• 配信日:2019.06.17
  • 更新日:2023.06.28

オープンイノベーション Open with Linkers

「質実剛健」だけでは、次の100年を生き残ることができない。
老舗大企業が自己改革のために生み出したユニークなシステム

はじめに


ヤンマーグループは2012年に創業100周年を迎えたことを機に、ブランドイメージを一新。ヤンマー株式会社 山岡健人代表取締役社長の、次の100年のための改革に向けた強いリーダーシップのもと、組織的にオープンイノベーションに取り組まれています。

他社に例を見ないユニークなシステムについて、オープンイノベーションの改革を担っているヤンマー株式会社 中央研究所 研究企画部 専任部長( 2019 年6月時点)の鶴 英明様にお話を伺いました。

予算の心配をせずに、オープンイノベーションを実践できるシステム作り


多くの企業ではオープンイノベーションに取り組んでいるのは一部の部署であり、御社のようなグループ全体で推進しているのは非常に珍しい例だと思います。

ヤンマー株式会社 中央研究所 研究企画部 専任部長 鶴 英明 様

弊社は産業用ディーゼルエンジン、農機、建機、発電などの製造・販売を中心に多彩な事業展開を行っており、100年以上にわたって質実剛健な社風で信頼を勝ち得てきました。

でも次の100年は、そこだけでは成長できないと考え、 “A SUSTAINABLE FUTURE”をブランドステートメントに、「食料生産」と「エネルギー変換」の分野でさまざまな課題解決にフォーカスを定めました。

それをどう推進していくかという議論の中で、オープンイノベーションが大きなプロジェクトとして浮上したのです。

とはいえ、長い歴史を持つだけにわれわれも製品については大きな自負と責任を感じており、「そう簡単に、外部にリソースを求めるわけにはいかない」「できるだけ自分たちの力で達成したい」と、オープンイノベーションに抵抗やとまどいを感じる空気が少なくありませんでした。

そもそも最初は、オープンイノベーションの意味や意義が、現場ではよく理解されていないという状況があったのです。

そこでヤンマーグループの各事業部からオープンイノベーションの感度や期待の高い若手を集め、2016年に事業部との兼務でハブとなる部門「オープンイノベーションセンター」を発足させました。



ヤンマー鶴様

これまでヤンマー様には、グループ全体でトータル30件ほどのマッチングのお手伝いをさせていただいています。

積極的にご活用いただけている背景には、リンカーズの費用の大部分をオープンイノベーション推進部門が持つという、独自のシステムも大きいと思うのですが…。

リンカーズさんの探索サービスでは3回に分けて費用が発生しますが、最初の2回については発注した事業部ではなく、われわれの部門で負担するという形式を取っています。

まず予算の不安を取り払うことでリンカーズさんを活用する際の入口のハードルを下げて、オープンイノベーションが持つ可能性を感じて欲しいと考えたのです。

各事業部の優秀な若手社員を、イノベーション担当に任命


本日はオープンイノベーションを推進する事業部メンバーの方々にもお集まりいただいています。この、各事業部にオープンイノベーションを推進する代表者がいるということも、非常にユニークな方法ですね。

グループ内には、アグリ事業、マリン事業、エネルギーシステム事業、建機事業、小形・特機エンジン事業、コンポーネント事業、それぞれの事業部があり、業種もお客様も市場も全く異なります。そのためオープンイノベーションを全グループ一律に進める、というわけにはいきません。

異なる背景を持つ事業部に横串を刺し、オープンイノベーションの考え方をグループ内全体に浸透させる必要があります。そこで各事業部の中でリーダーシップを取っていくことができる人を選び、各事業部からのヒアリング結果を持ち寄る定例会を月に一度開いて情報交換をしています。

そうやって、自分たちが抱えている問題をテーマ化したり、言語化したりすることで今まで見えていなかったことも、他事業部のメンバーと話し込んでみれば、「こんな問題もある」「あれもある」という気づきがあります。それを持ち帰ることで、各事業部の現場から変化を起こして欲しいと願っています。

ただでさえもの作りの現場は忙しいので、すぐに結果が出るわけではないオープンイノベーションに目を向けさせるのは難しい面もあります。どうやれば個々にリーチアウトでき、意識改革ができるのか、さまざまな方法を模索しています。