- 配信日:2022.11.30
- 更新日:2024.08.06
オープンイノベーション Open with Linkers
オープンイノベーションの効果を最大化する”組織”と”仕組み化”
この記事では、リンカーズが 2012 年の創業より、さまざまな企業のオープンイノベーションを支援してきた経験から、オープンイノベーション成功のポイントをご紹介します。
◆目次
・オープンイノベーションの成功事例と日本企業の現状
・オープンイノベーションには専門組織が必要
・オープンイノベーションの課題は仕組み化
・オープンイノベーションが浸透している企業に共通する成功のポイント
・オープンイノベーションの活動を振り返ることで成果を最大化する
オープンイノベーションの成功事例と日本企業の現状
まずは、オープンイノベーションを推進させる成功例を見ていきましょう。
経営視点から取り組む例もあれば、現場視点で取り組んで成功を収めている例もあります。
それぞれの手段と主な取り組み企業は以下の通りです。
- ・ビジョン共有:シーメンス
- ・風土改革・目標設定:GE・P&G・フィリップス
- ・評価制度:GM・ロシュ・モンデリーズ
- ・社内課題の見える化:ハイアール・サムスン
日本企業においてオープンイノベーションを推進させるには、現場視点での「社内課題の見える化」が重要ではないかと、私たちは考えました。
サムスンは現場ニーズを吸い上げてオープンイノベーションを推進
サムスンによるオープンイノベーション推進の成功例を紹介します。
サムスンでは、以下のようなオープンイノベーションを進める仕組みが構築されています。
- 1. 韓国本国の事業部門から統括窓口に探したい技術が連絡される
- 2. 統括窓口からシリコンバレーのオープンイノベーションチームに探したい技術の連絡が届けられる
- 3. オープンイノベーションチームから統括窓口にレポートや優良スタートアップが紹介される
- 4. 統括窓口から事業部門に企業が紹介される
以上のようにサムスンでは本社側からシリコンバレーのオープンイノベーションチームに連絡が行き、意思決定や情報連携が行われるプロセスが機能しています。
ただし、長期テーマの場合は CVC (コーポレート・ベンチャー・キャピタル:投資を本業としない事業会社による出資や、そのための組織)が絡んでくるため、本国の事業部門が直接判断する仕組みになっています。
日本のオープンイノベーションの現状
日本のオープンイノベーションの現状はどうなっているのでしょうか。
NEDO オープンイノベーション白書によると、イノベーション創出環境整備に向けた取り組みステージは以下の通りです。
- ・Stage 0:無関心
- ・Stage 1:スローガン先行
- ・Stage 2:虫食い改革
- ・Stage 3:社内メカニズム化
このうち多くの日本企業は Stage 1と Stage 2に位置しているといわれています。
Stage1の「スローガン先行」は「重要課題となっているが、取り組みが個人任せで属人的な状態」を指します。
Stage 2の「虫食い改革」は「重要課題となっており、さまざまな取り組みがなされているものの、多くが部分的かつ有機的に行われているため不十分な状態」のことです。
Stage1と2に位置している企業が多いということはつまり、多くの日本企業では、オープンイノベーションの推進を社内で仕組み化できていない状態だということです。
オープンイノベーションには専門組織が必要
私たちがさまざまな企業から話を聞いたり、レポートを見たりしてきた中で分かったのは、オープンイノベーションを推進するには、上の図にあるような専門組織を中心とした仕組みが必要だということです。
専門組織が社内の窓口として、そして社外の窓口として機能するよう、上の図のようなリボン型モデルを構築するのが理想です。
このような仕組みを作り上げ、社内調整と社外連携を実施できている企業ほど、オープンイノベーションを積極的に進められています。
トップのコミットメントがマスト
オープンイノベーションを推進するには、前述した専門組織の設置と仕組み化に加えて、会社トップによるコミットメントが欠かせません。
トップのコミットメントが得られないと、情報が集まりにくくなるでしょう。また、プロジェクトを推進する後ろ盾がないため、途中で頓挫してしまうことも考えられます。
トップのコミットメントを得て、専門組織が権限を持てるようにしましょう。
オープンイノベーションの課題は仕組み化
オープンイノベーション推進にあたって、企業が抱えている課題にはどのようなものがあるのでしょうか。
私たちが 2018 年に「オープンイノベーションで困っていること」をテーマにアンケート調査をしたところ、次のような回答が得られました。
1. 仕組化:25
2. 進め方:11
3. 情報収集:10
4. 意識向上:6
5. 課題抽出:5
6. 特定技術:3
7. これから:3
N=100
課題として1番多かったのは、仕組み化ができていないことでした。
オープンイノベーションの活動を仕組み化するメリット
多くの企業や担当者が課題と感じているオープンイノベーションの活動の仕組み化を実現すると、次のようなメリットが得られます。
- 1. ネットワークが維持・強化できる
- 2. 組織内のナレッジが蓄積される
- 3. 社内の風土改革に繋がる
1つ目は、ネットワークの維持・強化。単発で社内の技術者や一部の部署の人が社外と連携したとしても、それだけで終わってしまいます。連携先企業が優良企業でポテンシャルを秘めている会社であったり、逆に取引するには厳しい印象を持ったりしたとしても、その情報が残りません。次に同じようなテーマで連携先を探すときに困ってしまうでしょう。
2つ目は、組織内のナレッジ(知識・情報)が蓄積される点。仕組み化しないと、他部署が同じような活動をした場合に、気づけないかもしれません。
例えばオープンイノベーションを仕組み化できていない大手企業では、ある部署が外部組織に連絡を取ったところ、別の部署が既に付き合いを始めていたというケースも珍しくないようです。仕組み化ができていれば、このような研究開発テーマや外部連携の重複を防ぐことができるでしょう。
3つ目は、社内の風土改革に繋がる点です。オープンイノベーションを仕組み化せずに放置していると、自前主義を推進してしまい、新しい技術を取り入れる土壌が失われてしまいかねません。仕組み化が、このような社内風土の改革に繋がるといえます。