
- 配信日:2025.08.29
- 更新日:2025.08.29
オープンイノベーション Open with Linkers
生成AI産業活用最前線:3万件論文・特許徹底分析
4 . インダストリー(製造・ソフトウェア開発)分野での生成AI活用事例とトレンド
続いては、インダストリー(製造・ソフトウェア開発)分野の分析結果です。

Web 調査をしたところ、まずはハードウェア関係のものづくりについてですが、スマートファクトリーを実現するために AI を活用するという開発事例が出てきました。特にポイントといえるのが、ロボットや IoT センサーなどから得られる様々な種類のデータ(マルチモーダル的なデータ)を生成AIがしっかりと統合して自動化を実現したり、作業効率を改善したりできるようになってきていることが挙げられます。
画像左側は デロイトトーマツグループの事例です。 同社は東京でファクトリー(工場)を運営しています。この工場に IoT センサーなどを導入して、生産実績や稼働率、不良発生といったデータを統合して最適化していくということに取り組んでいます。
画像真ん中は Autodeskの事例です。どちらかというと設計に関連する事例で、 CAD や CAM 、 PCB 設計など様々なデータを統合して最適化していくシステムを開発しています。
画像右側は、株式会社日立製作所、株式会社日立ハイテクの事例です。 製造プロセスの最適設計や異常要因の把握などを統合的に判断することに取り組んでいます 。
こうした工場全体のデータをなるべく複合的・統合的に分析していくという取り組みは、生成AIがもたらす新しい価値になると考えられます。

こちらの画像は設計関係です。設計のドキュメントを集めて整理して扱いやすくしたり、設計自体をある程度 AI で自動化したりする。そういったシステムも様々な企業が開発しています。
画像左側はテクトムの事例です。トイレのレイアウトをディープラーニングで学習して、ユーザーの希望に合わせて出力するというシステムです。
真ん中は、株式会社Jiteraの事例です。ソフトウェア開発においてシステム構造(アーキテクチャ)を作ることができるというものになっています。
右側はHEROZ株式会社の事例です。実際の建築物の構造設計を自動化していくという技術です。

また、日頃の業務を自動化・効率化するプラットフォームも生まれています。
画像左側は、オートメーション・エニウェアの事例です。メール作成やドキュメントの要約、そして AI を使って非構造データを抽出して参照できるようなシステムが開発されています。
真ん中は、株式会社NTTデータによる AI エージェントの事例です。 AI のエージェントが営業や法務といった異なる業務タスクを自動的に整理したり、できるところを実行したりといったシステムも開発されています。
右側は、日鉄ソリューションズ株式会社の事例です。 ChatGPT などを業務に利用する際に使えるプロンプトの一覧のようなものを作成し、それらを簡単に呼び出せるようなシステムを提供しています。

こちらの画像は、論文・特許を分析した結果です。カテゴリーは多岐にわたっており、製造ラインを自動化・インテリジェント化するものもあれば、工場のリアルタイム監視に使うような技術もありますし、サプライチェーンを含めて最適化する倉庫向けの技術などもあります。

こちらは論文・特許の伸び率です。見ていくと「 09 : AI 活用による自然言語 UI ・意思決定支援自動化技術」と「 10 :知識グラフ x LLM による高度質問応答・情報検索技術」が伸びていることがわかります。 10 について深掘りしていきましょう。

こちらは知識グラフと大規模言語モデル( LLM )を使うことで、直接的には関連しにくいような単語やデータをすぐに紐付けることができるという技術です。実際の使われ方としては、例えば工場のセンサーの異常値から、不良の原因を紐づけていく。いくつかの中間要因を挟んで不良の原因にたどり着く必要があるときなどに知識グラフを使うというケースが考えられます。
現状、論文より特許の方が数多く出されているため、実用化に向けて研究が活発に進められている状況だと思われます。
「 10 :知識グラフ x LLM による高度質問応答・情報検索技術」に含まれる技術・研究について具体的に見ていきます。

まず、 LLM と知識グラフを利用して推論や検索などを高度化するという取り組みが進められています。知識グラフを使うと、どういう要因があって原因と結果が紐づいているかが構造化されるため、「なぜこの原因からこの結果が出たか」という説明をしっかり行うことが可能です。それによりハルシネーションが抑えられる効果があると言われているため、その効果を出すことを目的に研究しているケースも多いと考えられます。

こちらは LLM を使って知識グラフを作成する研究です。例えば、「この素材は、この特性の改善によく使われています」「この素材をこう加工をすると、こういう結果が得られます」といった素材と加工方法との関係性などを知識グラフに入れる場合、昔は人が1つずつ入れていく必要がありました。しかし、 LLM を使えば効率的に作成できるのではないかということで、研究が進められています。この研究が上手くいけば、世の中の知識が文書だけではなく、単語と単語の関係性や、操作と結果の関係性など、そういったものも含めたナレッジのデータベースができるのではないかと期待されています。
5 . 環境分野での生成AI活用事例とトレンド
続いて、環境分野です。環境分野は基礎研究が多く、実用化まではまだ遠いように見受けられました。

Web 調査で出てきたのは、まず CO2 の出量を可視化したり、削減するための行動を促したりする研究です。ただ、 CO2 の可視化には生成AIというより統計的な AI を使うことが多いため、生成AIならではの事例かというと、そうではないと思われます。

こちらも生成AIというよりは、ディープラーニングや画像認識などがメインの事例です。水質の監視やプラスチックの監視、インフラの監視などを AI を使って効率化していこうという研究も多く進められています。監視の結果を基に行動指針を作り出すなどのフェーズで生成AIが使われることはあるかもしれませんが、技術のコアの部分で生成AIが使われているという雰囲気ではありません。


こちらの画像は論文・特許の調査の結果です。ここでは「 11 :大規模言語モデルによる環境・社会課題データ解析」のカテゴリーについて深掘りしていきます。

生成AIならではの要素が比較的強いカテゴリーで、環境・社会課題を数値だけでなく文章などを含むデータから現状を可視化するような研究分野です。例えば SNS の文章から、今どういう災害が起きているのか、どういう環境破壊が起きているかを解析するといった研究もこのカテゴリーに含まれます。

こちらは、大規模言語モデルを使って ESG やサステナビリティに関する情報を自動で抽出したり分析したりする研究です。企業の報告書やニュース、 SNS など様々なテキストデータから関連する情報を抜き出していくという研究開発が進められています。

こちらはさらに複雑になるのですが、テキストだけでなく画像や音声、センサーデータなどを総合的に見ていくにはどういうデータ解析が必要なのか。そこに取り組んでいる研究も非常に多く出てきています。

こちらも、様々なデータを統合的に見ていくための一環として、 AI や IoT センサーを融合してリアルタイムで環境監視を行うという取り組みです。
6. オフィス業務効率化分野での生成AI活用事例とトレンド
続いては、オフィス業務効率化の分野について見ていきます。

こちらの画像は文書や資料の自動生成、チェックに関するシステムです。 Microsoft の Copilot もそうですが、多数のツールが出てきている分野だと感じています。

また、問い合わせ対応を生成AIで自動化したり、社内のナレッジを AI を使って検索したりといったところも、様々な企業が多数のソリューションを出している分野です。

こちらは、教育や研修で生成AIを使っていこうという取り組みです。先ほど学校教育の現場で先生の問題作成や、回答の採点に生成AIを使っていくという話もありましたが、学校だけではなく、企業の新人教育などにも生成AIを使って質・効率を上げていこうという動きが出てきています。


論文・特許分析の結果です、ここでは一番伸び率の大きい6番、「 06 :自然言語処理を活用した対話システム・バーチャルアシスタントの高度化」を取り上げます。


具体的に見ていくと、パーソナライズや文脈を理解するところを強化することで、そのユーザー個人に最適な応答をしてあげるという分野で活発に特許取得が進められています。

さらに、コールセンターの自動化という分野でも、非常に多くの特許が取得されています。
7 . エンターテインメント分野での生成AI活用事例とトレンド
最後にエンターテインメント分野について。

言語だけでなく映像や動画生成も関わってくる分野です。 AI を使ってほぼリアルタイムで動画を作成できるようになると、ユーザーが何かを入力したらそれに合わせた映像を出力することが実現できるのではないかと考えられています。そのようなプラットフォームの開発が進められているようです。

こちらの画像は、株式会社stuと、rinna株式会社の事例です。映像や動画を作成する作業を効率化するツールやシステムを提供しています 。三次元の映像を簡単に作成するための AI 活用が非常に活発に進められています。

こちらの画像は、翻訳や歌詞生成など言語表現を高度化する事例です。この取り組みに関して個人的に興味深く感じたのは、画像左側の株式会社ブレインパッドが実施している「漫才の内容を、面白さを担保したまま英語に訳す」というもの。漫才やコントなどを他の言語に置き換えたとき、面白さも上手く伝えるということにチャレンジしています。
真ん中は株式会社博報堂DYホールディングスの事例です。自己紹介ラップの歌詞を作成するという取り組みを行っています。
右側は、株式会社ユーザーローカルの事例です。プレゼン資料を自動で作成するツールを公開しています。このように、生成AIで様々なことができるようになってきています。


論文・特許分析の結果です。「 05 :生成 AI によるマルチメディア自動生成・編集・配信最適化」というカテゴリーが非常に伸びていることがわかりました。



具体的に見ていくと、自然な対話や体験の高度化、 3D 空間やアバターを自動生成するといった論文の発表、特許取得が進められているようです。
以上がセミナーでお話しした内容です。生成AIの活用についてより詳細な分析結果を知りたい方は、「 Linkers Trend Map – 技術総覧 – 」をぜひご活用ください。R&D や新規事業企画の基礎資料として、効率的に世界の研究動向を把握することが可能です。「 Linkers Trend Map 」と「 Linkers Trend Map – 技術総覧 – 」のサービス資料は以下から無料ダウンロードいただけます。
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講演者紹介

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部
【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。
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