• 配信日:2025.01.10
  • 更新日:2025.01.10

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日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『日立グループのメンバー参加型価値創造マネジメント』のお話を編集したものです。

日立グループ 価値創造マネジメント 部会 部会長で、株式会社日立製作所 原子力ビジネスユニット 業務管理本部 品質保証本部 本部長の松山 義宗 (まつやま よしむね)様に、日立グループ内での IMS (イノベーションマネジメントシステム)構築の背景や、価値創造マネジメントの取り組み、事例などについてお話しいただきました。

日立グループのソリューション事業と協創事業


日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

弊社(株式会社日立製作所)はソリューション事業として、既存事業と開発事業、それらを組み合わせた事業をやっております。具体的には、ハードウェア、サービス、ソフトウェア、デジタル、データなどの事業を行っており、 IT と OT そしてプロダクトを組み合わせることをベースとして事業展開しています。

「 Lumada (ルマーダ)」は、弊社のビジネスモデルの総称です。弊社でビジネスを担当している部隊が共同して、デジタルの力でお客様の課題解決を提供できるビジネスモデルです。

これまで弊社の事業は、各事業体の事業アウト戦略がメインでした。この事業アウトというのはプロダクトアウトや、サービスアウト、デジタルアウト、ディベロップメントアウトなど、弊社が開発した製品、サービスをそのままお客様に提供することを指します。

現在、弊社はお客様や社会課題を解決すべく事業に取り組み、イノベーションマネジメントがまだまだこれからの事業環境で、事業アウト戦略の既存の事業を押さえつつ、イノベーションがマネジメントできる環境の醸成が必要と考えています。そのためには、お客様の課題を確実に捉えることが先決でしょう。お客様の課題といっても、漠然としたものではなく明確なものを捉えなければ課題解決の提案はできません。明確な課題というと、上の画像の右側のものが挙げられるでしょう。これらの課題解決に合致するよう弊社のソリューション事業をどのようにお客様に届けていったらいいのかということで、今まさに日立グループ全社で取り組みを進めています。

IMS整備のための価値創造マネジメント部会発足の背景


日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

ここで、なぜ私(松山氏)の所属していた品質保証部隊が価値創造マネジメント部会を立ち上げたかについて説明します。

弊社の私が所属していた部隊には事業創出部門という部署があり、この部署はとても苦労して活動していましたが、自組織のソリューション・製品・知識の延長でお客様に提供することが多いため、お客様のニーズにフィットするのが難しいという問題がありました。そのうち、事業として発展することなく先細りしてしまうことが頻繁にあったのです。

このような状況が続き、新しい事業が品質保証の部隊の動くフェーズにまで到達することはほとんどありませんでした。その原因を調査してみたところ、お客様の潜在ニーズを捉えられず、お客様のニーズにフィットしておらず、それを「お客様の潜在ニーズが変化したから」だと考え次の手が打てずにいるということがわかってきました。

これらの調査を踏まえて事業創出部門にフィードバックをしてきたのですが、単一の組織だけでは得られる情報や、情報に基づいてできるフィードバックに限界があり、状況を改善するのは難しかったのです。そこで単一の組織ではなく、日立製作所もしくは日立グループ全体の問題として捉えればフィードバックの幅も広がり、お客様のニーズに対する回答もたくさん見つかるだろうと考えました。

組織をまたぎ、グループ全体で問題意識を持って取り組むにはどうすればいいか、その答えとして思いつき、実行したのが「価値創造マネジメント部会を立ち上げること」です。組織を横断した取り組みを統制する組織が必要だと考え立ち上げました。

価値創造マネジメント部会は2年前に立ち上げ、現在は約 180 名のメンバーがいます。まだ歴史が浅いため手探りで進めている感覚があるのは否めませんが、ようやく進むべき方向が見えてきたように感じています。

価値創造マネジメント部会による現場の課題と解決の例


日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

画像は現場サイドでどういうことが起こっているのかを分析し、まとめた一例です。あくまで一例としてご覧ください。お客様の要望に対して自社のソリューションを提供するというのが一般的な流れになります。

お客様の要望が要求になって要求定義をし、自社で要件定義、そしてシステム設計するというのが通常の流れですが、自社にいる部隊はある単一の組織の部隊であるため自社の製品を理解したエンジニアが自社製品を基にしたカスタマイズを考え、システム設計してしまいがちです。そのため、お客様の要求や要件定義とギャップが生まれ、課題解決にならないというケースが現場でよく発生していました。

そこで組織をまたいで事業創生を作り込めるプロセスが必要だと判断しました、様々な部隊がお客様の課題解決に参画することによって、様々なソリューション事業を使ってお客様のニーズを捉え、解決策を提案するプロセスおよびそれを統制する組織(=価値創造マネジメント部会)が必要だと考えたのです。また、事業創生プロセスに潜むリスクを抽出して緩和するプロセスも必要になります。これらに対応する組織として価値創造マネジメント部会を2年前に立ち上げました。

価値創造マネジメント部会の活動指針


日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

画像は価値創造マネジメント部会の立ち上げ当初から掲げてきた活動方針です。日立グループ全体から様々なバックグラウンドを有するメンバーが集まって、組織を横断するような取り組みを行う。それによってお客様の課題解決もしくはそれに関わるような仕組みの提案をする。また仕組みを提案できるイノベーティブな人財の育成を目標に取り組んできました。

価値創造マネジメント部会の活動の中枢となる考え方は、やはり ISO 56000 シリーズです。より具体的に言うと、

  • 1. お客様のニーズを反映できる組織横断での事業創生の仕組みと仕掛けの提案
  • 2. 組織横断で連携しておこなった製品・サービスの継続的な見える化とその地盤づくり
  • 3. 価値協創事業化のメカニズムと戦略仕掛けの提案
  • 4. お客様と協創事業を実現できるイノベーティブな人財育成

この4つを目標に掲げて部会がスタートしています。

特に、お客様の要望から要件定義をする前段のところを仕組み化していこうということで ISO 56000 を基にした仕組みを構築・実践することが価値創造マネジメント部会の活動です。

元々は「イノベーションマネジメント部会」という名前で立ち上げようと考えていたのですが、社内では一部で「イノベーション=開発」というイメージが強く、言葉としてそぐわないだろうということで「価値創造マネジメント部会」と命名しました。

ただ単に価値創造マネジメント部会を立ち上げるのではなく、キーワードを設けて意識しようということで、3つのキーワードを設定しました。

  • ・変化への柔軟な対応(スピード感)
  • ・インクルージョン(社内の一体感)
  • ・期待感(わくわく感)

価値創造マネジメント部会の体制


日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

画像は価値創造マネジメント部会の体制です。私ともう1人副部会長がいます。その下に推進室があり、活動の計画立案と実施した結果の評価、他の組織との連携、部会活動の推進・維持などをやっています。推進室での会議は、年間で 30 回ほど開いており、この会議の中でアイデアをまとめたり、部会全体の方針を決めたりといったことをしています。

価値創造マネジメント部会では、大きく2つのプロジェクトがあります。1つは仕組み構築のプロジェクト。もう1つは教育ナレッジのプロジェクトです。 ISO 56000 シリーズを基にしたイノベーションマネジメントの仕組み構築には、それに合った人財も必要になるので、教育ナレッジのプロジェクトの中でその検討を進めています。

価値創造マネジメント部会の展望


日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

2024 年度、価値創造マネジメント部会の展望としては、まず仕組み構築のプロジェクトのほうでは、組織に求められるイノベーション像(戦略の立て方)などを検討しています。それからイノベーション促進に向けた障壁深掘りと仕組みの構築の必要性を調査し、社内に共有していくことも目標です。

人財・ナレッジ・プロジェクトのほうでは、人財育成と知見集約における施策の検討ということで、様々なところから多くの情報を仕入れて社内に共有するというような活動を行う予定です。それからイノベーション教育活動ということで、外部講師を招き社外の知見を得ながら、弊社の状況について提言をしてもらうということも実施しています。

それから、実際に社内で各部隊がどんなことを行っているのかヒアリングを行い、他の部隊に共有・フィードバックすることも価値創造マネジメント部会で継続していきたいと考えているところです。

日立グループによる価値創造の取り組み事例


弊社がイノベーションを起こすための武器になる要素についていくつか参考に紹介いたします。
2024 年 10 月 15 日から 18 日まで、幕張メッセで「 CEATEC 2024 」というイベントが開催されました。そこで弊社は 2024 年の中期経営計画であるデジタル、グリーン、コネクティブを変革のドライバーとしてお客様にどういうふうに提言していったらいいのかというのを、ブースを作って紹介をしました。
事例をご覧ください。

継続的な価値創造には仕組み(IMS)の整備が必要


イノベーションを継続して起こすには、その仕組みを整備する必要があります。仕組みを整えることで継続的なイノベーションを起こし、お客様の課題を解決する。言い換えればお客様が常にわくわくできる状態を作り出していくことこそが真のイノベーションだと考えています。これは、弊社はもちろん、他の多くの企業に求められることでしょう。

講演者紹介

日立グループの価値創造マネジメントとは?IMS構築と取り組み事例を徹底解説

松山 義宗 氏
日立グループ 価値創造マネジメント 部会 部会長
株式会社日立製作所 原子力ビジネスユニット 業務管理本部 品質保証本部 本部長
兼務 エネルギー事業統括本部 品質保証部 部長
兼務 パワーグリッドビジネスユニット 品質保証本部 担当部長
兼務 株式会社日立パワーソリューションズ 品質保証本部 担当本部長

【略歴】
1991年 日立製作所 入社: 電力/エネルギー関係の事業に携わる 設計 → 研究開発 → 事業取纏め
1996年 日立製作所労働組合: 組合活動、新行事の起案および実行 職場内のIT化
2000年 日立製作所: 電力監視システム設計、セキュリティ関係 → 海外案件見積、予防保全エンジニアリング
2004年 日本AEパワーシステムズ: 電力用開閉装置品質保証、品質管理
2012年 日立製作所: 調達品品質管理、海外関係会社 品質向上業務
2016年       → プロジェクト品証 → ソリューションビジネス品質保証
2020年       → プロジェクトリスク管理 → 品質保証トータルマネジメント
2022年       → 日立グループ 価値創造マネジメント部会の立上げ  
現在に至る

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