【2026年】年初インタビュー「製造業を取り巻く変化について」｜シュナイダーエレクトリックホールディングス株式会社

2025 年も世界の情勢不安、物価高、賃金上昇の動きなど、外的環境の変化が著しい 1 年でした。同年、リンカーズのセミナーにご登壇いただいたイノベーション推進者、経営者、実務家、アカデミアの皆さまが、この変化をどのように捉えているのか。イノベーション活動に変化をもたらしたもの（こと）、注目技術、そして 2026 年の企業の役割・課題などについて、今年も 2026 年の年始インタビューとしてお話を伺いました。

本記事では、シュナイダーエレクトリックホールディングス株式会社 インダストリアルオートメーション事業部 商品企画部 マーケティング本部長の川田 学 氏にお話を伺いました。

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※肩書は 2025 年 12 月 5 日時点のものです。

ーー今、日本の製造業が果たしてゆくべき役割、その役割を果たすにあたっての課題について、どのように考えていますか。

川田氏：製造業は、社会インフラや生活を支える基盤として、持続可能な成長とイノベーションを牽引する業界であるべきだと考えています。そのために、デジタル技術を活用した生産性向上はもちろん、エネルギー消費の効率化や、サプライチェーンの強靭化、人材不足への対応など、非常に複雑な課題に同時に向き合わなければなりません。社会生活基盤を支える不可欠な産業として、急速な技術革新にいち早く適応し、省人化や新しいビジネスモデルの在り方を提唱できるような業界として成長を続けていくことを願っています。

ーー上記の役割や課題について、重要性や緊急性などは変化してきているでしょうか。

川田氏：近年、こうした課題の重要性と緊急性は確実に高まっています。環境負荷低減への対応やデジタル化は、かつては中長期的なテーマでしたが、今では競争力を維持するための必須条件です。また、地政学リスクやサプライチェーンの分断により、製造業は従来以上に柔軟で迅速な対応力を求められています。特に、経営の意思決定において、世界を見る広い視野と現場や技術への緻密な理解が求められること、そして日本の製造業が変化を迫られるチャレンジの時代を迎えていると感じています。

ーー今後、製造業を取り巻く環境の変化に対して、もっとも危機感を持っていることを教えてください。

川田氏：「ビジネスモデルの陳腐化」です。急速な技術革新や顧客ニーズの変化により、従来のビジネスモデルが陳腐化するリスクがあると感じています。製品販売だけでなく、サービスやデータ活用を組み合わせた新しい価値提供が求められています。シュナイダーエレクトリックは、これまでIoTやクラウドを活用したソリューション型ビジネスへの転換を進め、顧客の生産性向上と持続可能性を支援してきましたが、顕著な例として、日本市場向けに2024年に始動した、製造業向けDXサービスがあります。これまでハードウェアの提供を中心として支援してきた製造業界のお客様向けに、工場の効率化・DX・GXを支援するサービスで、開始以来、既に日本市場でも非常に多くの問合せをいただいています。

ーー 2025 年、貴社のイノベーション活動に変化をもたらすと考えられる外的環境変化や、技術革新はありましたか。また、外的環境変化に伴い、内的環境変化は起こりましたか。

川田氏：2025年は、生成AIやデジタルツインなどの技術革新が製造業に具体的な影響を与え始めた年でした。また、外的環境としては脱炭素化やサプライチェーンの再構築が加速し、内的環境ではデジタル技術を活用した設計・運用プロセスの高度化が進んだと言えます。当社でも、こうした変化に対応するため、エンジニアリングソフトウェアのバージョンアップや、より具体的なオファー提供に注力しています。

ーー 2026年以降、どのようなことがイノベーション活動への大きな変化につながると注視していますか。また、イノベーションをどのように捉えて、どのような変化を起こそうとしていますか。

川田氏：2026年以降は、AIによる自律制御やエネルギーマネジメントの高度化は、これから製造業の競争力を左右する強力な要素になってくると考えています。当社では、イノベーションを「顧客価値を最大化するための変革」と捉え、製品単体ではなく、データとサービスを組み合わせたソリューション型モデルへの進化を加速します。

ーー注目している技術、技術カテゴリについて教えてください。

川田氏：やはり生成AIに注目しています。現在、OT（生産現場）でも、IT化が進んでいますが、多くはハードウェアに依存したソフトウェアが主体となっており、変革の足かせとなっています。ITの世界がオープン化とデータの統合で大きく変革したように、今後、OTでもソフトウェア主体の自動化技術（SDA：ソフトウェア・デファインド・オートメーション）が主流になることで、従来では考えられなかったようなイノベーションが誕生することを期待しています。

ーーリンカーズのようなオープンイノベーション支援のビジネスマッチング仲介会社に期待する役割などに変化はありますか。

川田氏：マッチング仲介には、単なるマッチングではなく、異業種・異分野のネットワークを活用した新しい発想の触媒としての役割を期待しています。特に、スタートアップや学術機関、海外まで含む先進企業との接点を広げることで、通常の業界内では得られない知見や技術を結びつけることは、今後ますます重要になります。また、技術評価や事業化の初期段階における中立的な視点でのリスク分析や市場動向の情報提供も価値があると考えます。

リンカーズの実施する Web セミナーにご登壇いただいた皆さまに年始の特集インタビューとしてお話を頂戴しております。他の皆さまへのインタビューはぜひこちらをご覧ください。

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