
- 配信日:2025.10.10
- 更新日:2025.10.10
オープンイノベーション Open with Linkers
三井化学CTOが語る、40年の知見を凝縮したイノベーション戦略と新事業開発の極意
新事業を開発するための組織運営の考え方

いち早く新事業を開発し市場に出すには、開発までの時間を短縮する方法を考えることも求められます。開発の主な手法としてはアジャイル型開発とウォーターフォール型開発がありますが、昔ながらの開発はウォーターフォール型の開発です。品質管理を徹底し、製品・サービスに必要な全ての要素を開発してから市場に出します。しかし、昨今の世の中の変化を考えると、ウォーターフォール型開発だけでは新事業を開発しようにも追いつけません。
そこでアジャイル型開発も取り入れることが求められるのです。アジャイル型開発では、お客様に最も価値提供できることは何かを見つけるために、それ以外の部分はひとまず目をつむり、価値提供できる可能性のある部分を優先して、市場で価値を感じていただけるかを問いにいきます。そのため、より素早く市場に製品・サービスを出すことが可能です。
アジャイル型開発とウォーターフォール型開発には、それぞれ適した組織体系があります。アジャイル型開発を行う場合、「ネットワーク型組織」であることが好ましいです。少人数で直感的・感情的・瞬間的な力で応答する。専門的な知識を持った数名が集まり、基本的にはそれぞれが作業を進めるものの、何か問題があれば全員で瞬時に対応し、また各々の担当に戻る。このような組織体系です。
ただし、ネットワーク型組織は秩序が生まれにくいという特徴があります。三井化学のようなメーカーは、ただスピーディに開発を進めれば良いわけではなく、お客様が満足する品質のものを納期までに提供することを担保しなければなりません。このような場合、新事業の確度がある程度上がってきたら、ネットワーク型組織から「ヒエラルキー型組織」、つまり品質管理を徹底するウォーターフォール型開発に適した組織体系へと移行していくことが求められます。
三井化学のイノベーション実践事例:CVCファンドと細胞培養事業

最後に、三井化学の実際の取り組み事例を2つ紹介します。
三井化学のオープンイノベーション:CVCファンド『321Force』と『321Catalysts』によるスタートアップ投資
新事業開発センターの中には CVC 部門があり、ビジネスを共創する社外のスタートアップに投資・出資することでスタートアップの困りごとの解消につなげ、よりスムーズにビジネスの創出を行うということに取り組んでいます。
2022 年には、1号ファンドとして『 321Force 』をグローバルブレイン社とスタートしました。かなり順調に投資・出資が進んでいるのですが、原資が限られていることと、現状日本のスタートアップへの出資に集中している状況です。さらなる投資・出資をグローバルに行うべく、2号ファンドとして『 321Catalysts 』を、三井化学単独で立ち上げました。
細胞培養事業『InnoCell』:三井化学が挑むバイオ医薬品分野のイノベーション
三井化学の新事業開発センターでインキュベーションしてきたテーマに『 InnoCell 』があります。現在では、過去のネットワーク組織からヒエラルキー型の仮想組織として工場に席を移し、全員でプロジェクト推進を行っています。また、将来の関連ビジネスを推進しているスタートアップにも、『 321Force 』や『 321Catalysts 』を通じて出資していっています。
昨今、医薬品の様相がどんどん変化しており、バイオ医薬品が全体の6割を占めているような状況です。このような変化点において三井化学が持つアセットを、創薬や個別化医療、再生医療、遺伝子分野の研究を行っているステークホルダーの役に立てられないかと考えていました。
そのような考えで推進している新事業の1つが細胞培養です。人間の臓器の酸素濃度は部位によって異なり、それぞれの臓器に適した細胞を培養する際、生体と同じような酸素濃度に調整するのが難しいという課題がありました。この課題に対し、三井化学が持っている外部環境と同じ酸素濃度にコントロールできる素材(プラスチック)を使うと培養がしやすくなることがわかり、『 InnoCell 』というブランドで提供・ビジネス展開しています。
講演者紹介

表 利彦 氏
三井化学株式会社 常務執行役員 CTO
【略歴】
1983年日東電気工業株式会社(現日東電工)入社。26年間、研究者、研究開発部長、事業部長を務めてきた。2009年よりCTOとして日東技術に深く関わった任務を遂行。2015年よりCIO経営インフラ統括本部長。2018年5月よりExecutive Fellowとして米国サンノゼ駐在、CTO・CIOの経験を活かし新たなビジネスチャンスの探索と創造を行ってきた。2022年2月三井化学入社、執行役員 社長補佐。新事業開発センター担当として三井化学の新事業創出をメンバーと共に推進している。2025年4月より常務執行役員CTO。専門は高機能性高分子、高機能性高分子の分子設計、合成、物性評価。特にアルカリ現象タイプの耐熱感光性樹脂を新たに開発し、それを使用したHDDサスペンションブランクを商品化。千葉大学自然科学研究科修了。Ph.D.。
オープンイノベーション推進を支援するリンカーズの各種サービス
リンカーズ株式会社は、ものづくり企業向けにイノベーション・オープンイノベーション活動を支援している会社です。技術パートナー探索や、技術起点での販路・ユーザー開拓など、ものづくり企業の様々な課題に対してビジネスマッチングを軸にしたソリューションをご提供しています。またあらゆる技術テーマでのグローバル先端技術調査、市場調査も承っております。
◆貴社の技術課題を解決する最適なパートナーを探索:「 Linkers Sourcing(リンカーズソーシング)」
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