
- 配信日:2025.02.26
- 更新日:2025.03.05
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【CES 2025】最新技術&トレンド徹底解剖!AI、IoT、デジタルヘルスなど
CES 2025 注目技術まとめ|分野別トレンドと最新事例を徹底解説
ここからは注目カテゴリーと技術動向をより明確に整理してご報告いたします。

リンカーズでは、特に以下の条件に該当する領域を重点的に調査しています。
- ・新規技術の開発が加速している分野
- ・他分野への応用可能性が高い領域

具体的な注目領域としては、
- ・デジタルヘルス / ウェルネス
- ・ロボティクス / モビリティ / / IoT
- ・ ソフトウェア / XR / AI
- ・ Emerging Tech
本セミナーでは、これらの分野の中から特に「デジタルヘルス / ウェルネス」「ロボティクス / モビリティ」「ソフトウェア / XR 」「 Emerging Tech 」の各技術分野において、特に注目すべき出展企業を抜粋してご紹介させていただきます。
CES 2025 デジタルヘルス/ライフスタイル分野|注目技術と企業事例
ウェアラブルデバイスを用いた健康状態モニタリング

まずは CES で定番となっている健康モニタリング技術の中から、以下の3つの分野における革新的な技術をご紹介いたします:
- ・睡眠モニタリング
- ・心機能モニタリング
- ・血糖値モニタリング
これらはいずれもウェアラブルデバイスを活用した健康状態モニタリング技術として注目を集めています。
最初に紹介するのは上の画像左側、韓国企業の SleepWave が開発した「 For Me Buds 」というデバイスです。イヤホン型の睡眠モニタリング・改善デバイスで、光学的手法による脈波測定を行い、そのデータに基づいて個別化された音楽を脳にフィードバックします。また、近年注目を集めているパワーナップ(短時間仮眠)のサポート機能も備えています。
実際に会場で試用した際の体験として、装着後しばらくすると利用者の脈波に合わせた音楽が聞こえてきました。本製品が特に注目に値するのは、イヤホン型という親しみやすいデバイス形状を採用している点です。既存の睡眠モニタリング機器は、ヘッドセットやヘッドバンド、複数のパッチ装着が必要なものが多く、また競合製品には ヘッドマウントディスプレイを用いてフィードバックを行うものもありました。それらと比較して、本製品は格段に使いやすい設計となっています。イヤホンは若年層から高齢者まで幅広い世代に馴染みのあるデバイスという利点があります。また、脳波ではなく脈波データを活用してフィードバックを行う手法は、シンプルでありながら効果的です。優れたアルゴリズムにより、効果的な睡眠サポートを実現している点が高く評価できます。
次に画像の真ん中、フランスの企業 Circular が発表したスマートリングについて説明します。 CES 2025 では、予想を上回る数のスマートリングが展示されており、この分野の急速な発展が印象的でした。その中でも特に注目を集めていたのが、 Circular のスマートリングです。
このデバイスは、一般的なスマートリングの機能である脈波測定、体温測定、活動量計測に加えて、心房細動を検出できる点が画期的です。心房細動は不整脈の一種で、通常は自覚症状が乏しく、診断には病院での長時間の検査が必要とされます。しかし、このリングを着用することで、無自覚な心房細動の検出が可能となりました。
なお、同様の機能を持つスマートリングとして、インドの Ultra Human も心房細動検出機能を搭載した製品を発表しています。これらの製品は、スマートリングの特徴である「継続的な装着の容易さ」を活かし、従来は専門機関でしか取得できなかった高度な健康データの収集を可能にしている点が特徴的です。
画像右側、アメリカの PreEvnt が開発したデバイスを紹介します。このデバイスは厚さ約 1.5 センチメートルの非常にコンパクトな設計で、呼気を吹き込むだけで血糖値のモニタリングが可能です。
PreEvnt は SCOSCHE Industries という大手企業からのスピンアウト企業で、呼気中の揮発性有機化合物を検出することで血糖値を推定する技術を開発しました。この技術の仕組みは、糖尿病患者の体内メカニズムに基づいています。糖尿病患者の細胞は血中グルコースを取り込むことができないため、代替エネルギー源として脂肪を燃焼させます。このデバイスは、この過程で生成されるアセトンを呼気から検知し、専用アルゴリズムによって血糖値を推定します。
このデバイスが特に注目される背景として、 2024 年2月に FDA がスマートリングやスマートウォッチによる血糖値測定の信頼性に関する注意喚起を行ったことが挙げられます。この影響で、 Ultra Human などのスマートリングメーカーはマイクロニードル技術を持つ企業とパートナーシップを結ぶなど、戦略の転換を迫られていました。そのような状況下で、非侵襲的な血糖値測定技術を提案した PreEvnt の開発アプローチは、業界の新たな可能性を示すものとして注目されています。
このように、リアルタイムでデータを取得し、即時にユーザーへフィードバックを返すことができるデバイスの開発が進んでおり、今後ますますパーソナライズされた健康管理の実現に近づいていくことが期待されます。
ライフスタイルに応じた健康管理技術

高齢化社会に向けた技術として、 AARP という50歳以上のアメリカ人が加盟できる非営利団体が特に注力しているエイジテックに関する技術を2つ紹介します。
まず画像左側は、アメリカの Thinkie が開発した認知トレーニングデバイスです。このデバイスはヘッドバンド型で、近赤外線を使用して前頭葉の血流を測定します。スマートフォンやタブレットで脳トレを行った際の脳血流の変化を測定し、リアルタイムでフィードバックを提供します。特に、軽度認知障害( MCI )の早期発見と介入に活用できる可能性があります。
画像右側が、カナダの Eli Science による唾液中ホルモン測定デバイスです。このデバイスは、唾液中の女性ホルモンに含まれるプロゲステロンをリアルタイムで測定可能で、 CES 2025に合わせて市場投入され、イノベーションアワードも受賞しました。特に 40 〜 50 代の更年期におけるホルモン変動の自己管理を可能にする画期的な技術です。さらに、コルチゾールも測定できるため、ストレスモニタリングにも活用できます。またサブスクリプション方式を採用し、継続的な測定により自身のホルモンのリズムを把握できる点が特徴です。
自宅でのパーソナライズドヘルスケア技術

最後に、自宅でのパーソナライズされたヘルスケア技術として、2つの事例をご紹介します。
画像左側は、香港の ThingX が開発した「 PieX 」は、ペンダント型のメンタルヘルスケアデバイスです。心拍変動の測定に加え、声のトーンから感情を評価する機能を組み合わせることで、より精密なストレス検知を実現しています。この技術は個人使用だけでなく、医療・介護従事者のメンタルヘルスケアにも活用が期待されます。
画像右側、台湾の SiriuXense はベビーテック分野で革新的な製品を発表しました。オムツ上部に装着する腹巻型のデバイスで、体温や胎動に加え、赤ちゃんの泣き声や腸音を測定します。未発達な消化器系を持つ赤ちゃんの健康管理をサポートし、さらに収集したデータを基に AI が個別化された子守唄を生成する機能も備えています。
これらの技術は、メンタルヘルスケアや乳幼児ケアにおいて、先進技術を活用した効果的な健康管理の可能性を示唆しています。
CES 2025 モビリティ/ロボティクス/IoT 分野|注目技術と市場動向
ここからは複雑な機械系や制御系などのハードウェアの領域や CES 2025で展示されていた技術事例について紹介します。
大手企業の重機、自動車関連の技術事例

まず画像左側、キャタピラーが発表したハイブリッドレトロフィット重機についてです。高さ3.6 m の中大型ホイールローダーを、従来のディーゼルエンジンからハイブリッドシステムへと換装したものです。完全な電動化ではなく、電気モーターとバッテリーに加えて小型のディーゼル発電機を搭載することで、EVのメリットを活かしつつ、稼働時間や充電に関する実用面での課題に対応しています。
画像真ん中、コマツの展示では月面や深海といった極限環境での建設機械の技術開発が紹介されました。 AI を活用することで、作業指示に対する具体的な動作計画や姿勢制御を自律的に判断することが可能となっています。月面での運用を想定し、 地球の6分の1の重力環境下でのデジタルツインによるシミュレーションや、樹脂やアルミ合金を使用した軽量化の研究が進められています。またエネルギー源として、月面で採取が期待される水を利用した燃料電池システムの開発も行われており、リチウムイオンバッテリー以外のエネルギー変換技術の可能性を示しています。
画像左側、ヒュンダイモービスは近年各社で開発が進む、ヘッドアップディスプレイ技術を展示していました。プロジェクターと特殊な光の回折格子を組み込んだ、ガラス上に貼り付けた透明フィルムを組み合わせて使用します。全乗員に共有する情報は通常のプロジェクター方式で表示し、運転手や助手席用の個別情報は視角依存の表示方式を採用することで、0 % から 90 % まで視認性を制御できます。ヘッドアップディスプレイ技術は、車室内の情報提供方法や快適空間のデザインに新たな可能性を示すものとして、多くの自動車メーカーが注目し、ヒュンダイモービス以外の企業もアピールしている分野です。
これらの展示から、大手企業各社が実用性と革新性のバランスを重視しながら、次世代のモビリティ技術開発を進めていることが伺えます。
スタートアップのモビリティ関連技術事例

一方スタートアップの自動車技術関連につきまして、3つの技術を紹介します。
最初に紹介するのは画像左側、中国の WeRide です。同社は自動運転車の開発およびサービス展開を行っており、「 WeRide One 」という名称のプラットフォームを発表しました。これは、限定的な空間条件下での完全自動運転(レベル4)を実現するソリューションです。現在、自動運転技術の実用化は主に中国とアメリカで進んでおり、特にロボットタクシーの分野で進展が見られます。
WeRide の特筆すべき点は、中国やアメリカ以外の市場開拓に成功していることです。具体的には、 UAE のアブダビという都市において実証実験を開始しています。現在は安全確保のため運転席に安全要員を配置していますが、完全自動運転で走行しています。さらに、 2025 年中には Uber のプラットフォーム上で完全なロボットタクシーサービスを開始する予定とのことです。これは、中国・アメリカ以外の市場での配車プラットフォームを活用した自動運転タクシーサービスとしては世界初の試みとなります。
このように、 WeRide は先進的なソフトウェア技術の受け入れ市場を戦略的に開拓している点で、非常に注目すべき企業だと言えます。
真ん中はイスラエルの Lidwave です。同社はLiDAR( ライダー :レーザーを使用した物体検知技術)を手がけています。この技術は自動運転の実用化に大きく貢献したと私は考えています。
自動運転には他にも AI やレーダーなど様々なセンサー技術が使われていますが、今回はLiDAR技術に焦点を当てて説明させていただきます。同社の技術開発は着実に進んでおり、現在ではシステムオンチップ( SoC )の段階まで来ています。
同社のLiDAR技術は、数百メートル以上離れた物体の検知や、 50 マイクロメートル単位の高精細な物体検知を実現しています。会場でのデモンストレーション映像では、従来の ToF ( Time of Flight )方式のLiDARでは検知が困難な、逆光環境下でも 200 メートル先の小型ドローンを検知できることが示されていました。
さらに、 4D LiDARと呼ばれる同社独自の技術により、物体の位置情報に加えて移動速度も計測できるようになりました。光の位相を活用した新機能の追加により、性能が大幅に向上しています。
業界全体の動向として、LiDARやレーダーにおける、産業向けとして最低限要求される技術レベルは多くのメーカーが達成できるようになってきました。そのため各社は、より高次元の機能や性能向上を目指した開発を進めています。本展示会でも、複数の企業が試作段階も含め次世代技術を披露しており、業界の競争が活発化しています。
画像右側は、日本のベンチャー企業であるネクストコアテクノロジーズです。同社は新しいモーター材料の開発に成功しました。従来のモーターでは、電流を流して電磁誘導を起こす際にエネルギーの一部が熱として失われる「鉄損」という現象が課題でした。同社は、従来のモーターコアに使用される電磁鋼板に代わり、新しいアモルファス材料を開発。この新素材により鉄損を抑え、モーターのエネルギー効率を大幅に向上させることに成功しています。
特筆すべきは、同社が世界で初めてこのアモルファス材料の量産化の見通しを立てたことです。モーター技術は、ドローンやモビリティ、その他の電気駆動システム全般において、様々な出力や形式で広く必要とされています。
このように、材料レベルからモーターの性能向上を目指す取り組みは、同社に限らず業界全体で続けられています。こうした地道な基盤技術の開発が継続的に行われることは、モビリティ分野の将来に大きな希望をもたらすと考えています。
高機能センシングと周辺ハードウェア技術

ここからはロボティクスや IoT の技術について紹介していきます。
まず画像左側は、九州大学からスピンアウトしたベンチャー企業の株式会社 Thinker です。同社は、ロボットの指先に近接覚という新しい機能を実装することに成功しました。この技術は、従来の赤外線や画像カメラでは検知が難しい角度での物体認識を可能にします。
またこの技術により、ロボットは物体にどれだけ近づいているかを正確に把握できるため、強い力で接触したり、壊れやすいものや柔らかいものを潰してしまったりするのを防ぐことができます。これは人間にはない、ロボット独自の能力として注目されています。
今回の展示では、この技術をさらに発展させ、ロボットの指先以外の部分にも近接覚センサーを搭載していました。例えば多数のネジが散らばっている状況で、画像認識だけでは個々のネジを識別して取り出すのが困難な場合でも、この技術を使えば触覚的な感覚でネジの位置を特定し、確実につかむことができます。これは人間が目を閉じて手探りでものを掴むような感覚を再現した技術といえます。この繊細な物体把持技術は、次世代のロボットハンドの機能として今後の発展が期待されています。
真ん中は、シリコンフォトニクス技術を用いたジャイロセンサーを開発した ANELLO Photonics という企業です。同社は、シリコン基板上で直接光を制御する技術を確立し、従来の光ファイバーを使用したジャイロセンサーと同等の機能を実現しました。シリコンフォトニクスは省電力性や高速性で注目されており、加工技術や集積技術が向上することで、量子コンピュータや超低消費電力コンピュータなど、様々な分野での応用が期待される技術です。
画像右側は、アメリカの XMEMS Labs が開発した冷却技術です。同社は MEMS (微小電気機械システム)技術を用いて、厚さわずか1ミリの新しい形式の送風装置を開発しました。この装置は従来のファン構造とは異なり、振動によって空気を送る仕組みを採用しています。装置には複数の穴があり、空気の流れる方向を様々に制御できる特徴があります。この技術は、基板内部や発熱部品の近くや放熱板の上などに直接設置することが可能です。従来の小型冷却ファンでは、回転ブレードや軸ずれに伴う振動や騒音、消費電力、サイズなどの課題がありましたが、この振動式の冷却技術によってそれらの問題を解決できる可能性があります。
現時点では小規模な排熱能力に限られていますが、技術の発展により、様々な機器に適用可能な補助的な冷却手段として広く普及する可能性があります。これにより、機器の冷却能力の選択肢が大きく広がることが期待されます。