• 配信日:2022.09.28
  • 更新日:2024.08.07

オープンイノベーション Open with Linkers

イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

この記事は、リンカーズ株式会社が主催した Web セミナー「 ~ IHI から学ぶ ~ オープンイノベーション徹底解剖」を書き起こしたものです。
本セミナーでは、株式会社 IHI (以下「 IHI 」と表記)技術開発本部 技術企画部 企画推進グループ長の岩本 浩祐 様に「新たな事業を創出する IHI の取り組み」というテーマでお話しいただきました。
イノベーション、オープンイノベーションに興味のある方は、ぜひご覧ください。
(本記事は前後編にわかれた記事の前編です。)

IHI のイノベーション拠点「つなぐラボ」から「 i - Base 」へ


イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

IHI には、ロンドン、シンガポール、上海、シリコンバレー、ボストンの5つの海外拠点があり、この5拠点から「社会の変化」や「世界の最新技術」に関する情報が国内の拠点に入ってきます。
横浜事業所では、2014年に「つなぐラボ」というお客さまをお迎えするスペースを開設し、2019年までに約15,000人のお客さまとお会いしてきました。しかし、開設当初に思い描いていたようなイノベーションがなかなか創出されず、2019年に同じ横浜事業所内に別の建物として「 i – Base 」を開設しました。

イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

「つなぐラボ」は「お客さまとお会いして IHI の製品やサービス、技術をご覧いただきながら、お客さまの課題や要望について議論する」という機能を持っています。お客さまとの対話で IHI の技術とお客さまの課題がマッチングすれば「一緒にやりましょう」ということになるのですが、これだけではイノベーションの創出は難しいことが分かってきました。
この経験から、お客さまとのイノベーション活動から新たな価値を生み出すためには、以下のような活動が必要であろうと考えました。

・お客さまと一緒に「その課題の本質はどこにあるのか」課題分析を深化させる
・分析結果からソリューションを見出して試作・検証しながら、どのような事業があるのかを具体的にディスカッションする

このようなお客さまと深く議論してイノベーションを進める活動スペースとして「 i – Base 」を開設しました。

「 i - Base 」の特徴


イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

お客さま思考、課題解決、スピード、アジャイルなどを考えたとき、私たちには「デザイン思考的発想や取り組み」が足りていないという結論に至りました。「 i – Base 」ではその足りていない機能を組み込んでいます。

「 i - Base 」の構造その1:共創エリア

イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

「共創エリア」では、お客さまとどれくらい深くディスカッションできるかを重視しています。上の画像のプレゼンテーションドックでは壁一面をホワイトボードにしており、お客さまと対話した内容をその場で描きながらディスカッションを進められるようにしています。

「 i - Base 」の構造その2:試作エリア( Garage )

イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

共創エリアの隣に「試作エリア」があります。言語だけでアイデアを話し合っていると、お客さまと私たちで思い描いているイメージがずれてしまうことがあります。
試作エリアでは、具体的に試作品をお客さまに見ていただきながら議論する構造になっています。
また 3DCAD (コンピュータを使い 3D で設計やデザインを行うこと)などデジタルな力も使いながら、お客さまとアイデアを共有するということも行っています。

「 i - Base 」の構造その3:プロジェクトブース

イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

「プロジェクトブース」は4つのブースから成るエリアです。
ここでは研究開発のメンバーに営業や設計者も含めたバーチャルなチームを作って、短期集中で事業化を目指すイノベーション活動を行っています。
プロジェクトブースは、お客さまにもチームに加わっていただき議論できるスペースとしており、お客さまと一体となって集中して事業化を目指します。

「 i - Base 」を通して目指すイノベーションスタイル


イノベーション事例~ IHI の取り組みを徹底解説(前編)

私たちが目指すイノベーション活動のあり方は、「不確実でも、社会の変化の兆しをできるだけ定量的に捉えながら予測して進んでいく」ということです。
このために、「社会の変化の兆しを捉えてイノベーションを生み出していく、 IHI に合うイノベーションスタイルはどういうものなのだろう」を常に考えながら、外部の方と積極的につながり、新たなイノベーション知識や、私たちに足りないスキルや機能、体制を付け足しながら、イノベーションの思考やプロセスを更新し続けています。