• 配信日:2023.01.11
  • 更新日:2023.11.01

オープンイノベーション Open with Linkers

イノベーション事例~東京ガスの取り組みを徹底解説

東京ガスのハウスクリーニングの新規事業開発事例


共働き世帯など、都市部に暮らす忙しい方々に向けた、申込からサービス提供まで女性目線で設計された「ストレスフリー」がコンセプトのハウスクリーニングサービスを東京ガスで提供しています。

イノベーション事例~東京ガスの取り組みを徹底解説

なぜ東京ガスがハウスクリーニングを提供するのかという観点で見てみると、ハウスクリーニングとは、これまで東京ガスが提供してきた「住宅設備」のメンテナンスへの価値提供の拡大だと考えることができます。
機器の修理や交換は 10 年に1回くらいの頻度で行うことが多いため、一例を挙げると、家を買ったのが 40 歳のときであれば、最初の修理で東京ガスと顔を合わせるのが 50 歳のとき、次回が 60 歳のときとなります。しかしハウスクリーニングの場合は、1年に1回以上お客さまのニーズが発生するため、ご利用いただく頻度の高いサービスになるのではないかと考え、事業開発の取り組みを始めました。
これまで東京ガスが提供してきたサービスの延長にあるため、比較的スピーディに意思決定からサービス開始に至っています。それでもさまざまな試行錯誤を行ってきたので、一部紹介いたします。

ハウスクリーニングサービス開発に至るまでの試行錯誤

ハウスクリーニングサービスの立ち上げ時期は、すでにコロナ禍だったため、チームビルディングの難しさを実感しました。この経験を経て思うのは、最初に丁寧にやるべきなのはお客様の悩みの根本が何か、その解像度を高めることです。
メニュー開発や Web サイト設計、サービス開始後の PDCA サイクルなどを考えると、まずはどのようなお客様を対象にサービスを運用していくべきかという視点がないと意思決定がブレてしまい、結果として誰にも伝わらないサービスが出来上がってしまう可能性があります。
また1度決めたことを再検討するような手戻りも生まれがちです。顧客のペルソナが決まっていればサービスのブレが少なくなり、開始までのスピードも上がると思われます。
実際に東京ガスのハウスクリーニングで想定した顧客のペルソナは「都市に住む 40 歳前後の共働きの女性」です。このペルソナに該当する人は社内にも多く、例えば Web サイトの導線設計を行う際に、ペルソナに近い社員に意見を聞きながら修正していくことができました。
さらにサービスの立ち上げメンバーにもペルソナに合致する者が多かったため、議論を繰り返しながらペルソナが抱える悩みの解像度を上げていきやすかったと感じています。
またマーケティング施策の PDCA を回す上でもサービスの企画・立ち上げメンバーにペルソナに合致する人がいることは大きな優位性だと感じており、大手企業がひしめくハウスクリーニング業界で東京ガスが選ばれている秘訣の1つではないかと考えています。
さらに、ペルソナとして想定した顧客に東京ガスのハウスクリーニングを選んでもらうための「こだわり」として、以下の点で他社サービスとの差別化を行っています。

イノベーション事例~東京ガスの取り組みを徹底解説

  • ・注文が Web で完結できる
  • ・多様なメニューを用意している
  • ・自社研修施設を用意し、テストに合格したスタッフがクリーニングを担当する

2つのサービスを通して目指すイノベーション


『実家のお守り』とハウスクリーニングの2つについて紹介すると、たまに「全く異なるサービスをやっていますね」と言われることがありますが、私としては同じテーマに基づいたサービスだと思っています。
そのテーマとは「『家や家族のことは、自分でやるのが当たり前』そんな『心の枷(かせ)を解きほぐしていく』こと」です。少子高齢化が進むことで、今後子育てや介護などによる一人ひとりの負担は増えていくでしょう。その原因になっているのは日本人のまじめさから生まれる、義務感の強さではないかと思っています。この義務感を軽くしていくことが私たちの目的です。
人に任せられることは任せ、自分にしかできないことに注力できる世の中を創り、日本のイノベーションを支えるインフラになることを目指すサービスが『実家のお守り』と東京ガスのハウスクリーニングです。

イノベーション事例~東京ガスの取り組みを徹底解説

また 2022 年4月に東京ガスが新しく公表したグループ経営理念を体現したものだとも考えています。私たち東京ガスグループの存在意義は、「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」ということです。私が担当しているサービスは顧客視点で人に寄り添って都市の社会問題を解決し、時間創出という方法で未来を創る人たちのエネルギー“活力”となるサービスだと認識しています。

社外連携(オープンイノベーション)の必要性

今回はサービス開発までの社内での試行錯誤を中心にお話ししましたが、思い返せば試行錯誤をするためのヒントをくれたのは社外のパートナーだったと感じています。
特に私の中で最も印象に残っている言葉が、外部の方がおっしゃっていた「不確実な世界で重要なのはヘッドよりハンド」という言葉です。この言葉通り、机にかじりついて頭を動かすのではなく、まずは手や足を動かしてファクトを積み上げていくことが成功の秘訣なのだと痛感しています。この経験から外部連携(オープンイノベーション)の必要性も私自身、強く感じているところです。

講演者紹介

イノベーション事例~東京ガスの取り組みを徹底解説

望月 紳 氏
東京ガス株式会社 リビング戦略部 くらしサービス事業推進グループ(工学)

【略歴】
2007 年に東京ガス株式会社に入社後、一貫して、家庭用分野を担当。
大手不動産会社へ向けた法人営業を10年程経験した後、2016年より新規事業開発・新規サービス開発部門を経て、2020年以降、サービス事業の推進業務へ。
2021 年5月「東京ガスのハウスクリーニング」、2022 年3月「空き家管理サービス 実家のお守り」をリリース。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

「Linkers Sourcing」サービス紹介ページ
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

「 Linkers Marketing 」サービス紹介ページ
貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供します。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントを可視化することにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げます。

「 Linkers Research 」サービス紹介ページ
リンカーズのグローバルな専門家ネットワークや独自のリサーチテクノロジーを駆使し、貴社の要望に合わせて、世界の技術動向を調査します。調査領域は素材、素子、製品、ITシステム、AIアルゴリズムまで幅広く、日本を代表する大手メーカーを中心に90社以上から年間130件以上の調査支援実績があります。

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