• 配信日:2024.12.12
  • 更新日:2024.12.12

オープンイノベーション Open with Linkers

日東電工のイノベーションプロセス、三新活動の事例

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー『ニッチトップ企業を狙う「Nitto」から学ぶ戦略とイノベーションの仕組み』のお話を編集したものです。

日東電工株式会社 フェロー 副CTO 全社技術部門研究開発本部長の佐竹 正之(さたけ まさゆき)様に、日東電工における新規事業創出・拡大のためのイノベーションプロセスや取り組みについて、お話しいただきました。

ESG企業を目指す日東電工の取り組み


弊社(日東電工株式会社)が建てた中期経営計画では『 Nitto for Everyone 2025 』という目標を掲げ、重点的に対応していく分野を3つ決めております。

  • 1. パワー & モビリティ
  • 2. デジタルインターフェース
  • 3. ヒューマンライフ

です。いずれの領域においても弊社の技術あるいは影響力をうまく活かすことで新しいテーマを作っていきたいと考えております。それに加えて特に重要視しているのが、この3つの重点分野の交点です。交わる部分に対して新しいテーマを見出していくこと。その交差点に当たる領域で弊社がなくてはならない存在になっていくということを目指しています。

例えばこの3つの領域が全て重なる点として、脱炭素ソリューションの領域が挙げられます。 CO2 の排出量をどう削減していくかは社会課題として大きな問題になってきているところです。ここに弊社が持っている技術を使って新しいソリューションを提案していきたいと考えており、注力しています。

このような取り組みを踏まえて、 2030 年の日東電工のありたい姿を描いています。3つの「 Nitto らしさ」で豊かな未来に貢献し、なくてはならない ESG トップ企業になるというのが弊社の目指す姿です。

3つの「 Nitto らしさ」についてそれぞれ見ていきましょう。

  • 1. 企業の姿勢として、お客様に驚きと感動を与え続けること。
  • 2. Nitto の中の社員社風文化としてチャレンジを楽しむこと。
  • 3. 環境および人類に対して貢献できる技術製品を作っていくこと。

この3つのらしさでもって、豊かな未来に貢献し、地球環境・人類社会に対してなくてはならない存在になっていくことを目指しています。

この目標を体現するべく、弊社ではいくつか指標を掲げています。ここでは代表的な2つを紹介します。

1つは『 Nitto グループカーボンニュートラル 2050 』。 2050 年までにグループ全体で排出する CO2 を実質ゼロにするという計画を進めております。

もう1つは、『サステナビリティ重要課題解決に向けて』ということで、弊社の目の前にいるお客様を重要視しつつ、その先にある地球環境・人類社会に対して貢献をしていくことを目指しています。

こういった取り組みの中身の1つとして、次のような構想を進めています。ネガティブエミッションファクトリー構想というもので、製造事業所から排出される CO2 をプロセス段階でいかに減らしていくか、に取り組んでいます。 CO2 排出量をゼロにするという意味では、排出する CO2 を回収するということに加えて大気から CO2 を捕捉すること、これらが必要になると思います。また回収した CO2 をどう活用するかも大きな課題です。弊社としては有価物に変換するという技術の開発を進めています。すなわち、 CO2 を回収・補足・変換することで排出量をネガティブな方向に持っていこうという構想です。

この実現のために弊社が培ってきた技術を結びつけて、ソリューションとして提供していくことを想定しています。社内的な CO2 排出量の削減にプラスして、お客様にもソリューションとして提供し、今後の事業の1つとして進めていくつもりです。

事業拡大のベースとなる考え方

日東電工のイノベーションプロセス、三新活動の事例

弊社には事業拡大のベースとなる考え方があります。大きく分けて2つあり、1つは三新活動、もう1つは Global Niche Top™(グローバルニッチトップ)戦略です。

日東電工の三新活動

まず三新活動について。市場と技術を、それぞれ既存と新規に分けて、

  • 既存市場 × 既存技術=「現行事業」
  • 既存市場 × 新規技術=「新製品開発」
  • 新規市場 × 既存技術=「新用途開拓」
  • 新規市場 × 新規技術=「新需要創造」

の4象限に分けて進めていくという考え方です。日東電工のビジネス拡大のための DNA としてこの三新活動を進めています。1つのサイクルを回して生まれた新事業が次の時代の現行事業となり、また三新活動を行うことによって新しい事業を生み出していきます。このスパイラルを回すことで、事業を拡大していくという考え方です。お客様やマーケットニーズにいかに応えていくかがベースになっています。

日東電工の三新活動の事例

三新活動で生まれた新規事業の例を紹介します。表面保護材の歴史を三新活動として捉えています。元々弊社は電気絶縁用ビニルテープから事業をスタートし、自動車部品表面保護フィルムに展開しました。さらにそれをステンレスにしていきました。また、新車のボンネットに貼る保護フィルムなど屋外使用できるものも開発しました。

市場としては半導体やディスプレイなどにも拡大し、それぞれの市場向けにカスタマイズした新しいテープを作りながら展開をしていきました。このようにサイクルを回しながら新製品、新用途、それから次の需要を生み出していったという事例です。

Global Niche Top™戦略

もう1つの Global Niche Top™戦略について説明します。弊社の差別化戦略ということで、3つの考え方に基づいて、シェア No.1を狙っています。

  • 1. 成長・変化するマーケットであること
  • 2. 差別化できるということが大前提になりますので固有の差別化技術が生きる領域であるということ。
  • 3. 分野として大きな市場を狙うわけではなく、ニッチな分野をしっかり取っていくということ。

この3つが重なる交点でシェア No. 1を狙っています。

次のページ:日東電工の全社技術部門とその役割、新規事業創出の仕組みを紹介します。