- 配信日:2024.11.27
- 更新日:2024.11.27
オープンイノベーション Open with Linkers
CESとは?CES2025の注目点と、これまでの振り返り
CESアワード受賞スタートアップの注目技術:日常の安全・安心を改善する技術
GHOSTPASS INC.の事例
顔認証や指紋認証といった生体認証などを行う際、読み取った顔や指紋などの個人情報はクラウド上で管理されます。一つの企業が管理するクラウドに重要な個人情報を保管することに疑問や危機感を持ち、警鐘を鳴らすべく技術開発を行っている企業のひとつが GHOSTPASS INC. という韓国の企業です。
GHOSTPASS INC. は、生体情報を個人のスマートフォンに保存し、スマートフォンが認証システムにアクセスして本人の生体情報であるかどうかチェックするという生体認証システムの開発をしています。これにより、生体情報をクラウドに保存せずに認証が可能となります。
Akidaiaの事例
Akidaia というフランスの企業では、入出管理に使われるゲートセキュリティをオフライン化するデバイスを開発しています。従来のゲートセキュリティ技術は、通過した人の情報をクラウドに連携して認証を行うのが一般的でした。一方こちらの技術は、スマートフォンがあれば Bluetooth 機能を使ってゲートセキュリティ認証を行うことが可能です。
サイバー攻撃を受けにくく、大事な個人情報をクラウドに保管することなくローカルで認証が完結するデバイスとして、情報セキュリティ対策に寄与する技術ではないかと感じており注目しています。
Custoの事例
昨今、置き配用の宅配ボックスを使っての荷物受け取りが普及しています。その進化版とも言えるボックスを Custo というベルギーの企業が開発しています。宅配ボックスの所有者が、そのボックスを開ける権限を自由に設定できるというものです。例えば宅配業者だけが開けられるようボックスの鍵を宅配業者にだけ渡したり、自分の家族だけが開けられるようにしたり、家族でも開けられず自分だけが開けられるようにしたり、このような設定ができます。
宅配ボックスの中の物を盗まれるリスクを下げ、個人のプライバシーを守る技術として注目しています。
SLIMDESIGNの事例
SLIMDESIGN というオランダの企業は、不審者に絡まれるなど危険な場面に遭遇した際、その場で映像に残すことができる小型のカメラを開発しています。例えば危険な人に遭遇したことを証拠に残そうと思ってもすぐにスマートフォンを取り出して撮影したり録音したりできるとは限りません。この小型カメラはピンバッジのように常時身に付けておき、いざというときにボタン1つで撮影したり、ビデオ通話できたりします。もしかしたら数年後にはこうしたデバイスを身に付けておくことが当たり前の世の中になっているかもしれません。
CESアワード受賞スタートアップの注目技術:環境保全を実現する技術
ANPOLYの事例
ANPOLY という韓国の企業では、米のもみ殻やカニの殻など普段なら捨ててしまうようなものを使ってセルロース製品を作っています。セルロース製品の作成は最近とても注目されている技術の1つです。例えば、透明な包装紙にプラスチックではなくセルロースを使っていこうという動きが見られます。最近だと透明導電性フィルムをセルロースで作ったり、環境発電の材料をセルロースで作ったりなど用途が広がってきています。
他にも排水の中から金属などの有害物質を取り除くための吸収・吸着剤としてセルロースを基にした材料が開発されており、環境に優しい材料としてセルロースへの注目の高まりを感じます。
Coplanar Technologies Inc.の事例
こちらは水素燃料をもっと手軽に使えるようにしようと取り組んでいる、アメリカの Coplanar Technologies Inc. の事例です。人の手で持ち運びができる軽量なボックス型の水素燃料電池を開発しています。水素燃料というと昨今、乗用車やトラックの燃料として活用する動きが見られますが、それをより日常的につかえるようにしたのがこちらの水素燃料電池です。
例えば停電時のバックアップ電源や、災害時の非常用電源、イベントなど大量に電力が必要なときの電源などとして使えるのではないかと注目されています。
Enovix Corporationの事例
Enovix Corporation はリチウムイオン電池に関する取り組みを進めているアメリカの企業で、従来の電極の代わりにシリコン系の素材で作った電極を使うという研究をしています。シリコン系の電極を使うことで特性が上がることは広く知られていることですが、それを製品レベルで安定して実現することは難しいのが実情でした。それを実現した事例として取り上げました。
Enovix Corporation のように、これまで実現が難しかった技術に取り組み、実例を作り上げているベンチャー企業が世界で増加中です。
Repia Inc.の事例
Repia Inc. という韓国の企業では、廃プラスチックの材料の種類を数秒で識別できるハンディタイプのスキャナーを開発しています。短波赤外線吸収を使ってプラスチックを識別する技術で、リサイクルの効率化に寄与するであろう技術として注目されています。
Midbar Co., Ltd.の事例
次は植物工場に関する事例です。植物工場も非情に興味深い分野で、日本では 2010 年頃に一度、植物工場がブームになったと記憶しています。当時日本で流行した植物工場は、使われなくなった半導体関係の工場などを再利用して、大規模に植物を育てていこうというようなコンセプトで作られていました。しかし農地栽培の野菜と比べてコストの面で高くなってしまうことなどから、大規模な普及には至りませんでしたが、最近は海外を中心にコンパクトな植物工場が盛り上がっています。
コンテナ型のスペース内で植物工場の運用に必要な全ての仕組みが完結するというコンセプトで開発を進めている企業が多く見られます。このコンテナを、例えば砂漠地帯など通常の植物栽培ができない地域に置くことで、コンパクトに植物の栽培が可能になるのです。
2024 年の CES ではコンテナ型の植物工場をもう一段階進化させたような技術が、 Midbar Co., Ltd. という韓国の企業から発表されました。従来の植物工場では、水は水道や水源から調達するのが一般的でしたが、こちらの事例では空気中の水分を、吸着剤などを使って回収して、植物を育てる水として利用する、という仕組みも取り入れています。さらに太陽光パネルをコンテナの近くに設置すれば電源を確保することも可能になるため、独立した植物工場として運用できます。資源やインフラが整っていない地域でも植物・野菜を育てられるようになる取り組みとして、個人的にも非常に興味深く感じています。
CESアワード受賞スタートアップの注目技術:デジタル技術を革新する新たな要素
Propheseeの事例
Prophesee というフランスの企業では、最近話題になることが多い「イベント駆動型センサー」という呼ばれ方をするイメージセンサーを開発しています。普通のイメージセンサーは全ての画角の RBG (光の三原色)をフレームごとに取っていくので、どうしても取得するデータ量が多くなってしまうという課題がありました。一方、イベント駆動型イメージセンサーは、前回のフレームと変化した部分の変化量だけをデータとして取っていくという仕組みです。そのため取得するデータ量が抑えられるという特徴があります。
例えばスマートフォンに搭載するようなカメラはスマートフォンが潤沢な電力や演算能力を持っているので、普通のカメラでコト足ります。しかし、例えば監視カメラや IoT カメラなどエッジ処理をしなければいけないカメラや、小さな電池で何年も稼動し続けなければならないカメラなどは、従来の機能を保ちつつデータ容量を減らしていくことが大きな課題としてあります。このような課題の解決策としてイベント駆動型センサーが有効だとして昨今注目されています。
Frore Systemsの事例
Frore Systems というアメリカの企業では、パソコンなどを冷却するためのデバイスを開発しています。デバイスの中に振動する膜が入っていて、その膜が振動することで熱を逃がすような空気の流れを作るという仕組みです。小さな素子で効率よく静かにパソコンを冷却することができるデバイスとして注目されていて、インテルと協業してラップトップにこのデバイスを組み込む計画もされていると言われています。
最近 AI を使う人が増えたことでデータセンターでのデータ処理にかかる負荷が高くなっており、負荷により上がった熱をどのように冷やしていくかが社会的な課題になっています。それを解決する技術になるかもしれません。
Idyllic Technologyの事例
Idyllic Technology というフランスの企業では、アルミで配線パターンが印刷されているフィルムに特定の電磁波を当てることで、アルミのパターンが共振し、その共振をデバイスで読み取ることで識別するバーコードを開発しています。従来のバーコードのような機能を、表面上にバーコードが露出していなくても実現できます。
バーコードのような簡便さ、低コストを実現しながら、 RFID * のようにバーコードを製品の中に埋め込むことができます。
例えば運搬する荷物をトラッキングするために 荷物一つひとつに RFID チップを搭載するとコストが高くなってしまうことがあります。その低コスト化が図れる技術として注目されています。
*RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波(電磁波)を用いて無線でデータの読み取りを行い、モノの識別や管理を行うシステムのこと。
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講演者紹介
浅野 佑策
リンカーズ株式会社 イノベーション推進事業本部
東北大学工学部卒業( 2006 年)、東北大学大学院工学研究科修了( 2008 年)
株式会社東芝 生産技術センターにおいて半導体製造プロセスの研究開発に従事。
その後、アクセンチュア株式会社にて大手製造業における、工場デジタル化や業務自動化などのデジタルトランスフォーメーションを複数推進。
現職では、メーカーでの研究開発とコンサルティングの経験を活かして、エレクトロニクス領域を中心に、先端技術動向調査、技術マッチング、技術情報を効率的に収集するための技術開発など、製造業向けのイノベーション創出を支援している。
オープンイノベーションを支援するリンカーズの各種サービス
◆技術情報の収集には「 Linkers Research(リンカーズリサーチ)」
Linkers Research は、貴社の業務目的に合わせたグローバル先端技術調査サービスです。各分野の専門家、構築したリサーチャネットワーク、独自技術データベースを活用することで先端技術を「広く」かつ「深く」調査することが可能です。研究・技術パートナー探し、新規事業検討や R&D のテーマ検討のための技術ベンチマーク調査、出資先や提携先検討のための有力企業発掘など様々な目的でご利用いただけます。
◆技術パートナーの探索には「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
Linkers Sourcing は、全国の産業コーディネーター・中小企業ネットワークやリンカーズの独自データベースを活用して、貴社の技術課題を解決できる最適な技術パートナーを探索するサービスです。ものづくり業界の皆様が抱える、共同研究・共同開発、試作設計、プロセス改善、生産委託・量産委託、事業連携など様々なお悩みを、スピーディに解決へと導きます。
◆技術の販路開拓/ユーザー開拓には「 Linkers Marketing(リンカーズマーケティング)」
Linkers Marketing は、貴社の技術・製品・サービスを、弊社独自の企業ネットワークに向けて紹介し、関心を持っていただいた企業様との面談機会を提供するサービスです。面談にいたらなかった企業についても、フィードバックコメントが可視化されることにより、今後の営業・マーケティング活動の改善に繋げていただけます。
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