【2025年】年初インタビュー「製造業を取り巻く変化について」｜日東電工株式会社

2024 年も世界の情勢不安、物価高、賃金上昇の動き、日銀のマイナス金利政策解除など、外的環境の変化が著しい 1 年でした。同年、リンカーズのセミナーにご登壇いただいたイノベーション推進者、経営者、実務家の皆さまが、この変化をどのように捉えているのか。イノベーション活動に変化をもたらしたもの（こと）、注目技術、そして 2025 年の企業の役割・課題などについて、今年も 2025 年の年始インタビューとしてお話を伺いました。

本記事では、日東電工株式会社 フェロー 副CTO 全社技術部門研究開発本部長の佐竹 正之 氏にお話を伺いました。
※所属企業・肩書は 2024 年 12 月 20 日時点のものです。

ーー今、製造業が果たしてゆくべき役割、その役割を果たすにあたっての課題について、どのように考えていますか。

佐竹氏：
近年、環境への配慮がますます重要視されてきており、企業や製品の持続可能性に対する期待が高まってきています。その中で、製品の高付加価値化と共に環境負荷低減・環境貢献対応を両立し、かつ適正なコストで製品をご提供することは非常にハードルが高い課題です。
製品の企画・設計段階から各種課題を認識した研究開発を推進し、従来の製造プロセスを根本的に見直し、適正なサプライチェーンを再構築することが必要となってきています。

ーー上記の役割や課題について、重要性や緊急性などは変化しているでしょうか。

佐竹氏：
特に気候変動に向けた取り組みは待ったなしの状況になっています。CO2 排出量の実質ゼロ化、産廃低減、リサイクル率の改善など、企業としての具体的な目標値設定及び達成までのスケジュールをコミットメントとして示し、実際にその実行結果も外部に発信することが必要となってきています。

ーー今後、製造業を取り巻く環境の変化に対して、もっとも危機感を持っていることを教えてください。

佐竹氏：
「ビジネスモデルの変化」です。弊社では三新活動およびニッチトップ戦略をビジネス拡大のベースとなる考え方としてきました。業界のリーディングカンパニーをお客様として、そのニーズや課題にいち早くお答えすることを命題としてきました。これ自体は今すぐ損なわれるものではないと考えています。
ただし、これから社会や環境課題に対して貢献していくためには、広く世の中全般をお客様として捉えた考え方やアクションにしていく必要があり、従来のビジネスモデルを変化させていくべきかと思います。

ーー 2024 年、貴社のイノベーション活動に変化をもたらすと考えられる外的環境変化や、技術革新はありましたか。また、外的環境変化に伴い、内的環境変化は起こりましたか。

佐竹氏：
欧州を始めとして循環型社会への移行に向けて、バッテリー規制や修理する権利（ Right to Repair ）の法制化の動きが広がってきています。弊社では様々な部材を貼り合わせる粘着テープを主要製品の一つとしてきましたが、これらの環境課題に対応するために簡単に剥がすことができる粘着テープの開発を進めてきました。
通常時はしっかり貼付け固定されていますが、修理・回収・リペア・リサイクルが必要となるシーンにおいては、熱・光・水・電気など様々なトリガーにより簡単に剥離することができます。また、部材にダメージを与えず回収することで多くの部材を再利用でき、廃棄物を減らすことができます。こういった技術開発の加速によりイノベーションを推進しています。

ーー 2025 年以降、どのようなことがイノベーション活動の大きな変化につながると注視していますか。また、イノベーションをどのように捉えて、どのような変化を起こそうとしていますか。

佐竹氏：
生成 AI の活用が爆発的に広がっていることは大きな変化で注視しています。自社でも業務における Dx 推進が加速していますし、研究開発活動においても、材料設計、プロセス設計において AI を活用し、研究開発効率を Up させることは必須と考えています。

ーー注目している技術、技術カテゴリについて教えてください。

佐竹氏：
先にも述べましたが、 AI 、Dx は非常に重要な技術領域と認識しています。自社の業務効率改善には必ず必要ですが、製造業においては、従来のモノ売りからコト売りへのビジネス変革を進めて行くうえでは必須の技術領域となってきます。

ーーリンカーズのようなオープンイノベーション支援のビジネスマッチング仲介会社に期待する役割などに変化はありますか。

佐竹氏：
社会の変化やお客様が要望されるスピードがますます速まる中、自社単独での技術開発では、それらにタイムリーにお答えすることが難しくなっています。弊社でも自前主義を脱却し、オープンイノベーションによる研究開発速度を上げて行くための取組みを様々に行っていますが、まだまだ国内のお客様、サプライヤ―様、アカデミア等との連携が中心になっています。
今後、ワールドワイドに展開して行くうえにおいては、そのきっかけ作りや運用に関して仲介会社のサポートを頂けることは非常に心強いと思われます。

リンカーズの実施する Web セミナーにご登壇いただいた皆さまに年始の特集インタビューとしてお話を頂戴しております。他の皆さまへのインタビューはぜひこちらをご覧ください。

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