- 配信日:2023.06.23
- 更新日:2024.07.01
オープンイノベーション Open with Linkers
フードテックの現状~日本の課題と海外のフードテック事例
この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『世界のフードテック事例と実態』のお話を編集したものです。
株式会社スペックホルダー代表取締役社長、農林水産省 農林水産研究所 客員研究員の大野泰敬(おおの・やすのり)様に、『国内外のフードテックについて』というテーマでお話しいただきました。
フードテックに興味のある方は、フードテックに関する全般的な状況把握の一助として、ぜひご覧ください。
◆目次
・日本のフードテックの課題
・日本におけるフードテックのイメージ
・海外におけるフードテックのトレンド
・フードテックの歴史とこれから
・将来を見据えた各国のフードテック事例
・海外と日本のフードテックの比較
・「食」の生産者の倒産や食糧危機を解決すべく取り組みを進める日本
日本のフードテックの課題
日本にはフードテックに取り組むさまざまな企業があるものの、技術の偏りが生じていたり、小さい規模感でサービスを展開したりしている企業が多い印象です。
マーケット自体も常に変化しており、変動するマーケットに対応できる戦術・戦略が十分に練られていない企業もたくさん見受けられます。
さらに優れた技術やサービスを持つ企業のデータが不足しているのも課題です。特に自社の技術を最大化できるパートナーに関する情報が不足している傾向が見られます。
各都道府県に長い歴史を持つ優良企業があるものの、その企業の技術などに関する情報はどのメディアを見てもほとんど公表していません。こういった情報がないままオープンイノベーションを行っているため、マッチングの精度が低いという現状があります。
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全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークや、弊社独自のネットワークを活用して、貴社の課題を解決できる最適なパートナーを探索します。
貴社の探索内容を要件整理したうえで、それに対応可能な候補企業からの回答を集めることができます。追加質問や面談調整も含めてオンラインで進捗管理ができ、実際にどこまで対応できるのかを生の声を聞いて確認することが可能です。
さらに開発したフードテックの技術やサービスが実用的でない場合が多いという課題もあります。ストーリーやビジョンばかりが重視されて、市場ニーズや顧客要望を満たしていない事例も散見されるのです。
あわせて、出口販売戦略の弱さも目立ちます。出口戦略・販売戦略をしっかり立てないとフードテック企業の売上にはつながりません。すると事業の継続が難しくなってしまいます。
海外のフードテック企業は日本の企業に比べて、出口戦略を上手に行っています。出口戦略が上手くできていると事業としての可能性を見出してくれる人が増え、投資や融資の機会にもなります。
ここまで説明してきた課題の全てに深く関わるのが、国のサポートが弱いことです。他国と比較して日本はフードテック産業への支援が弱く、限られた予算の中でできる政策はやっているものの、文字通り投資金額が桁(けた)違いです。他国では開発資金の 80 〜 100 %を国が賄う(まかなう)など、日本よりもサポートが充実しています。
日本におけるフードテックのイメージ
日本に暮らす人々が、どの程度「フードテック」を認識して、どのようなイメージを持っているのか調べてみました。
まず Google の検索トレンドを見ると、「フードテック」に関するキーワードの検索件数は少なく、まだ広く認知されていないといえます。
具体的にどんなキーワードが検索されているかというと、イベント情報について調べている割合が圧倒的に多く、まだ情報収集や実証実験の段階が非常に多いです。
また投資に関するキーワードも多く検索されていることから、「何か面白そうな技術はないか」と投資先を探したり、「面白い事業をやっている企業があれば協業したい」と考えていたりする方の割合が多いと思われます。このような結果から日本では「投資としてのフードテック」が多くの人にとってのイメージであると考えられます。
他に日本ではどのようなキーワードが検索されているかというと「大豆ミート」や「昆虫食」の2つの検索数が非常に多いです。この傾向は、海外と比べると大きく異なっています。
海外と日本では入ってくる情報の内容も異なります。「大豆ミート」を例に挙げると、 Beyond Meat という大豆ミートの分野で有名な企業があります。日本では大豆ミートの市場は右肩上がりで伸びていくという報道をよく目にするのですが、海外では、 Beyond Meat について以下のような報道をされています。
- ・売上が激減
- ・取引先減少
- ・マクドナルドとの取引停止
- ・株価 94 % 減少
- ・従業員 200 名解雇
- ・投資家によっては「倒産する」と予想
さらに大豆の生産においても水の確保、栄養分の豊富な土の確保など様々な課題があり、大豆の需要を満たすためだけの供給ができなくなる可能性があります。しかし、こういった情報は、日本ではほとんど報じられていません。海外ではどういう情報が報道されているのか、どういったものが流行っているのか。そういったものを調査しながら、今世界では何が起きているのかを知るということが非常に重要です。