- 配信日:2024.02.28
- 更新日:2024.11.22
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カーボンニュートラル技術20選〜汚染低減・可視化・資源の有効活用編~
この記事は、リンカーズ株式会社(以下、弊社)が主催した Web セミナー『環境汚染の低減・希少資源の有効活用編 カーボンニュートラル 2023 年注目技術 20 選~第4弾(全4回)~』のお話を書き起こしたものです。
弊社では、カーボンニュートラルの先端技術とトレンドを調査し、その結果をまとめた「カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査レポート」を作成しています。このレポートの中から、「環境汚染の低減(・可視化)/希少資源の有効活用」に関する注目すべき事例を 20 個抜粋して紹介しました。
セミナーで使用した講演資料を記事の最後の方で無料ダウンロードいただけます。
カーボンニュートラルに興味がある方は、ぜひお読みください。
◆目次
・カーボンニュートラルとは何か
・「環境汚染の低減/希少資源の有効活用」の調査分野
・汚染低減技術の事例
・汚染可視化技術の事例
・資源の利用低減/有効活用の事例
・カーボンニュートラル最新技術動向マルチクライアント調査レポートのご案内*より詳しく知りたい方にオススメ
カーボンニュートラルとは何か
カーボンニュートラルは、環境省の『脱炭素ポータル』にて、以下のように定義されています。
「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」
ポイントは「温室効果ガス」ということで、二酸化炭素( CO2 )に限らずメタンなど他のガスにも対応する必要があることを言及している点です。また「排出量と吸収量を均衡させる」とあるため、必ずしも温室効果ガスを出さないだけでなく、排出してしまった温室効果ガスを何らかの形で吸収して排出量と相殺できるのであれば、それもカーボンニュートラルであると考えられます。
「環境汚染の低減/希少資源の有効活用」の調査分野
今回のテーマである環境汚染の低減 / 希少資源の有効活用について、以下3つの分野に分けて事例を調べました。
- ・汚染低減技術
- ・汚染可視化技術
- ・資源の利用低減 / 有効活用
それぞれの分野に該当する事例を紹介していきます。
汚染低減技術の事例
Upcycle Technologies の事例
Upcycle Technologies という企業では、湿った廃棄物を利活用可能な水やエネルギーに分離し、廃棄物を削減する技術を開発しました。湿った廃棄物を粉砕混合して、水分量 70 〜 80 % のスラリーを生成。このスラリーを加熱することで、エネルギーとして使えるガスや蒸気を抽出し、冷却して水とミネラルを取り出すことを可能にしました。この技術により、最大 95 % の廃棄物を削減できるとされています。
他にも、廃棄物を減らしつつ、燃料などに使える有用な成分を抽出する技術の開発が多くの企業で取り組まれています。
株式会社ヴェルテックスジャパンの事例
株式会社ヴェルテックスジャパンでは、マイナスイオンを使って有機物を熱分解する技術を開発しています。空気が強磁性体(きょうじせいたい)を通過するときに発生するマイナスイオンを有機物中の水分に反応させることで、ヒドロキシルイオンを発生させます。その後ヒドロキシルイオンが有機物の炭素分子に接触すると熱を発生させ、乾燥・炭化・分解を引き起こすというプロセスを開発しました。この技術を使うと化石燃料を使うことなく、 最小限の CO2 の排出量で廃棄物をイオン化することが可能です。
他にも亜臨界水処理など、熱分解以外の廃棄物減容処理技術が開発されています。
Aclarity, LLC の事例
Aclarity, LLC という企業では、電気化学的に廃水中の PFAS (パープルオロまたはポリフルオロアルキル物質)を破壊するシステムを開発しました。このシステムを使うことで、廃水の中に含まれる PFAS の分解が可能です。
Aquagga, Inc. の事例
Aquagga, Inc. という企業では、高温の圧縮とアルカリ性触媒を使った処理により、水の中の PFAS を分解する技術を開発しました。
他にも PFAS を分解して、環境に出さないためのさまざまな技術が研究されています。
IADYS の事例
IADYS という企業では、河川、湖、運河などに浮かぶ廃棄物や油を自発的に回収するロボットを開発しました。ロボットは遠隔操作が可能で、センサーを使って廃棄物を検知し、装着したネットで回収します。
株式会社アダストリアの事例
株式会社アダストリアでは、海洋汚染防止に向けたアプローチとして、マイケロプラスチックを含む繊維くずの流出を抑える洗濯ネットを開発しました。衣類などをこのネットに入れてから洗濯機で洗うと、ネットが衣類から出た繊維くずを排水しないように抑えるフィルターの役割をします。
他にもさまざまな企業が、海洋へのマイクロプラスチック流出対策技術を研究しています。
Axine Water Technologies の事例
Axine Water Technologies という企業では、産業廃水に含まれる汚染物質を、化学物質を使わず電解酸化技術を使って、低コストで処理する技術を開発しました。
Wadis の事例
Wadis という企業では、化学薬品を使わずに汚水を浄化する技術として、高電圧電気パルスを使うシステムを開発しています。汚水をポンプで放電リアクターに送り、リアクターの中でパルス放電させることで、汚染物質を分解可能です。
このような電気的方法による排水処理技術も、さまざまな企業で研究されています。
大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社では、土の中の有害な物質や油を分解する菌の働きを活性化させる活性炭を開発し、活性炭と菌を組み合わせることで土の中の油汚染を効率的に改善・改質する技術を開発しました。この技術を使うと、油の臭いや油膜の解消に1カ月かかるところを、1時間ほどに短縮可能です。
土壌改良は難しい分野とされてきましたが、昨今さまざまなソリューションが提供されつつあります。以下の画像にまとめたのは、微生物の働きによって土壌改良を行う技術の例です。
JNIテックの事例
JNIテックという企業では、建物や工業製品を清掃する際に、重曹を主原料としたパウダーを用いた環境にやさしいブラスト工法を開発しました。従来、清掃の際に使用していた洗剤が環境に及ぼす影響が問題視されていましたが、その問題の解決につながる技術です。重曹を使うと単に水だけで洗うよりも洗浄効果が高まり、重曹自体が環境に及ぼす影響が少ないため、注目されています。
株式会社グリーンテックジャパンの事例
株式会社グリーンテックジャパンでは、ドライアイスを使って汚れを落とす技術を開発しています。ドライアイスをパウダーにして汚れに吹き付けることで、その勢いと、汚れと汚れが付着したものとの間にドライアイスが入り込むことで、ドライアイスが気体になるときに汚れを剥がして洗浄するというものです。洗浄後のドライアイスは気体になり、廃液などが出ないため、クリーンな洗浄技術として注目されています。
水と洗剤を使う以外の方法で環境負荷を減らしながら洗浄する技術も研究が進んでいます。
株式会社HOTJETの事例
株式会社HOTJETでは、水を高温・高圧状態にして亜臨界状態という非常に流動性の高い水にすることで有機物を洗浄できる方法を開発しています。水が亜臨界状態になると、亜臨界反応によって酸性・アルカリ性両方の性質を持つようになり、アルコールのような浸透力を有して溶解力が高まって、普通に水で洗浄するよりも効果的な洗浄が可能です。
大生工業株式会社
大生工業株式会社では、水の中にマイクロバブルを発生させて、水と気泡で汚れを落とす技術を開発しました。ノズルに水圧をかけて空気を水の中に取り込ませて、その空気を微細な気泡にして、洗いたいものに水と気泡をぶつけるという技術です。水だけで洗うよりも洗浄力が高まるとされています。
水のみを利用した洗浄技術も、多くの企業が研究中です。
次のページ:汚染可視化技術の事例などを紹介します。