- 配信日:2025.12.19
- 更新日:2025.12.19
オープンイノベーション Open with Linkers
新規事業の立ち上げリスクを最小化!「仮説検証型経営」で成功確率を高める実務手法
この記事は、リンカーズ株式会社が主催したWebセミナー『新規事業と最新技術の社会実装の進め方』のお話を編集したものです。
インテグラート株式会社 代表取締役社長 小川 康(おがわ やすし)様が、新規事業の成長支援における実務とマネジメント手法を詳細に解説。新規事業支援担当者が直面する「板挟み問題」の解決策として、仮説検証型経営について紹介しました。
目次
●新規事業の立ち上げを支援するインテグラート株式会社
●新規事業の成功確率を高める「仮説検証型経営」の考え方
●仮説検証型経営の実践における3つのポイント
○リアルオプションという考え方
●新規事業失敗のリスクを下げる「仮説と知識のバランス」
●仮説ストーリー分析
○基礎的な分析の重要性
○新規事業支援者の質問力の重要性
・仮説一覧の作成
・感度分析
・シナリオ分析
・モニタリング
・案件の一元管理
新規事業の立ち上げを支援するインテグラート株式会社
弊社インテグラート株式会社は、仮説検証型経営によって事業価値の最大化を支援する企業です。より高い成長を追求する、リスクの高い事業に対して仮説検証の手法を提供することによって、 R&D ・新事業・設備・ M&A 等の中長期事業の価値最大化を支援しています。
支援する場面として多いのは、企業が意思決定を行う際です。例えば「この投資をすべきかどうか」と考えるとき、感覚だけで決めるのではなく、仮説に基づいたリスクとリターンを見える化して意思決定を支援する。リスクを取れるように、しかし、リスクを取り過ぎないようにする、企業からのニーズが高い支援です。
意思決定を支えるためには、仮説の解像度を高めていく必要があります。5年、 10 年と成長していく事業は、仮説がぼんやりしていることが少なくありません。仮説の解像度を高めると、どのようなリスクを取るのが適切か、あるいは取らなくて良いリスクはないかなどが明確になり、事業の成功率をより高めることが可能です。そのためにシナリオ分析などのフィージビリティスタディ(事前検討)、ビジネスデューデリジェンス、事業性評価(事業計画妥当性評価)などを支援するのが弊社の役割です。
そして弊社の最大の特徴として、リスクマネジメントを高度化するモニタリングの支援も行っています。
このように、弊社は「経営理論 × IT 」というコンセプトを掲げ、各企業における仕組み作り(仮説検証型経営導入支援、人材育成など)と個別案件支援(事業計画妥当性評価・プラン B 策定支援など)を提供し、企業の組織能力を高めることによって、仮説検証型経営を支援しています。
新規事業の成功確率を高める「仮説検証型経営」の考え方
弊社では、 DDP (ディスカバリー・ドリブン・プランニング)という経営理論をベースに、専用ソフトウェアを作り、研修やコンサルティングを提供しております。この考え方は、「仮説が実現すれば、事業は成功する」と導く経営管理手法です。
2人の経営学者がアメリカ企業の失敗事例を研究し、「事業は仮説・前提条件によって成り立っており、その仮説・前提条件が外れると失敗する」とシンプルにまとめました。
この研究成果に基づいて、仮説が実現するようにマネジメントしていくというのが、 DDP という考え方です。
仮説検証型経営の実践における3つのポイント
仮説検証型経営の実践を企業に当てはめてみると、3つのポイントがあります。
1つ目が、「未来と現在をつなぐ事業計画」。この柱になるものが「仮説」です。例えば、ある事業の 2030 年の目標数字だけがあっても実現できません。実現するための仮説を立てて、その仮説を形にするためにマネジメントをしていく必要があります。
2つ目が、「経営陣と事業をつなぐ意思決定」。例えば、経営陣が新規事業部門の人たちの提案を理解しようとしても、何を言っているのかわからない。新規事業部門の人たちも、経営陣が理解できるように説明したいが上手くできない。こういうケースがよくあります。この解決方法として「仮説を共有して意思決定しよう」というのがポイントです。
2つ目のポイントを実践するために必要なのが最後のポイント、「各機能をつなぐ総合力の向上を支える共通言語になり、仮説を共有することによって新規事業の成長を促進する」ことが求められます。 R&D 、調達、製造、営業、管理、そういった部門が仮説を共有して、3年、5年、 10 年後の目標を一緒に達成していくように力を合わせることが、仮説検証型経営を実践していく理想像の1つです。
リアルオプションという考え方
もう1つ大事な考え方として、「仮説検証型経営では、社内外の変化に対応してより良い選択をしよう(リアルオプション)」というものがあります。仮説検証型経営は、不確実性の高い事業環境で企業が中長期に目指すゴールの達成度を高める経営管理手法であり、新規事業支援の柱だと私たちは考えています。
なぜかというと、画像左側にある「現在の姿」という段階では、仮説が曖昧であることがよくあります。新しい事業に取り組む場合、それを形にできるようなベストな仮説が最初から存在しているとは限らないのです。そこで仮説を作り、定期的にモニタリングをしてより最適なものに育てていく。そして次の一手を打っていくということが、仮説検証型経営の柱である「リアルオプション」という考え方です。
【 PR 】
「Linkers Marketing」は、貴社の技術仮説をターゲット企業へダイレクトに届け、具体的なフィードバックを収集します。仮説が正しいのか、実地での反応を確認することで、事業の立ち上げリスクを最小化するお手伝いをします。
新規事業失敗のリスクを下げる「仮説と知識のバランス」
仮説検証型経営には、「仮説の割合を下げて知識の割合を高めることが、事業成功につながる」という考え方があります。つまり、今回のセミナーのテーマである AI は、仮説検証型経営効果を論理的に高めるキラーテクノロジーだと私は捉えています。
ここで、仮説と知識の割合( Assumption to Knowledge Ratio )という考え方と、それに注目したマネジメントについて説明します。
仮説と知識の割合において、仮説の比率が高すぎると失敗しやすいとされています。そこで、まずは計画立案時点で、仮説に社内外の知識をぶつけていくということが重要です。過去にどういう案件があって、どういうプライシングをして、どういう売り上げ予測をしたかという知識をぶつけていく。ここが、個人よりもはるかに多くの知識を持つ生成AIの活用シーンです。そして、仮説検証型経営で重要なポイントは、事業が始まってからモニタリングに AI を使うということが該当します。AIの活用によって、仮説の外れに早く気づき、早く次の一手を打てるようになります。
実際にどういうことをすれば良いのか。弊社では「経営理論 x IT 」に基づく仮説検証型経営実践の標準プロセスとして 10 のステップにまとめました。各ステップを進めていくことで、成果が期待できるという仕組みになっています。
今回は仮説ストーリー分析と、その後の定量分析について紹介していきます。