• 配信日:2024.12.17
  • 更新日:2024.12.17

オープンイノベーション Open with Linkers

2025年の最新技術トレンド21選:生成AI、衛星、量子技術など

最新技術トレンド3:個人のプライバシーと安全を守る技術


デジタルコミュニケーションやAI技術の発展に伴い、個人情報やプライバシーの保護の重要性は増す一方です。こうした課題に対して、クラウドへのデータ送信を行わずに生体認証を行うシステムや、身に危険が迫ったときにすぐに映像を撮影できる小型デバイスなど、物理的にセキュリティや安心を改善するアイデアが提案されています。

こうした技術の進化により、「便利」と「安心」を両立できる世の中の実現が期待されています。

クラウドへの接続不要で信頼性の高い認証を行う技術

セキュリティエリアへの入室や決済処理など、信頼性の高い認証が必要なケースで生体認証を用いるケースが増えてきましたが、指紋や顔などの生体認証データは重要な個人情報であり、生体認証サービスごとに生体情報をクラウド環境に登録することは個人情報漏洩のリスクがあります。
そこで、クラウドへの個人情報の登録を行わずに、個々人が持つスマートフォンを用いて認証を行うソリューションが提案されています。

生体情報をクラウドに保存せずに生体認証を実現する「GhostPass」 by GHOSTPASS INC.の事例

韓国のGHOSTPASS社は、AI顔認証と音声認証技術を活用し、ユーザーの生体情報をクラウドではなく、個々のスマートデバイスに保存することで、プライバシー問題を解決する生体認証ソリューションを開発しています。このソリューションは、認証機器で検出された生体データをユーザーのスマートフォンに送信して認証するという方法です。これにより、ユーザーは生体情報を個人のスマートフォンに所有したまま認証を行うことができます。また、従来のサーバー方式に比べて約70-90%のコスト削減と強固なセキュリティを実現します。

ゲートセキュリティをオフライン化する「Minibox」by Akidaiaの事例

フランスのベンチャー企業「Akidaia」は、ゲートセキュリティをオフライン認証化するための製品「Minibox」を開発しています。同製品は、ゲートのオープニングシステムに取り付けるハードウェア「Minibox」と、スマートフォンの電話番号を用いBluetoothを介して同ハードウェアを制御するためのスマートフォンアプリ「AKIDAIA」で構成されます。同製品を使用することでゲートのオープニングシステムの入室認証をオフライン認証化できます。

個人の安心を守るハードウェア

デジタル世界でのセキュリティだけでなく、現実世界での安全・安心も重要な要素です。こうした安全・安心を実現するために、暴力や迷惑行為から身を守るボディカメラや、窃盗を防ぐスマート郵便受けなどのハードウェア技術が開発されています。

治安が良く住みやすい日本ですが、経済力が低下していますこれからの時代、治安が悪化する可能性も危惧されており、自分の身は自分で守る時代がやってくるかもしれません。

AI搭載の低価格小型ボディカメラ「PhoneCam」 by SLIMDESIGNの事例

SLIMDESIGNは、暴力や迷惑行為から身を守るための小型で手頃な価格のAIボディカメラ「PhoneCam」を開発しました。PhoneCamは、危険がある際に緊急連絡先にワンボタンでビデオ通話を行うことができます。これにより法廷で使用可能な証拠を残し、状況の緩和や暴力の抑止に繋がるといいます。PhoneCamがアクティブになると、位置情報、ビデオフィード、マイクを緊急連絡先と共有できます。

セキュリティレベル調整機能を搭載したスマート郵便受け「Custo」 by Custoの事例

Custoは、荷物のバーコードを使用してスマート郵便受けを開けることができる「Custo」を開発しています。Custoは、荷物のバーコードを利用して郵便受けを開けることができるため、特別な鍵やコードが不要です。また、統合された5G接続により、迅速かつスマートに配達業者の追跡情報を確認できます。スマートウォッチやスマートフォンを使って簡単に開けることができ、セキュリティレベルは調整可能で、高価な荷物や重要な荷物の配達時に簡単にセキュリティレベルを上げることができます。

物理的なトレーサビリティ技術の進展

ブロックチェーンなどを用いたデジタルなトレーサビリティ技術だけでなく、物理的な製品の特長や、人間に分からないように製品に埋め込んだマークを用いて製品の特定を行う様々な技術が開発されています。
こうした技術を用いることで、個々の製品について、製造・物流のトレーサビリティや、二次流通の履歴を製品ごとに管理できるようになるかもしれません。

物品の固有表面特徴を用いた写真撮影による非接触認識・追跡を実現するFeaturePrint技術 by Alitheonの事例

Alitheonは、写真撮影のみでアイテムを唯一無二に識別・認証・追跡するFeaturePrint技術を開発しました。FeaturePrint技術は、AIを活用した画像処理によって、物品の固有の微細な表面特徴をデジタル指紋として抽出・登録します。これにより、特殊なタグやバーコード、QRコード、RFIDなどのプロキシを必要とせず、標準的なカメラで撮影した画像から物品を特定できます。物品の生産時に生じるランダムな微細特徴を利用しており、同一製造ラインで生産された見た目が同一の製品でも区別が可能です。FeaturePrintは部分的な視野や物品の劣化、回転、スケール変化、視点のずれ、パースペクティブの歪みにも頑健であり、現実世界での運用に適しています。これにより、物品の識別・認証・追跡を高精度に行い、偽造品の排除やサプライチェーンの透明性向上に貢献します。

不可視情報埋め込みによる資産識別・認証を可能にするデジタルウォーターマーキング技術 by Digimarcの事例

Digimarc社は、物理的およびデジタル製品に対し、人間には認識できないが機械には検出可能なデジタルウォーターマークを埋め込む技術を開発しました。このウォーターマークは暗号化されて商品に埋め込まれるため、損傷や汚れに対して耐性が高い。また、データアクセスと検出の権限をリアルタイムで管理でき、異なる目的やユーザーに対して異なる情報を提供することも可能です。

物理複製困難関数(PUF)をベースとしたセキュリティIP技術「SRAM PUF」 by Intrinsic IDの事例

Intrinsic IDは、半導体デバイスの認証に重要な物理複製困難関数(PUF)技術に基づくセキュリティソリューションを提供しています。同社のSRAM PUF技術は、高い信頼性と高いエントロピー源を提供し、2億5千万個以上のチップに実装されています。SRAM PUF技術は、SRAMメモリのランダムな起動動作を利用して、チップに固有の0と1のデジタルパターン(シリコン指紋)を生成します。このシリコン指紋は、そのチップに固有の暗号鍵に変換され、ルートキーとして使用される。ルートキーは、システムが必要とするときにいつでもPUFから確実に再構成され、キーをいかなる形式のメモリにも保存する必要はありません。SRAM PUF技術は、長期間にわたる高い信頼性を提供し、フラッシュメモリなど不揮発メモリにキーを保存したストレージの信頼性を上回ることが確認されています。また、SRAMは標準的な半導体部品であり、どの技術ノードでも、どのプロセスでも利用できるため、スケーラビリティが確保されています。

低コスト・低環境負荷の新しい識別技術であるラジオ周波数バーコードby Idyllic Technologyの事例

Idyllic Technologyは、バーコードのシンプルさと低環境負荷性をRFIDの信頼性と組み合わせた新しい低コスト識別技術「ラジオ周波数バーコード」を開発しました。同技術は、無線電波によりコード上のバーが振動して独自の周波数特性を発することで識別を行います。誘電体支持体上に形成された複数の非連続平行導電帯からなり、各誘電体帯部分がタグの共振周波数を決定し、タグの共振周波数のセットが識別コードを定義します。システムには、さまざまなRFバーコードデザイン、適応型リーダー、および最大40ビットのユニークデータエンコーディング容量を持つRFバーコードライブラリが含まれています。同技術は高速読取りが可能でさまざまな業界での遅延や停滞を減らす効率的なものです。また、偽造が難しく、製品が正真正銘で安全であることを保証します。さらに、環境に配慮した設計で、リサイクルが容易なコンポーネントが使用されています。

最新技術トレンド4:量子技術の実用化に向けた開発の進展


特定の計算において、従来のコンピュータとはけた違いの演算能力を持つ量子コンピュータや、確実に安全な通信を実現する量子通信技術、微小かつ高精度なセンシングを可能にする量子センサなど、量子技術の実用化は、これまでとは非連続的な技術進化を実現する可能性があります。

近年は量子コンピュータをクラウド上で利用できるシステムが開発されたり量子通信の実証試験が進められたりなど、量子技術の本格的な社会実装が近づいています。

量子コンピュータ、量子通信技術の進展

量子コンピューティングの進展により、従来のスーパーコンピュータを凌駕する計算速度が実現しつつあります。また、量子インターネットの開発も進み、セキュリティや通信速度の面での革新が期待されています。

全ゲートをフルプログラミング可能な世界初のフォトニック量子プロセッサ「Borealis」 by Xanaduの事例

Xanadu社は、自前のクラウド(Xanadu Cloud)上で誰でもアクセス可能な、量子フォトニクス技術を基に開発された216個のSqueezed状態にある量子ビットを搭載したすべてのゲートをフルプログラミング可能な、世界初のフォトニック量子コンピュータを開発しました。同プロセッサは、光子数分解検出器を用いることで、時間領域多重化、高速電気光学スイッチング、高速光子数分解検出技術、非古典的光生成などの技術的課題を解決しました。世界で最も強力なスーパーコンピュータでも9,000 年以上かかるサンプル生成を36μ秒で完了することができ、量子計算の優位性を実現するコンピュータとして世界で初めてクラウド上に展開されています。

ハードウェア特性を生かした量子暗号通信や量子実験を可能とする汎用ソフトウェア「QSIMpro」 by Qsimplusの事例

Qsimplus Co.,Ltdは、量子暗号化通信技術を活用して安全な通信を実現するとともに誰でも簡単に量子実験できるソフトウェアシミュレーター「QSIMpro」を開発しました。同シミュレーターは、一方向BB84、双方向BB84等の量子暗号通信プロトコルに基づく量子鍵配送(Quantum Key Distribution, QKD)により、通信を行う汎用ソフトウェアです。同シミュレーターは、入射光を反射光と透過光を50:50で分割するビームスプリッタ、入射光をP偏光、S偏光に分割する偏光ビームスプリッタ、特定の偏光のみ通過させる偏光板、入射偏光を90°回転させるファラデーミラー、光の偏光状態を変える波長版のほか、光ファイバや偏光レギュレータ、光サーキュレータ、位相変調器によるデバイスの特性を反映して量子通信を行います。同シミュレーターでは、ユーザは操作するブロックをドラッグアンドドロップすることにより量子通信システムの実装や検証を行うことができるため、専門知識がなくとも短時間かつ低コストで量子実験を行えます。また、同シミュレーターは、離散イベントシミュレーションにも対応しています。

100 万量子ビットでフォールトトレラントな、半導体ウエハ工程を用いた光量子コンピューターチップby PsiQuantumの事例

PsiQuantumは、量子コンピュータの実用化を目指し、100万量子ビットのフォトニック量子コンピュータのためのチップ製造に300mmウエハを用いて取り組んでいます。同社は実用的な量子コンピュータは100万量子ビットのフォールト トレラントなフォトニック量子コンピュータであると考え、またそれを実現する唯一の方法は半導体工場で製造することであるとの考えのもと、300ミリウエハープロセス工場において数千の単一光子源と、対応する数の単一光子検出器、および干渉計、スプリッター、位相シフターを搭載するシリコンチップの製造に取り組んでいます。

量子センサを用いた高精度測定の実現

量子現象を利用してセンシングを行う量子センサ技術は、微細なデバイスで非常に高い感度を実現することが可能です。

機械学習によって強化されたナノダイヤモンド量子センサを使用した正確な磁場イメージングby 東京大学の事例

東京大学の研究グループは、膜状に分布させたナノダイヤモンド窒素空孔中心における磁場依存性の測定を行い、機械学習を利用して、従来法より高分解能かつ正確な磁場イメージングに成功しました。同研究は、カバーガラス上にナノダイヤモンド膜を生成し、ヘルムホルツコイルを用いて、磁場依存性を調査しました。蛍光顕微鏡を用いてナノダイヤモンド膜の発光強度測定を行ない、マイクロ波周波数に対するスペクトルを取得し、量子計測は、機械学習により、このスペクトルから磁場強度を推定することで達成しました。トレーニングデータとして、ヘルムホルツコイルを用いて精密測定したナノダイヤモンドの磁場依存性を用いました。同手法により、従来法と比べて最大50倍程度の正確性向上が確認され、また、最大1.8 μTという高い正確性(地磁気の1/25程度)も明らかになりました。

小型のポータブルMEG(脳磁図)スキャナを実現するダイヤモンドセンサの開発by Fraunhofer-Institut für Angewandte Festkörperphysikの事例

Fraunhofer-Institut für Angewandte Festkörperphysik(IAF)の研究者らは、電流センサよりも最大10倍の高感度で磁場を測定できるダイヤモンドセンサを開発しました。ダイヤモンドの内部には、測定された磁場に反応して発光する格子欠陥がありますが、現在のセンサでは、すべての光を検出することができず、ほとんどが失われてしまうため、信号が途切れてしまいます。同研究では、このセンサにレーザーを導入することで、検出しにくい光をつなぎとめ、感度を大幅に向上させることに成功しました。

講演者紹介

2025年の最新技術トレンド21選:生成AI、衛星、量子技術など

浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部

【略歴】
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。

テーマ別の技術調査レポートのご案内

リンカーズでは、生体センシングや​​​​​​カーボンニュートラルなどのメガトレンドや、定番の CES、フードテックなどの注目すべき技術分野について、俯瞰(ふかん)的に動向を把握し、具体的な個別技術の抽出まで可能な技術レポートを各種ご用意しております。リンカーズの技術リサーチャーがグローバルの先端技術情報をピックアップし、専門家の目で情報を整理しているため、効率的な情報収集が可能です。

オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス

技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。

技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。

技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。

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