• 配信日:2024.12.17
  • 更新日:2024.12.17

オープンイノベーション Open with Linkers

2025年の最新技術トレンド21選:生成AI、衛星、量子技術など

リンカーズ株式会社は、ものづくり企業向けの、ビジネスマッチングによるオープンイノベーション支援サービスに加え、さまざまな分野の先端技術調査(素材、材料、デバイス、システム、AI 技術、ビジネスモデルほか)を年間で 300 件ほど実施しています。

こうした膨大な調査データをもとに、今回は、リンカーズの専門技術リサーチャーである浅野佑策の視点で、2025 年に注目すべき最新の技術トレンドと、それぞれの具体的な先端技術の事例 21 選を紹介していきます。

最新技術トレンド1:生成AIがより身近に


2022 年 7 月に画像生成 AI である「 Midjourney 」が、11 月にテキスト生成 AI である ChatGPT が公開されましたが、それから 2 年余りで生成AIは世界を劇的に変化させてきました。最近では、画像やテキストを生成するだけではなく、情報の検索や整理、製品企画や設計、プログラミングなど、知的作業のあらゆる場面で生成AIが活用されています。

AGI (汎用人工知能)の実現を目指した、より大量のパラメータを用いた大きな生成AIモデルの開発競争が進められる一方で、こうした生成AIをより身近にコンパクトに扱う技術も進展しました。ここでは、こうした生成AIを身近に扱うための技術について紹介します。

音声ベースで操作可能な、生成AI搭載小型デバイス

ChatGPT などの生成AIは、一般にはパソコンやスマートフォンを用いて、画面を見ながら入力や応答を行いますが、より気軽に音声ベースで活用できるデバイスが開発されています。

衣服に取り付けるピン型デバイスや、首かけ型のデバイスを用いることで、運転時や調理中など、ディスプレイを見ることが難しい環境でも生成AIとのコミュニケーションが可能となります。いつでもどこでも生成AIが活用できる世の中が近づいています。

衣服に装着するディスプレイレスAIデバイス「Ai Pin」 by Humaneの事例

Humane は、衣服に装着できる小型ウェアラブルデバイス「 Ai Pin 」を発表しました。操作は音声入力、デバイスへのタップ、ハンドジェスチャーで行い、手のひらにレーザープロジェクターで簡易なUIを投影することで視覚的フィードバックを提供します。OpenAIおよびMicrosoftとコラボレーションし、T-Mobileのネットワーク経由でクラウド上の最新AIプラットフォームにアクセスすることで、高度な対話型AI機能を実現しています。画像認識や音声翻訳など、生成AI技術を活用した多様な機能を利用可能です。

生成AIと自然対話可能なウェアラブルデバイス「AIスマートリンク」by SHARPの事例

シャープは京都芸術大学と共同で、生成AIとの自然なコミュニケーションを実現するウェアラブルデバイス「AIスマートリンク」を開発しました。首にかけて使用する本デバイスは、内蔵のマイクやカメラで周囲環境を認識し、音声で応答します。自転車運転時の音声ナビゲートや、調理時のガイダンス、AIoT対応家電の音声操作など、多様な場面での活用が可能です。エッジAI技術「CE-LLM」を搭載し、エッジAIとクラウドAIを適切に使い分けることで、迅速かつ自然な対話を実現しています。2025年度の実用化を目指しています。

スマートフォンで動作可能な軽量LLMモデルの進展

生成AIの需要が高まるに伴い、クラウドで動作する大規模生成AIでは応答速度やコスト、セキュリティが課題となることが多くなってきています。こうした課題に対して、LLM(大規模言語モデル)に近い性能を持ちながら、軽量な動作を可能とするSLM(小規模言語モデル)の開発も活発化しています。SLMを用いることで、スマートフォンやタブレット、ロボット、製造設備などのデバイス上で高速に動作する生成AIの実現が期待されます。

小型で高性能なエッジデバイス向けSLM「PLaMo Lite」by Preferred Networksの事例

Preferred Networks(PFN)は、子会社のPreferred Elements(PFE)が開発した小規模言語モデル「PLaMo Lite」の提供を開始しました。PLaMo Liteは、自動車やロボット、製造設備、PCなどのエッジデバイス向けに開発され、クラウドを介さずにエッジデバイスやオンプレミス環境で高速に動作する10億パラメータの小型モデルです。PLaMo Liteは、1000億パラメータの「PLaMo-100B」で生成した日本語と英語のテキストデータを事前学習に使用し、合計4兆トークンを学習しました。これにより、パラメータ数を10億に抑えながらも高い日本語性能を実現しました。

スマートフォンで動作可能な軽量LLM「OpenELM」by Appleの事例

Appleはオープンソースの大規模言語モデル(LLM)「OpenELM」を発表しました。これはiPhoneやiPadなどのスマートフォンやタブレットでも動作する軽量モデルであり、従来の大規模モデルと比較してはるかに少ないパラメータ数で学習されています。開発者は、OpenELMを利用してAIアプリケーションを開発し、小型デバイス上で高性能な自然言語処理を実現できます。モデルサイズは270M、450M、1.1B、3Bの4種類があり、最小のモデルは270百万のパラメータで構成される。Apple独自の高品質データセット「CoreNet」を用いてトレーニングされ、幅広い話題に対応できる汎用性を持ちます。

最新技術トレンド2:衛星の進化による次世代の地球観測


衛星技術が加速度的に進化しており、地球上の様々な現象を観測できるようになってきています。画像や雲の動きだけでなく、温暖化ガスの分布や3次元マッピング、都市の詳細な赤外性イメージなど観測対象は広がり、それらデータのオープン化も着々と進められています。

こうした最新の衛星データの多くはこれまで人類が得ることができなかった全く新しいデータであり、これらの活用により新たなビジネスが生まれるチャンスが豊富に潜んでいると考えられます。

LiDARを用いた地球の全陸地のマッピング by NUVIEWの事例

NUVIEW社は、LiDARを搭載した衛星群を用いて地球の全陸地の高解像度な3Dデータを取得しています。同社はデジタルサーフェスモデル(DSM)とデジタルテレインモデル(DTM)を提供しています。DSMは植生や人工構造物を含む地表面の詳細な3Dデータであり、DTMは植生や人工構造物を除いた地形データです。これにより、地球の全陸地の詳細な3Dデータが利用でき、都市開発や災害の予測、インフラのモニタリングなどに適用できます。

高精度温室効果ガス検出センサーを搭載した衛星 by AIRMOの事例

AIRMO社は温室効果ガスの排出量を観測する衛星技術を開発しています。これは、マイクロLiDARと短波赤外(SWIR)分光計、およびカメラを搭載した小型衛星です。これらセンサーを組み合わせることで、温室効果ガスのデータ取得を高精度で実現しています。さらに、衛星コンステレーションを用いることでほぼリアルタイム(40分単位)での観測を可能としました。小型衛星の設計やセンサー技術の進歩、オンボードのエッジコンピューティングとポストプロセッシングの活用により、大型衛星システムと比べてコストと時間を削減できます。

地球表面熱分布と建造物内部活動を観測する衛星赤外線熱画像システム by SatVuの事例

SatVu社は、衛星赤外線熱画像を用いて、地表や建造物内部の熱分布を3.5 mの高解像度で観測できるシステムを開発しました。これにより、植生による地表熱の低減効果の検証や、建物内部の活動状況を観測できます。都市計画の遂行や経済活動の調査、国家安全保障など様々な分野で活用が期待されています。

衛星画像とセンサーを用いて水資源の管理・監視を簡素化するサブスクリプションサービス「GybeMaps」 by Gybe Inc.の事例

Gybe Inc.は、水資源管理及び監視を簡素化する SaaS(Software as a Service) ベースのサブスクリプションサービス「GybeMaps」を提供しています。同サービスでは、衛星画像と地上センサーからのデータを組み合わせ、専用Webアプリに濁度、クロロフィルなどの水質データを提供する仕組みとなっています。ユーザーはアプリを用いて、水生生態系の管理、保全、修復状況を監視します。同サービスにおいて、必要な情報は1か所に集約され、すべて自動で最新の状態に更新されるため、データ収集やゾンデのメンテナンスの必要がありません。同サービスの水質マップを用いることで、水域全体の水質を時系列で追跡可能です。また、同社独自の機械学習モデルによる藻類の大量発生予測により、今後の計画策定が可能となります。