• 配信日:2024.05.21
  • 更新日:2024.05.23

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2024年の技術トレンド16選:生成AIからHMI、進化するディスプレイ技術まで

2024年の技術トレンド2:進化するHMI(Human Machine Interface)


2024年の技術トレンド16選:生成AIからHMI、進化するディスプレイ技術まで

デジタル機器の操作手段として、キーボードやコントローラー、タッチパネル、そして音声操作と、より自然な入力手段が実用化されてきました。近年では、さらに自然な顔の表情や手の動きを検知してデバイスを操作できる様々な手段が提案されています。
こうした新しい HMI 技術を用いることで、意識的なインプットだけでなく無意識に近い動きまで反映して、よりユーザーの気持ちや状況に即した対応が可能になると期待されます。

顔の動きや視線でデバイスを操作するHMI技術

従来の HMI 技術は、手の動きや声など、意識的な入力操作が主に取り扱われていましたが、近年では、顔の筋肉の動きや瞬き、頷きなど、より無意識に近い動きを検知し、デバイスの動作に反映させることが可能になってきています。
例えば、Wisear 社はユーザーの脳、目、顔の筋肉からの生体電気活動を用いてデバイスのコントロールが可能なイヤフォンを開発しています。また、Naqi Logix 社は顎(あご)を締めたり、眉を上げたりといった動作をデバイス操作に活用しています。
現在は、主に体を動かすことが困難な方に向けたインターフェースとして開発が進められていますが、それだけではなく、こうした無意識に近い動きを AI が認識することで、より個々のユーザーの気持ちや状況に寄り添った対応ができるようになると期待されます。

事例7:ニューラルインターフェース機能付きワイヤレスイヤフォン「Perceive」 by Wisear

フランスのスタートアップ企業 Wisear は、ニューラルベース技術を採用したコントロール機能付きワイヤレスイヤフォン「 Perceive 」を開発しています。 同製品は、ユーザーの脳、目、顔の筋肉からの生体電気活動を記録するための小さな電極と、生体電気信号を AI アルゴリズムが読み取り可能なレベルに増幅するためのアンプと、生体電気信号をリアルタイムで解釈してジェスチャーを認識するための AI アルゴリズムにより、ユーザーが音声以外の方法によりデバイスをハンズフリーコントロールすることを可能にしています。 同製品は、ユーザーの顔の動きを「読み取る」ことができ、これにより、例えば顎を食いしばるという動作で、音楽の再生を制御したり、電話に応答したりすることができます。 同社は、同製品に使用されている音声以外のハンズフリーコントロールを可能とするニューラルインターフェース技術をワイヤレスイヤフォン、産業用 AR、トランシーバー、ゲーミングヘッドセットへ適用することを意図しています。

事例8:デジタルデバイスを瞬きや首の傾きで操作可能なインターフェース「Naqiニューラルイヤーバッド」 by Naqi Logix

Naqi Logix は、瞬き(まばたき)や首の傾きでデジタルデバイスを操作できるインターフェース技術を開発し、障害者の生活を支援しています。 同社の「Naqiニューラルイヤーバッド」は、音声やタッチ、画面、カメラを使わずに、コンピューターやデジタルデバイス、スマートホーム IoT デバイス、ロボット、車いすを操作できる次世代のインターフェースです。顎を締めたり、眉を上げたりすることで発生する電気信号を、具体的なコマンドに変換する技術を用いています。 障害者や高齢者、ゲーマー、e スポーツプロフェッショナル、緊急対応要員など、幅広いユーザーが、静かで目立たない入力方法でテクノロジーを活用できるようになると期待されています。また、Naqiニューラルイヤーバッドは、脳インプラントに対する安全で非侵襲的な代替手段となります。 同技術は、障害者や高齢者の生活支援、ゲームや e スポーツの操作、緊急対応要員のコミュニケーションなど、幅広い用途で活用が期待されています。

生体電位を用いたHMI技術

手や指を動かす際に発生する筋電位信号や振動を、手首に取り付けたリストバンド型デバイスで検知することで、手の動きをある程度識別するデバイスが開発されています。
こうした生体電位などを用いた HMI 技術は、ポケットの中など手の動きが外から見えない状態でも操作が可能になることや、力の入れ具合を検知できるなど、従来のカメラベースや慣性センサを用いたモーションセンサとは異なる価値を提供できると期待されます。
Wearable Devices Ltd や CoolSo 社など、こうしたデバイスを実用化するベンチャー企業が注目されています。

事例9:生体電位センサを用いてApple Watchのジェスチャー操作を可能にするリストバンド型デバイス「Mudra Band」 by Wearable Devices Ltd

イスラエル国の Wearable Devices Ltd は、Apple Watch に取り付けて非接触でジェスチャー操作するリストバンド型デバイス「Mudra Band」を提供しています。 同製品には、バンドの内側でユーザーの皮膚と接触する3つの SNC( Surface Nerve Conduction )センサと6自由度の IMU( Inertial Measurement Unit )が搭載されています。手首の動きや皮膚表面の生体電位を検知し、機械学習アルゴリズムを用いて指の動作をリアルタイムで分析・分類します。 手首に生じるマイクロボルトのスケールの微小な生体電位を検出することで、手指の動きによる5種類のジェスチャー操作(エアマウスポインタ、タップ、ピンチ・アンド・ホールド、ピンチ&スワイプ、ツイスト)を用いた操作が可能となりました。 同製品は、エクササイズや荷物の運搬などで Apple Watch のスクリーンをタッチするのが難しい状況において、音楽の曲送り、音量調整、通知のチェックなどのハンズフリー操作を行う用途への適用が想定されています。

事例10:筋肉振動を計測可能なバイオセンサを搭載したウェアラブルデバイス「CoolSo」 by CoolSo

筋肉バイオセンサに焦点を当てた米国ベンチャー企業 CoolSo, Inc. は、筋肉の振動信号を測定し、個々の筋肉レベルを測定できるウェアラブルコントローラー「CoolSo」を開発・販売しています。 同製品は、時計型ウェアラブルデバイスで、内蔵バイオセンサにより腕の筋肉の振動信号を検出し、使用者のジェスチャーを認識します。同製品は、標的筋活動信号から所定値を超える標的特徴信号を、ターゲット特徴データに変換・分類し、天候に左右されずに均一な測定ができます。 同製品は、筋肉疲労、ジェスチャー、筋力レベルなどの詳細情報を認識し、ウェアラブルなジェスチャーコントロールを実現します。また、コントローラーを直接操作しなくても、指の動きやジェスチャーだけでゲームを操作可能にします。 同製品は、PC やゲーム、VR 用コンテンツ、産業用 AR としての非接触コントローラーとして適用可能なだけでなく、身体障がい者(肢体不自由)をサポートする医療用リモートコントローラーとしての適用も意図しています。

VR空間での歩行を再現するHMI技術

現状の VR デバイスは、顔の動きや手の動きはトラッキングしてアバターと同期することができますが、VR 空間内での移動は手元のコントローラー操作により行うことが多く、没入感を下げる原因となっていました。
こうした課題に対して、トレッドミル型のデバイスを用いて、ユーザーがその場に留まりながら歩行動作を行うことで VR 空間内での移動を可能にするソリューションが KATVR 社や Virtuix 社から提案されています。
これらのトレッドミル型デバイスにより VR 空間内を自分の足を使って散歩したり走ったりすることで、より高い没入感が得られることが期待されます。

事例11:非接触センサ技術に基づく歩行型VRコントローラー by KATVR

KATVR 社は、低遅延・高精度非接触センサ技術と情報処理アルゴリズムを用いた VR コントローラー「KATWALKminiS」を開発・販売しています。 本製品は、定位置で利用できる歩行型コントローラーであり、プレートに内蔵された歩行・体勢検知センサを用いて人体の動き・姿勢を検出し、専用アルゴリズムを介して出力される動作情報をアバターの動きと連動します。また、同プレートが VR コンテンツの動きと連動して振動触覚フィードバックをユーザーに付与することもできます。 これにより、自分の足を動かしてゲーム・操作ができるようになり、臨場感・没入感の高い VR コンテンツを体験・提供できるようになります。

事例12:VR空間での歩行や跳躍を実現できるトレッドミル型デバイス by Virtuix

Virtuix 社は、360 度歩行・走行・跳躍・屈む(かがむ)動作を再現できる、全方向性トレッドミル VR コントローラー「Omni One」を開発・販売しています。 本製品は、全方向性トレッドミル、専用シューズ、体を固定できるベスト、360 度移動に適した調整可能なアームで構成されます。設置した磁気式トラッキングと圧力センサなどを用いてユーザーの移動情報を検出し、イメージセンサを備えたカメラを用いて視線方向・角度を測定し、実体験に近い映像をレンダリングできます。 これにより、その場から動かずに、歩行・走行・跳躍・屈むなどのアクティブな動作を VR ゲーム上に再現できるようになり、スペース・安全性の問題を改善できます。

2024年の技術トレンド3:ディスプレイの多様な進化


2024年の技術トレンド16選:生成AIからHMI、進化するディスプレイ技術まで

ディスプレイ技術はこれまで高画質化・大型化を中心に進化してきましたが、近年ではそれに加えて立体的な表現を実現する技術が注目されてきています。
完全な 3D 映像を実現するホログラフィックディスプレイの実現はまだ先と思われますが、ディスプレイ内部に 3D 空間映像を実現するライトフィールドディスプレイや、空間に浮いたような映像を表示できる透明ディスプレイなど、3次元的な表現を可能にする新しい技術が実用化段階に入っており、今後、新しい映像表現の実現が期待されます。

実用化段階に入ったライトフィールドディスプレイ

裸眼かつ任意の視点での立体視が可能なライトフィールドディスプレイが実用化段階に来ています。また、AI 画像処理技術の発展により、既存の 2D 映像を 3D 映像に変換することも可能になっており、3D 映像を個別に作成する必要もなくなってきています。
ライトフィールドディスプレイは、画面の内部に 3D 空間が広がるように再現されますが、映像の臨場感や没入感が高まることが期待されます。

事例13:裸眼立体視を可能にする3Dディスプレイ技術「DLB(回折型ライトフィールドバックライト)」 by Leia

アメリカのベンチャー企業である Leia Inc. は、裸眼立体視が可能となるディスプレイ向け DLB(回折型ライトフィールドバックライト)技術を開発しました。 同ディスプレイは、LCD パネル、DLB レイヤー、標準モードバックライトの3レイヤー構造となっています。DLB レイヤーは回折格子とナノ構造を持っており、光の回折によりLCD前面のカスタムライトフィールド照明による 3D 効果を生み出します。 これにより、見る角度によってディスプレイの見え方を変化させることができ、また立体画像認識に不可欠であった 3D メガネや特別なアイウェアを使わない 3D 画像による没入感を生み出すことが可能です。

事例14:高精細なライトフィールドディスプレイによって立体的なホログラフィックを実現 by Avalon Holographics

Avalon Holographics は、プロジェクターアレイからなるライトフィールドディスプレイを開発し、1画素を小さくした高精細な 3D ディスプレイの実現化に成功しました。 同社の製品は2層のレンズシステムを有しており、第1のレンズ層ではプロジェクターアレイからの光線を受け取り、第2のレンズ層は第1層のレンズから光を受け取るように配置されライトフィールドを形成します。 同技術によって、小さな画素サイズで立体画像を形成し、かつ小型で消費電力も低減するライトフィールドディスプレイが実現できました。 同技術は、自動車設計や医療画像処理、軍事作戦上の地形把握など、視覚情報の共有化で高いベネフィットが得られるユーザーをターゲットとしています。

透明ディスプレイの可能性

ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー展示会である CES2024 では、LG Electronics のワイヤレス透明ディスプレイが大きな注目を浴びていました。ディスプレイの後ろが透けて見える透明ディスプレイは、見た目のインパクトだけでなく、商品の入ったショーケースに用いることで商品に重ねて情報を表示するデジタルサイネージのように用いたり、通常のディスプレイと重ねて配置して情報を多層的に表示したりするなど、工夫次第で新しい映像表現も可能になります。

事例15:ワイヤレス透明ディスプレイ「LG SIGNATURE OLED T」 by LG Electronics

LG Electronicsは、透明なデザインが特徴の 77 型 4K 透過 OLED ディスプレイ「LG SIGNATURE OLED T」を CES2024 で展示しました。
このテレビは常に後方が透けて見えますが、黒い背景幕を上下させることで通常のテレビのように使用することも可能です。同ディスプレイには、映像や音声を無線で伝送するデバイス「Zero Connect Box」が付属しており、解像度は 4K、リフレッシュレートは最大 120Hz に対応するため、ケーブルの取り回し不要で設置が自由自在です。同ディスプレイは AI 性能を従来の4倍に強化し、グラフィック性能が 70% 向上、処理速度も 30% 速くなりました。

事例16:超薄型、高透過率の大型ホログラフィックLEDスクリーン by Muxwave Technology

中国の Shenzhen(深圳)Muxwave Technology Co., Ltd. は、超薄型で高透過率の大型ホログラフィック LED スクリーンを開発しています。 同製品は、フィルム上に 3.91mm ピッチのメッシュ状パターンが構成されており、メッシュの交点に LED ピクセルを配置します。メッシュになっていることで奥が透けて見え、透明 LED ディスプレイスクリーンとして利用できます。 1枚のユニットが横 20cm x 縦 90cm で、縦横自在に組み合わせることができるため、透明に近い巨大な LED スクリーンを構成することができます。 同製品は、ショッピング モールのウィンドウなどのディスプレイに利用されることを想定しています。

著者紹介

2024年の技術トレンド16選:生成AIからHMI、進化するディスプレイ技術まで

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 リサーチプラットフォーム事業本部 オープンイノベーション研究所

【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

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