• 配信日:2024.03.05
  • 更新日:2024.04.18

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フードテック2023年振り返りと2024年の展望

環境問題/気候変動への対応


実はフードテックには、環境問題・気候変動も関わってきます。フードテックと切り離せない問題と断言して良いでしょう。実際に多くの企業が環境問題・気候変動に積極的に取り組んでいます。なぜかというと、社会的責任を果たすためだけでなく、経営戦略としての重要性が高まっているためです。

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環境問題・気候変動への取り組みをしないと、金融機関や投資家から資金調達ができなくなる可能性があります。いくら優れた技術があっても、それが環境などに影響を及ぼすのであれば買ってもらえないのです。

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そして国際協力への対応ということで、京都議定書やパリ協定などといった削減目標があります。これらの達成に向けて大手企業は戦略を立てているので、関連する企業も大手の戦略に合わせて商品ラインナップも変えていかないと、商品が売れなくなってきているのです。

環境問題・気候変動への取り組みは、単なる CSR( corporate social responsibility:企業の社会的責任)活動を超えて経営戦略の一部となっており、これらを無視していてはビジネスでの成長は難しいでしょう。

一方でチャンスもあります。なぜかというと、今まで変えられなかった食の市場が変わらざるを得なくなっているからです。要は、輸出・輸入を含め大手企業も海外企業も、サステナビリティなど環境に配慮した活動をしなければならないので、これが今までのような流通の仕組みが大きく変わるきっかけになると思います。もちろん対応していかなければならないことはたくさんありますが、こういった動きが興(おこ)ることで市場は広がっていき、新規参入の壁を突破できる可能性が上がることがポイントだと思います。

ダボス会議


2023 年にダボス会議というものが設定され、 2024 年に向け世界がどこを目指していくのか、識者の方々が会議しました。

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その中でも持続可能な開発と気候変動への対応ということが問題に挙げられていました。

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やはり、食品生産から流通に至る過程の中で温室効果ガスというものをどう縮小していくのか、そのために生産方法や流通プロセスを改善するという動きが今まで以上に求められています。

そして持続可能な資源の利用ということで、今まで捨てられていたものはもちろん、さまざまな資源を使って環境問題に対応するためのフードテックも新しい産業として生まれるでしょう。

さらに食糧生産における生物の多様性の保護においても、フードテック分野で次々に増えていくのではないかと思います。

個人的に最も注目しているのは食品のロスです。私たち日本人は、一人当たり毎日お茶碗1杯分の食料を捨てています。その状況を変える動きが加速していくでしょう。さらにどうしても食品加工の中で破棄されるものがあるのですが、これらを再利用する動きが進んでくると思われます。

2024年のフードテックの動向


フードテック2023年振り返りと2024年の展望

2024 年は持続可能な食品の生産・技術というものが進歩し、今まで以上に作業を効率化して、生産工数を削減し、品質を均一化。そして CO2 を抑えながら動植物を育てていくという流れがさらに強まると予想しています。

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これまでに集められたさまざまなデータをもとに食品生産の新しい方法というものも生まれてくるでしょう。

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都市型農業や垂直農業 * といった技術も誕生し、発展していくと思われます。その中でも AI を活用した新しい技術が大きく伸びると考えています。

*垂直農業=高い建築物の階層や、傾斜面をつかって農業をすること。

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あとはバイオテクノロジーを使った技術なども出てくるでしょう。

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そして注目されているのが栄養補助食品の成長です。日本や中国では、高齢の方が増えてきています。それに伴い、高齢の方をサポートし、より健康でいられるような栄養補助食品が増えてきています。

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そして今までになかったような流通を実現させる動きもトレンドの一つになるでしょう。アジアで拡大してきているのが、アプリケーションで食品や生活用品を注文するという動きです。

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また食品の安全として、トレーサビリティも求められるでしょう。

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7つの注目技術


ここまで紹介してきた中で、特に注力する必要がある7つの技術をピックアップしました。この7つをいかにビジネスに組み込むか、どのようなパートナーと取引するべきかを考えるのが重要です。

持続可能性と環境配慮

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持続可能性と環境に配慮したフードテックが必ず求められます。なぜなら、これらをしっかり行っていないと、大手企業や海外企業と取引ができなくなってしまいますし、これらを求める人たちがこれから増えてくると予想できるためです。

高度な物流システム

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冷蔵・冷凍技術で品質を保持する新しい技術も登場してくると思うのですが、 IoT や AI を使った効率的な物流や今までになかったようなリアルタイムトラッキングというような形で、かなり細かい流通システムができて、それらを通して新しいモノの届け方というものが今後確実に出てくるでしょう。

食品安全と品質管理

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フードテックの領域できっちり押さえるべきこととして、食品安全と品質管理があります。厳格な衛生管理、品質チェック、安全基準の遵守、食品のトレーサビリティと透明性の確保などの技術を、現在 IT 系企業が必死になって取り組んでいます。この分野にどういうプレイヤーが存在していて、食品安全と品質管理に取り組んでいるのかマッピングし、分析しながらどのパートナーと組むかを考えることが大切です。世界各国の企業が食品安全と品質管理に取り組んでいるので、単独で参入するのは厳しい分野ともいえます。

市場動向と消費者ニーズの理解

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市場が今どうなっているのか、消費者のニーズはどうなっているのかを正確に把握することが、フードテック領域では重要になると思われます。昨今は海外・国内とも、消費者一人ひとりの状況・ニーズをデジタルで情報収集し、需要を予測し、在庫を管理するというフードテックが求められています。このような動きをする企業に対し、データ収集プラットフォームなどの市場も伸びていくことでしょう。

新しいビジネスモデル

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新しいビジネスということで、 D2C( Direct to Consumer ) 、サブスクリプション、オンラインプラットフォームといった形で、今までになかった届け方が生まれてきます。それに合わせた新しいビジネスが誕生するため、それに向けたマーケティング戦略や顧客との関係構築などを行い、しっかり対応することも大切です。

法規制と国際基準への適応

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法規制と国際基準への適応ということで、フードテックは人の食に関わる領域のため、技術として優れていればそれで良いとか、この取り組みはメリットが多いからやっていこうとか、そういう話ではありません。さまざまな部分で足並みを揃えていく必要があります。そこで法律や基準に合わせてモノの製造や流通などをやっていかなければならなくなります。このような法規制や国際基準に適応したフードテックに関するビジネスも大きな市場になるでしょう。

技術革新とデジタル化

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最後に技術革新とデジタル化ということで、やはり AI の進化による影響が大きいかと思っています。取得したさまざまなデータと AI を活用した技術の活用やサプライチェーンの効率化などが図られていくでしょう。

講演者紹介

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大野 泰敬 氏
株式会社スペックホルダー 代表取締役社長 / 農林水産省 農林水産研究所 客員研究員

【略歴】
複数の企業を経営する事業家兼投資家。ラジオNIKKEI「ソウミラ」、FM愛媛を含む人気FMビジネス情報番組5つのメインパーソナリティ。ソフトバンク株式会社で新規事業に従事し、その後CCCでの経験を経て、2008年にソフトバンクに戻り、日本初のiPhone市場参入におけるマーケティングで大きなシェア拡大を実現。独立後は、14社の大手企業に対して事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達を手掛ける。テクノロジー分野においても深い知見を有し、東京オリンピック大会組織委員会のITアドバイザーや麗澤大学、農林水産省、明治大学の客員職を務める。地域社会の課題に対し、大企業と地域企業をマッチングさせ、新しいビジネスチャンスを創出し、地域発展に貢献。農林水産省主催のビジネスコンテストでは審査員長として、食料安全保障や食の持続可能性に関する検討会議の委員としても活躍。著書に「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」、「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」がある。

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