• 配信日:2023.01.16
  • 更新日:2023.09.01

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大学発ベンチャーの先端技術~心筋再生医療イノベーション(Heartseed株式会社)

純化した心筋細胞を投与する上での課題と「心筋球」による解決策

純化した心筋細胞一つひとつをバラバラに移植すると、全体の3%しか生着しませんでした。
そこで私たちは 500 個ほどの細胞を球にしてまとめて移植することで、生着力を高める技術を開発しました。実際に球にした心筋細胞を免疫不全マウスに移植したところ、心筋が生着して血管が入り込んでいることが以下の左側の画像から分かります。左側の画像は、マウスに移植して4か月後の組織染色写真ですが、緑色に染色されている心筋細胞の間に、赤く染色されている血管内皮細胞が入りこんでいて、微小血管のネットワークを構築しつつ生着していることが確認できます。

大学発ベンチャーの先端技術~心筋再生医療イノベーション(Heartseed株式会社)

また心筋細胞の安全性を見るために、免疫不全マウスの皮膚の裏側に心筋球を移植したところ、血管を引き込み、1年間拍動を続けました。ヒトiPS由来の心筋細胞が、動物の体内でも長期にわたって生着することがわかりました。
これまでの心筋再生医療においては、移植後の不整脈が問題になっていました。心臓は手術するだけでも不整脈が起きますし、外部から別の細胞を移植した場合でも、移植した細胞が周囲に元々ある患者の心筋と同化せず、バラバラに拍動すると不整脈が起きます。
その点、私たちの技術によって作成された心室筋細胞は、周囲にある心筋細胞と同じ性質を有し、移植後に電気的に結合します。そのため、移植した細胞が不整脈を起こさず、周囲にある細胞と協調して心臓を拍動させることが可能であることが、動物試験の結果からも示されています。
これまで、他の研究グループでは細胞移植後の不整脈が半日や1日中起きているという結果が出ていましたが、私たちのサル心筋梗塞モデルを使った実験実験では数分間にまで減らすことができ、さらに心臓の収縮機能も改善していました。

心筋球の移植技術

実際の心筋球投与は、私たちが独自に開発した特殊な注射針とアダプターを使用します。特殊な注射針により出血を最小限に抑えつつ、アダプターを用いることで、安全に心臓の外から心筋球を直接移植します。
現在は治験届が受理され、臨床試験を実施中です。今回の臨床試験は心筋球を冠動脈バイパス手術と同時に心臓の外から移植する方法ですが、今後はカテーテルによる投与法の開発も進めていきます。

再生医療産業化に向けた共同開発


大学発ベンチャーの先端技術~心筋再生医療イノベーション(Heartseed株式会社)

ここまで紹介してきたHeartseed株式会社の研究の歩みを見ていただくと、培地の開発も外部のメーカーと共同で行いましたし、細胞の製造委託も専門業者に委託しています。その他、細胞の培養容器、培養装置、投与機器、輸送方法など、外部の大手企業・メーカーと一緒に開発を行っています。
このように、再生医療を社会実装するには、さまざまなメーカーの協力が必須であり、再生医療は非常に裾野の広い産業であることがご理解いただけると思います。

大学発ベンチャーの先端技術~心筋再生医療イノベーション(Heartseed株式会社)

わが社の強みは、

  • 1. 抜本的な治療法に乏しく、かつ患者数の多い心不全を対象としていること
  • 2. 独自技術を複数有していること
  • 3. すでに治験を実施中であること
  • 4. 上記3に加えて 2021 年6月に大手製薬企業ノボノルディスク社と提携しており、国内ベンチャーであるにもかかわらず、海外展開もできる状況になっていること

です。
これらの強みを生かして、心不全の患者様に新たな治療の選択肢を提供できるよう取り組んでいきます。

講演者紹介

大学発ベンチャーの先端技術~心筋再生医療イノベーション(Heartseed株式会社)

金子 健彦 氏
Heartseed株式会社 開発担当取締役 Chief Medical Officer

【略歴】
2002年慶應義塾大学医学部卒。
2007年よりブリストルマイヤーズスクイブ、ファイザー、ノバルティスにおいて大型新薬の承認取得を含む臨床開発、早期開発、メディカルアフェアーズなどに従事。
2015年に再生医療業界へと転身し、サンバイオ株式会社にて、細胞製品の国際共同治験、臨床開発および薬事をリードし、治験の成功および先駆け審査指定や希少疾病用再生医療等製品指定の取得に貢献。
2020年からはHeartseed株式会社にて、開発担当取締役 Chief Medical Officer 研究開発本部長として、iPS細胞由来製品の研究開発全般や、グローバル企業との共同開発を推進している。

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