• 配信日:2020.07.14
  • 更新日:2023.09.01

オープンイノベーション Open with Linkers

お客さんも巻き込むイノベーションのためのゆるい連合体とは?

※本記事は、Innovation by Linkersに過去掲載した記事の再掲載記事となります。

コマツ CTO室技術イノベーション企画部長 富樫良一 様より、ものづくり企業コマツのオープンイノベーションへの取組み状況や成功させる秘訣をお伺いしました。また、オープンイノベーションを進める中でのコマツ流Linkersの活用の仕方もお伺いできました。


建設機械市場も安住の地ではない

Q:コマツ様におけるオープンイノベーションについて教えて下さい。

コマツ 富樫様

CTOを明確に設置したうえで、コマツのビジョンを提示することです。

我々は果たして「重機の専門」としての立ち位置だけでいいのか? ICTの進化により破壊的なイノベーターが多く出現する状況を見て、予測不能な未来に対応できる、柔軟な組織体への変革という課題にコマツも直面していました。 そこで「建設機械市場も安住の地ではない」という危機感を持ち、2007年に就任した当時社長の野路(※現会長の 野路國夫氏)が、リーダーシップをとって、社内プロジェクトとしてオープンイノベーションへの取り組みを始めました。

私は大阪の開発センターでハイブリッド油圧ショベルの研究開発や設計に携わっていたのですが、2012年に、コマツの将来を変えていこうという社内プロジェクトのために本社に呼ばれ、オープンイノベーション活動に関わるようになりました。 具体的には、社内外のイノベーターと呼ばれる人たちと会社を変えていくための組織作りやオープンイノベーションのきっかけ作りについて議論したり、社外の動きの調査や社内への啓蒙活動をしたりしていました。 その活動の中で得たオープンイノベーションを進める上でのひとつの確信は、「CTOを明確に設置したうえで、コマツのビジョンを提示する」というものでした。

その後、2013年に大橋(※現社長の大橋徹二氏)が社長に就任し、オープンイノベーションの更なる強化を打ち出しました。 そして、2014年にCTO(最高技術責任者)の役職とそのスタッフ部門であるCTO室が新設され、その中に現在私が所属する技術イノベーション企画部も組織されました。 現在は、オープンイノベーションのための技術を求めて世界中を飛び回っています。

Q:コマツ様のスマートコンストラクション構想について教えて下さい。

コマツ 富樫様

コマツのオープンイノベーションの一部です。

我々の売り上げの約9割を占めるのは建設・鉱山機械の分野です。 その中で、一般建機のお客意の現場(コンストラクション)でビジネスイノベーションを起こそうとして取り組んでいるのがスマートコンストラクションです。

この他、コンストラクションよりも大型の機械が活躍する鉱山機械分野においてもオープンイノベーションに取り組んでいます。 さらに、林業機械や農業土木の分野もオープンイノベーションの対象にしています。これらの分野は本当にオープンイノベーションの宝庫です。 コンストラクション以外の分野も、非常に大きな可能性があります。

やりたいことを明確にすれば、足りないものが見えてくる

Q:オープンイノベーションのうえで、必要となる外部連携施策とは?

コマツ 富樫様

やりたいことの明確化です。

まずは、コマツが今やりたいこと、将来やりたいことを明確にする事が大事です。 我々はCTO室の決定を社内で共有するためにビジョンを視覚化した啓蒙用のCG映像を作ったりもしますが、そういう風にやりたい事を明確化すれば、社内でできる事・できない事を明確化することができます。

コマツは設立から96年もの歴史を持っている会社なので、コアとなる技術はもちろんありますが、それ以外の足りないものが分かれば、外部に頼むべき事も明確になります。 相手は、研究所、スタートアップ、大学など様々で、場所も日本だったり、シリコンバレーなどの海外だったり世界中のありとあらゆるところが我々の仕事場になります。

日本企業の発信下手はもったいない

Q:「Linkers」のマッチングは、コマツ様の中でどういう立ち位置ですか?

コマツ 富樫様

国内のパイプ役として欠かせない存在です。

海外との連携はできているのですが、国内の中小企業との連携が弱いという問題がありました。 人づてからでしかコンタクトできなかったり、身内から探すしか手段がなかったりもしました。 そもそも日本の中小企業、もとより大企業もそうですが、高度な技術を持っていても発信が不得手な場合が多いので、中々希望通りのものを探し出すのが難しい、というのが現実です。 そのような状況でしたので、「Linkers」さんのサポートはとっても厚く、重宝しています。

海外の場合は自分たちが動いて、国内の中小企業は「Linkers」さん。という使い分けをしています。 パイプ役として欠かせなく、丁度ツボにはまっています(笑)

展示会だけでは企業の真実はわからない

Q:展示会で事業パートナーを探す事もあるかと思いますが「Linkers」との明確な違いはありますか?

コマツ 富樫様

情報量と、真実性は「Linkers」から得られるものが一番です。


例えば工作機械の展示会などに行くと、日本の中小企業が多く集まるので業界の動向を知ることは出来ます。 ですが、なにせ数が多過ぎますよね。 それこそ星の数ほど。

実際に展示ブースへ足を運んで10~15分程お話を聞いても、その企業の深いところまではやっぱり分かりません。 企業が展示しているモノだったり、説明を伺って直感で理解するものもあったりはするのですが、連携までいくのは中々難しいです。

対して「Linkers」さんは約2000人のコーディネーターが中小企業の中に入り込んでいるので、コーディネーターだけが知っている情報を知ることが出来ます。 展示会やウェブサイトの情報だけでは知ることが出来ない、より深いところまで知れる、という所は大きな違いだと思います。 これは私が「Linkers」さんの特に気に入っている部分でもありますね。 ですので、展示会は連携の場というよりも、マーケットトレンドを知る、といった形で行くことが多いですね。

日本の中小企業の技術力が必要

Q:コデン様とのプロジェクトについて教えて下さい。

コマツ 富樫様

単純そうで奥が深い、日本の中小企業の技術力が必要となる事例でした。

我々のミッションである「全ての見える化」において地上だけではなく、地中や浅瀬などの水面下も見える化する必要があるという気づきのもと「Linkers」さんには「浅瀬の見える化技術」が欲しい、とだけオファーしました。そしてまずは、10社ほどのご紹介いただいた中から

  • 1. 高精度で
  • 2. どんな条件でも
  • 3. だれでも使える

の条件で、3社ほどに絞り込み、面談を経て、最終的にコデンさんの技術に決まりました。 「ラジコンボートで水面下を計測する」とだけ聞くと先進的な発想、それこそイノベーションとは誰も思わないかもしれませんが、例えば、航空測量は水が濁っていると使えない。 水の中に入るものは、使い勝手が悪い。

など、他の計測技術には一長一短があり前述の3つの条件を考えると、誰でも出来そうなように思えて、実はそうそう簡単にはできない。 単純そうで奥が深い、まさに日本の中小企業の技術力が必要となる事例でした。

イノベーションのためのゆるい連合体

Q:コデン様との連携は、あえて技術はそのまま、計測データだけ整合性をとっていて「ゆるい連携」に思えるのですが。

コマツ 富樫様

イノベーションのための事業パートナーとの「枠組み」が大事です。


「コマツ向けに全てを作ります」ではなくても、お互いに必要なものはオープンにするような入りやすい、イノベーションのための事業パートナーとの枠組み、つまりゆるい連合体が、コマツのオープンイノベーションのあるべき姿だと思います。

「浅瀬の見える化技術」を必要としていたコマツ様は、「水中(川底、港湾、浅瀬)の正確な地形形状計測と3Dモデリング技術のパートナー探索」として「Linkers」にマッチングをご依頼いただきました。 その結果、センシングに先端技術を用いたイヤースコープなどを開発しているコデン株式会社様とご面談、マッチングに至りました。

コマツ 富樫様からの学び


  • オープンイノベーションを成功させる上で必要な事の1つは、責任者を決めてビジョンを提示する事。

  • 「今やりたいこと」と「将来やりたいこと」を明確にする事で、「社内でできる事」と「社外ですべきこと」が明確化する。その上で、足りない部分を外部連携=オープンイノベーションで補うという考え方。

  • 丁度良いオープンイノベーションの形は企業によって違うかもしれませんが、コマツ様の場合「ゆるい連合体」という枠組みがあるべき姿だったのだと思います。

コマツ様とコデン株式会社様のマッチング事例は、テレビ東京の「ガイアの夜明け」という番組でも紹介いただきました。 Linkersでは発注を検討中の企業様へ向けて、随時無料説明会を実施していますので、業界に合った他の事例を知りたいなどのご要望がありましたら、お問合せ下さい。