• 配信日:2024.06.05
  • 更新日:2024.06.05

オープンイノベーション Open with Linkers

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

世界の技術進歩に追いつくにはオープンイノベーションが必須


このように私たちはグローバルトップまで事業を成長させてきたのですが、今までは世界のエアコンメーカーと協創しながら戦ってきました。 一方で昨今は大きな海外企業の異業種からの参画によって空調設備の業界も DX による影響を大きく受けており、協創相手やパートナーシップの構造が大きく変化している時代に突入しています。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

この時代の中でも日本企業の「モノづくり」という強さは今も失われていないと考えていますし、維持し続けなければならないと思っています。これを失ったら日本メーカーの良さは無くなってしまうでしょう。しかし、 GAFA やマイクロソフトなど企業のビジネスモデル転換を含めたそのスピードというのは非常に早く、日本のメーカーでは追いつけないほど大規模に進んでいきます。同じ土俵で私たちは真っ向から勝負するのではなく、モノづくり力の強さを生かした中で、コトづくり、データ活用や価値創造ということをうまく足し算・融和させながらモノ+コトづくり、モノをベースにした価値創造ビジネスということで勝っていきたいというのが、弊社のメーカーとしての基本的な戦略です。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

こういった中でテクノロジー・イノベーションセンターを始めるにあたって、「新しいアイデアは知識と知識の融合だから無から生まれていない」という話や、「単独技術は成熟化していて、文理融合で固定観念を打破しないといけない」、「業種を超えたオープンイノベーションが大切だ」など、いろんな言い方でいろんな人から教えていただきました。共通しているのは同じ組織の同じ文化の中で育った同室の技術者だけが集まって考えてもなかなかブレイクスルーは生まれないということです。裏返すと、極力自分達とは違った文化・組織・領域・ビジネススタイルで頑張っている方々との出会いや新結合によってこそ新しいコンセプトやテーマが生まれてイノベーション活動が加速できるということだと思います。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

これを産学連携に置き換えます。画面の左側が従来の産学連携のシステムです。これはこれで大切な取り組みとして続けていきますが、この7〜8年ほど弊社が注力してきたのは組織対組織の産学連携です。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

会長や社長といった経営トップから技術の幹部、現場など全てが一体となって、ビジョンやテーマ作り、問いから一緒に考える。その問いを考えたりテーマ作りをしたりするときには、文理融合で企業側も研究者だけでなく営業、サービス、企画、人事のような部門にも参画してもらっていますし、大学側も理工系だけでなく哲学や社会学、ときには文学の先生などにも入ってもらいます。こういった活動を加速するために大学の先生には企業と兼業していただいたり、企業からは博士留学や共同研究駐在ということで、数十人規模で大学の中に入ったりと、ヒトが混ざり合いながらテーマ作りから共同研究を実施し、社会実装まで持っていくという総合的な産学連携に注力しています。

ダイキンの産学連携(オープンイノベーション)事例


ここからは実際のオープンイノベーションの事例を紹介します。世界を含め9つの研究機関と 10 年間の包括連携契約を結んで取り組んでいます。

東京大学との産学連携の事例(「産学協創協定」)

まずは東京大学との産学協創連携の例です。「問いから一挙に考える」ということで、現・理研理事長、当時東大の総長だった五神先生と弊社会長の井上が意気投合しスタートすることができました。弊社からすると日本の大学の最高峰である東京大学と提携できることはとても喜ばしいことであり、東京大学としてはグローバルにさらに活躍していきたいということで、エアコンという特定の領域ですが、世界一のシェアになった企業のグローバルなマネジメントから学べることがあるのではないかということで、ギブアンドテイクの意識が成立して包括連携をスタートしました

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

この画像がそのプログラムです。下段にあるように、まずは空気の価値化というビジョンを走らせることにしました。それも軸としながら東京大学の基礎物理学や基礎的な学問に根差した、今までの応用的な研究開発ではない現象解明に立ち返ったような未来技術の研究、社会講座を2年間で 17 件立ち上げてきています。これは東京大学でも過去にないスピードとのことです。それから当時 200 社ちょっとだった東大発のベンチャー企業が現在は 520 社を超えていると聞いています。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

画像は東京大学の先生方と文理融合で作った空気の価値化ビジョンです。共に外部公表として発表もしています。グローバルサウスを含めた世界中の国々に空調の利便性を普及させていくといった Cooling for all から始まって、単に温める・冷やすだけでなくコロナのタイミングで取り沙汰されたように非常に安心、安全、健康で快適な空間を提供していこうという Beyond cooling といったような領域。それから空気というのは全人類に共通する社会的共通資本であり、一(いち)企業がビジネスに活用するだけでなく地球の共通資本として守り育てていかなければならないということで、そういった視座からするとどういった空気・環境のインフラ事業があり得るのだろうといった議論から研究シナリオを作り、プロジェクトを設定し、具体的な研究テーマを作り実行しています。

大阪大学との産学連携の事例

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

大阪大学とは、機械分野とフッ素化学分野におけるコア技術の共同研究を遂行しています。 2017 年からは弊社が不得意であった AI 人材の育成と情報科学分野での共同研究ということで、包括連携で 10 年契約をさせていただいていました。

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

特に AI 人材を弊社ではなかなか採用できない中で、大阪大学に協力していただき、弊社の新入社員 100 名に2年間 AI 教育を実施するという、いわゆる AI 大学を運営しています。

京都大学との産学連携の事例

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

京都大学とも包括連携を進めています。京都大学の特徴は滋賀県の長浜市で 10 年間かけて収集した1万人分の健康調査データというビッグデータがあることです。このビッグデータと空調との相関関係を見つける中から新しいテーマを一緒に作るということをやっています。それから京都大学には世界中のアジア・アフリカセンターとの研究ネットワークがありますので、グローバルサウスでこれから空調市場が発展していくところを先回りして空調コンセプトを立てて取り組んでいくという、問いから考えるテーマづくりにも取り組んでいます。

鳥取大学との産学連携の事例

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

鳥取大学には、鳥取砂丘の上に乾燥地研究センターというオンリーワンの研究センターがあります。世界中の観測研究センターとここはネットワークが通じており、世界の陸地の 43 % が乾燥地で、世界の人口の 33 % がそこに住んでいるということを教えてもらいました。まさにグローバルサウスとしてこれから空調を使っていただく将来の顧客ということで、その地域に向けた製品のコンセプトを立てながら、テーマ作りの活動を進めています。

イノベーション人材のダイバーシティ


産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

私(河原氏)がダイキンに入社した 38 年前と比べて関東でもダイキン工業の知名度が上がり、関東の大学から優秀な学生さんが入社してくれるようになりました。しかし、みんなを引っ張るイノベーションリーダーは少ないと感じています。もちろんイノベーションリーダーだけが大切なわけではありません。冷静な技術者はたくさんいるので、その中からイノベーションリーダーとなれる人を早期に抜擢(ばってき)してチャンスを与え続けることで、イノベーションが成功するまでめげずに目的を持ってヒトを引っ張っていけるリーダーの選抜・育成が今後の弊社の鍵だと考えています。

講演者紹介

産学連携(オープンイノベーション)事例~ダイキン工業の取り組み~

河原 克己 氏
ダイキン工業株式会社 執行役員 テクノロジー・イノベーションセンター副センター長

【略歴】
1987 年ダイキン工業入社。
機械技術研究所で材料やトライボロジーの研究等に従事。
2000 年機械 R&D 戦略室課長、2005 年空調開発企画室長として R&D 戦略を担当。
2011 年テクノロジー・イノベーションセンター推進室長として、R&D 戦略・組織・マネジメント手法の立案、同センターの建築推進等の構想~建築~設立を担当。
2015 年より現職にて産官学連携推進を担当。
東大・阪大・京大等との包括連携を締結し実行推進。
2020 年執行役員に就任。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。

技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。

オープンイノベーションの推進についてお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
「まだ方向性が決まっていない」
「今は情報収集段階で、将来的には検討したい」

など、具体的な相談でなくても構いません。
リンカーズが皆さまのお悩みや課題を伺い、今後の進め方を具体化するご支援をさせていただきます。

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