• 配信日:2023.11.29
  • 更新日:2023.11.29

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代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『代替食品と未来の食文化~最新動向~』のお話を編集したものです。

農林水産省 農林水産研究所 客員研究員の大野 泰敬(おおの やすのり)様に、世界と日本における代替食品のトレンドや、注目技術、解決していくべき課題についてお話しいただきました。

最新の代替食品業界の現状について知りたい方は、ぜひお読みください。

代替食の歴史


代替食の歴史はかなり長く、各国の文化や地域性に応じて、はるか昔から存在してきました。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

アジアでは豆腐、セイタン * 、テンペ * など植物ベースの食品が、数世紀にわたって食文化の一部として受け入れられてきました。この背景には、動物性の食品を避ける宗教的な理由や、健康面での理由、食料確保が困難な時期があったことなどがあるとされています。

*セイタン=グルテンミート。小麦などに含まれるグルテンを主原料とした加工食品。
*テンペ=テンペ菌による大豆の発酵食品。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

歴史が進むにつれて、代替食も変化してきました。 20 世紀に入ると、西洋諸国ではベジタリアンやビーガンによる運動が開始。以来、代替食の需要が一気に高まりました。その後、第二次世界大戦、 1960 年代の食糧危機、カウンターカルチャーの中での健康、そして環境への関心の高まりが加速。健康や環境、動物の権利などを重視する消費者が増える中で、代替食品が徐々に一般化してきました。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

近年、代替食品の技術はどんどん進化してきています。植物ベース・セル(細胞)ベースの技術を利用して、動物性食品と同じ味や食感を持つ代替食品が急増中です。

代替食品業界の現状


代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

代替食品業界の市場は、近年急速に成長を遂げています。将来的な予測として、 2028 年にグローバル市場規模は 1,865 億米ドルを超えるとのことです。その後も市場規模は増えていくと想定されています。

植物ベースの肉や乳製品は、環境への関心が高まる中で多くの消費者から支持を集めている状況です。

ただ個人的には、代替食品の市場が伸びていくというデータを信じ過ぎない方が良いのではないかと考えています。食品業界で伸びている市場の実情や、話題になっている企業の現状を見ると、乗り越えるべき課題は多いというのが所感です。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

最新の研究結果では、代替食品は従来の動物性食品と比較して、環境への負荷が大幅に低減できることが明らかになっています。健康面でも、コレステロールや脂肪の摂取量を減少させる効果があると分かっており、健康に関する専門家たちも代替食品を推奨する動きを見せています。

一方、真逆の意見を唱える人々がいるのも事実です。どちらが正しいのかは、各個人がデータを集めて客観的に判断していく必要があると感じます。

代替食品による健康/環境への影響


代替食品が及ぼす健康・環境への影響ということで、それぞれの利点とリスクを紹介します。

代替食品の健康への利点

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

従来の動物性食品と比較して、代替食品は健康上の利点が多いといわれています。植物ベースの食品は、コレステロールや脂肪の含有量が少ないため、さまざまな健康リスクを低減する効果が期待されています。

また、代替食品はアレルギーを引き起こす可能性を解消するということで、アレルギー体質の人にとって安全な食の選択肢になりうることも利点といえるでしょう。

代替食品の健康へのリスク

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

一方で健康へのリスクもあります。例えば、代替食品の過剰摂取による栄養の偏り、添加物・化学物質の摂取、必要な栄養素の不足、特定の栄養素の不足による免疫の低下など。

代替食品を摂取しているからといって健康になれるわけではなく、バランスの良い食事を摂ることが必要となるでしょう。

代替食品の環境への利点

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

従来の動物性食品に比べ、代替食品は食用の動物の育成に必要な水の量を削減します。また、動物を育てるための土地の使用効率を向上させる効果もあります。特に乾燥地帯など水が不足しがちな地域での食品生産が可能になることで、食糧危機の解消に寄与することも期待されています。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

さらに、代替食品は温室効果ガス排出量の大幅な削減にも有効です。動物性食品は、動物から排出されるメタンガスや二酸化炭素を抑えることが難しいのですが、植物ベースの代替食品なら抑えることができます。

代替食品の環境へのリスク

例えば大豆ミートを生産する場合、大量の水が必要になります。そのため、動物性食品を生産する以上の水と、肥料が必要になるという意見もあります。近年、肥料の価格が高騰してきており、将来的に肥料が不足するのではないかという議論も起きていますし、限られた水という資源を、肉などの代替化を図るためだけに使っても良いのかという議論も起きています。

主要な代替食品企業の事例


代替食品の開発などに取り組む、世界の企業をいくつか紹介していきます。

Beyond Meat

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

(画像引用元:Beyond Meat ウェブサイト)

Beyond Meat はアメリカを拠点に活動している、代替肉の先駆けとなる企業です。彼らが作っている植物ベースの肉は、動物性の肉と同じ食感を保ちながら、環境や健康への影響を大幅に削減することを目指しています。

Oatly

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

(画像引用元:Oatly ウェブサイト)

Oatly はスウェーデンの会社で、オートミルク専門のブランドを展開しています。伝統的な乳製品に代わる植物ベースの乳製品を提供。アレルギーなどにより乳製品を避ける消費者から支持されていて、環境への影響も最低限に抑えられることを強調していることから、サステナビリティを重視する消費者からも支持されています。

Impossible Foods

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

(画像引用元:Impossible Foods ウェブサイト)

Impossible Foods はシリコンバレー発の代替肉ブランドとして有名です。特許取得済みのヘム鉄を含む成分を使用して、動物性の肉と同じ味・食感を再現しています。この技術により、多くの消費者が動物性の肉と違いを感じることなく植物ベースの肉を楽しむことが可能です。

代替食品企業が抱える課題


ここまでに紹介してきた代替食品企業は、さまざまな課題を抱えています。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

Beyond Meat は代替肉市場での成功を収めたように見えますが、原材料の供給、そして価格の変動、新たな競合の出現などにより、実はかなり危機的な状況になっています。売上・取引先の減少、マクドナルドとの取引停止、株価の激減、200 名前後の従業員解雇。このような状況から、アメリカの一部投資家などからは倒産の可能性が高いと予測されています。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

Oatly は乳製品の代替食品企業として圧倒的な地位を築いているのですが、大豆ミートと同じく市場が飽和し、やや伸び悩んでいる印象を受けます。競合が増えたことによる価格上昇、原材料の価格高騰、ブランドイメージに多額の出費がかかっていることなどが主な要因です。

大豆ミートの分野においては、原材料となる大豆の確保が非常に重要です。しかし、大豆を供給元の地域からコンテナ船で移送する際に、どうしてもエネルギーコスト、運賃などがかかるため、原材料費・商品価格の変動に大きく関わります。一方、商品価格を上げれば売れ行きは悪くなってしまうというジレンマを多くの企業が抱えているのです。

代替食品のトレンドと企業事例〜市場の将来性と解決すべき課題〜

代替食品業界全体を見ても同じような傾向があり、製品価格の高騰や生産コスト削減の難しさ、海外に展開していく場合の規制・法的な壁、一部消費者に受け入れられないこと、供給チェーンの複雑さなどが関係し、市場規模が拡大していくというデータに反して、大きな課題がいくつもあります。

総じていうと、代替食品事業は、一時はビジネスとしてうまくいっていそうに見えたのですが、実情として利益が出て儲かっている企業がどれくらいあるかというと、そう多くない状況です。

次のページ:代替食品のトレンドなどを紹介します。