
鯖江市の産業について
鯖江市:鯖江市の産業は眼鏡・繊維・漆器産業を中心に構成され、眼鏡は、眼鏡フレームの国内製造シェア約 96パーセントを誇る産地の中心として、また、繊維は「繊維王国福井」の中核的地位を、国の伝統的工芸品である越前漆器は 1500 年の伝統をくみ、業務用漆器(外食産業用)の8割以上を製造しています。
私ども鯖江市商工観光課では産業の振興・育成、産業観光の推進、中心市街地の振興、商業振興・育成等を中心とした業務を担っており、産地PR事業や販路開拓、異分野の見本市への出展などにも取り組んでいます。
商工観光課課長補佐兼 GL(グループリーダー) である佐々木は地場産業の振興のために今回の「さばえものづくりビジネスマッチング支援事業」を企画しました。また、商工観光課主事である吉田は眼鏡産業の振興や産業の国内外販路開拓・宣伝、鯖江ブランドの普及を目指しております。
リンカーズとの取り組みに至った背景、抱えていた課題
鯖江市:新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、市内企業の受注数や売り上げが感染症以前と比べて大きく減少しておりました。また、新規販路開拓、ビジネスマッチングを目的に展示会などに出ようにも、展示会が中止になるなど、直接の商談機会を得ることが難しい状態でした。企業がそのような現状に置かれていることを知り、鯖江市としても市内企業に対して、従来のようなリアル展示会出展支援を行うだけでなく、企業の実態に合わせた新たなサービスを活用する必要があるのではないかと模索していました。そのような中、リンカーズのビジネスマッチング事業内容を知り、他のビジネスマッチングサービスを提供している企業の中でも、
- ・ものづくり企業の課題を解決するのに豊富なネットワークを構築している点。
- ・試作/開発/保守パートナー、OEM 生産委託先、技術コンサルタントなどに幅広いニーズ対応が可能な点。
- ・それらを活かした豊富なマッチング実績がある点
これらの理由から、市内の特色ある優れた技術や、製品を作る企業に対して、リンカーズのネットワークを活用して新たなビジネスマッチングの機会を提供し、技術革新や販路拡大につなげていくこととなりました。
リンカーズの伴走支援(技術販路開拓サービスLinkers Marketing活用)の評価/感想
鯖江市:さばえものづくりビジネスマッチング支援事業では、参加希望の企業を募集し、2022 年度、2023 年度に、それぞれ3社支援対象企業を選定し、いずれも Linkers Marketing を利用していただきました。2022 年度は合計で6社、また 2023 年度は合計で 12 社との面談実績が出ています。面談企業の中には名が知られた企業や年間売上数千億円規模の企業などもあり、リンカーズのサービスを利用しなければこれだけの面談を創出することは難しかったと考えております。企業の魅力や要件をどのようにアピールすればうまく伝えることが出来るのか、どのような業種にアプローチしていくのが効果的かなど、支援企業へのヒアリングや伴走支援においてリンカーズが企業に親身になって考えてくれました。また鯖江市への情報共有も逐一行っていただくなどの支援の結果、私たちや支援企業が思っていた以上の引き合いがあったと感じております。
鯖江市:これまで選定された支援企業6社はほとんど面談・商談に結び付いております。2022 年度に支援対象となった企業の担当者からは、現在( 2023 年 12 月時点)もなお面談に至った大手企業とのやり取りが続いており、「とても大きなビジネスとなる可能性がある」という感謝の言葉を頂きました。また、リンカーズには年間のスケジュールについても立案から調整まで行っていただいて、なるべく円滑に事業を進めることが出来るよう助けてもらいました。さらに、現在の鯖江市の課題などをリンカーズのご担当者と共有した際に、「こういうことが出来るので鯖江市さんでも行ってみてはどうですか」と新たな提案もいただきました。地域や企業の実情、課題を踏まえて尽力していただいているということが伝わり、本当に感謝しています。
自治体として、この取り組みをふまえて、今後取り組んでいきたいこと
鯖江市:2024 年度も引き続き同様の事業規模で取り組みを行っていきます。過去2年間の実績があったからこそ、この取り組みが市内企業にとって展示会とは異なる新たな営業方法として、大きなビジネスチャンスを得るきっかけとなったことが分かりました。今回のような支援策はコロナ禍ということもあり実施した背景がありますが、今後も引き続き情勢を踏まえて多様な支援策を展開していくことが行政として求められています。鯖江市を支えるものづくり産業の発展につながるよう、多くの機関と連携して取り組んでいきたいと思います。もちろんリンカーズにも2024 年度もお世話になりますので、さらなる効果があることを期待しております。
自治体による企業支援において大切なこと
鯖江市:「何をもたらせば企業のためになるのか」ということを第一に考えながら事業構築してゆくことです。
自治体は実際に企業が置かれている状況や、どのような課題を抱えているのかを知らなければいけないと思います。私どもが打ち出した事業について、実際に企業が求めているものと乖離(かいり)していたら意味がありません。行政の一人歩きにならないように企業に耳を傾けたうえで、どのような取り組みが効果的かを考える必要があります。
リンカーズ:実際に「さばえものづくりビジネスマッチング支援事業」に参加されたアイテック株式会社と株式会社TANABE にもお話を伺いました。まずは、2022 年度、2023 年度の「さばえものづくりビジネスマッチング支援事業」に参加された、アイテック株式会社 新事業開発本部・課長の小泉将治氏へのインタビューです。
アイテック株式会社について
アイテック株式会社:弊社は眼鏡フレーム、スポーツ用品、環境分野製品など、多様な工業製品に対する金属めっきや、装飾用・機能性各種めっき及びその他特殊表面処理加工のほか、眼鏡フレームの企画・販売を行っております。近年の環境の変化に対応すべく、家電製品やスポーツ用品をはじめとした眼鏡業界以外の分野にも積極的に進出しております。また、装飾面だけではなく、機能面でも優れた表面処理技術の開発に取り組んでおります。
私(小泉氏)は、機能性表面処理の開発と実用化を目的とし、開発計画に対する各テーマの進捗管理を行う一方で、市場調査や営業活動など、新規分野参入のための取り組みにも力を入れています。
さばえものづくりビジネスマッチング支援事業について
アイテック株式会社:鯖江市からの紹介で本支援事業のことを知りました。企業のターゲット市場あるいは成長分野への進出に際して、技術の販路開拓やニーズの把握などは大きな課題の一つとなっています。今回のビジネスマッチング支援事業は、企業の保有する技術を希望するユーザーやその分野に直接 PR することが出来るため、新規開拓を目指す企業にとって大変有効な支援制度であると思います。
リンカーズの伴走支援(技術販路開拓サービスLinkers Marketing活用)の評価/感想
アイテック株式会社:市場のニーズに沿った技術開発を行う中で社内での性能評価はある程度できますが、実際に検証を行うためのユーザーをいかに見つけるかが大きな課題としてありました。従来、ユーザー獲得の手段としては、展示会やホームページを活用した PR に限られていたため、希望するユーザーとのコネクションがない限り、技術者と接する機会がなく、試作評価に至るケースは非常に少ないことがほとんどでした。
Linkers Marketing では、推進したい技術の「技術紹介シート」を作成し、その後、ターゲットであるユーザーを 50 社候補として挙げるだけで、その後リンカーズによる提案(営業)活動やビジネスマッチングのシステムを通じて、技術に関心を持った企業と面談の機会を得ることができ、想像以上の数のユーザーから試作評価のお声掛けをいただきました。(2022 年度は2社、2023年度は7社と面談あり。)また、面談を通じて技術開発の段階ではわからないユーザー目線での真のニーズを知ることができ、今後の課題として得られる情報も多くありました。これらの成果は、今までの自社での営業活動の中では得られなかったことです。そのほか、PR の方法として技術カタログ(パンフレット)の作成からユーザー展開まで、リンカーズから丁寧に支援してもらえた点も非常に良かったと思います。
リンカーズ:次にもう一社、同じ「さばえものづくりビジネスマッチング支援事業」の参加企業で、眼鏡部品や機械部品、医療部品などのレーザー加工を行っている 株式会社TANABE の取締役部長 田辺大氏にお話を伺いました。
さばえものづくりビジネスマッチング支援事業について
株式会社TANABE:普段マッチングできない企業とご縁を作っていただけて感謝しています。また、いち企業では金銭的に利用するのが難しいサービスですが、今回は鯖江市に全面的にバックアップしていただけたので、気軽に利用することができました。
リンカーズの伴走支援(技術販路開拓サービスLinkers Marketing活用)の評価/感想
株式会社TANABE:
・上記にも記載しましたが、普段つながれない企業とつながれたので良かったです。
・直接、他社の企画・開発担当者と面談ができるので、スピード感を持ってやり取りができました。
・実際に面談できたのは4社でしたが、どのようなところにニーズがあるかも少しだけ分かりました。
・うち2社は試作まで話を進めることができたので、今後も継続的に取り組んでいきたいと思います。
・次年度もチャンスがあれば、応募して再度支援サービスを利用したいと思います。
まとめ
リンカーズでは、今回ご紹介した鯖江市以外にも、国や自治体と連携して、地域企業の活性化の支援実績がございます。
様々な自治体での地域の企業支援に関しまして、新たな企画立案のご支援から、すでに動いている支援活動の見直しや拡大のご支援まで、私どもリンカーズがビジネスマッチングの知見を活かしてお力添えをさせていただきます。
まずは、リンカーズの話を聞いてみたい、課題について相談をしたいなどございましたら、下記よりお問い合わせいただけますようにお願いいたします。
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